麻疹(はしか)とは?症状・原因・治療・予防の完全ガイド【2025年版】

おとなの病気

1.麻疹(はしか)とは?

麻疹(ましん、英語名:measles/はしか)は、麻疹ウイルスによって引き起こされる急性のウイルス感染症です。非常に感染力が強く、適切な予防をしていない場合、ひとたび感染者が出ると爆発的に広がる可能性があります。

麻疹は空気感染・飛沫感染・接触感染を通じて人から人へ広がります。感染者が咳やくしゃみをすると、空気中にウイルスが漂い、それを吸い込むことで感染が成立します。特に免疫を持っていない子どもや大人にとって、重篤な合併症を引き起こすことがあり、油断できない病気です。

日本ではかつて、毎年数千人の患者が報告されていましたが、定期予防接種の普及により激減しました。それでも海外からの輸入症例をきっかけに局地的な流行が起きることがあり、引き続き注意が必要です。


2.麻疹(はしか)の症状

麻疹は典型的なウイルス感染症で、段階的に症状が変化していくことが特徴です。以下が代表的な経過です。

潜伏期(10〜12日間)

症状は現れませんが、体内でウイルスが増殖している時期です。

カタル期(発症から2〜4日)

・38〜39度程度の発熱
・咳(乾いた咳)
・鼻水
・目の充血・まぶしがる(光過敏)
コプリック斑(ほっぺたの内側にできる小さな白い斑点)が現れる

発疹期(カタル期の後、数日以内)

・再び高熱(39〜40度)
・顔、首から始まり、全身に広がる赤い発疹
・発疹はやがて融合して全身が赤くなる
・重症化すると下痢、嘔吐、意識障害などを伴うこともある

発疹が出始めてから3〜4日目をピークに、熱が下がり、徐々に回復へ向かいます。発疹は次第に茶色く変色し、数日かけて消えていきます。


3.麻疹(はしか)の原因

麻疹は麻疹ウイルス(Measles virus)による感染症です。ウイルスはパラミクソウイルス科に属し、極めて感染力が強いことで知られています。

麻疹に一度かかると、通常は生涯免疫が得られますが、ワクチン未接種者免疫不全状態の方は、何度も感染する可能性があります。

感染経路としては、

  • 空気感染(同じ空間にいるだけで感染)
  • 飛沫感染(咳やくしゃみのしぶき)
  • 接触感染(ウイルスの付着した手で目や口を触る)
    が挙げられます。

インフルエンザよりも遥かに感染力が高く、基本再生産数(R₀)は12〜18とされ、1人の感染者から10人以上にうつす可能性があります。


6.麻疹(はしか)の検査と診断

麻疹の診断は、臨床症状検査所見を組み合わせて行います。

診断の流れ

1. 臨床症状による判断

  • 高熱
  • カタル症状(咳、鼻水、結膜充血)
  • 特徴的な発疹とコプリック斑

これらの症状が典型的にみられる場合、臨床的に麻疹を強く疑います。

2. 確定診断のための検査

  • 血液検査(麻疹IgM抗体):発症から3〜4日後に陽性になります。
  • ウイルス遺伝子検査(PCR):鼻咽頭ぬぐい液や血液でウイルスの遺伝子を検出。
  • 咽頭ぬぐい液からのウイルス分離

特に流行地域への渡航歴がある人や、ワクチン未接種者であれば、速やかに検査が勧められます。


7.麻疹(はしか)の治療薬とその種類

麻疹ウイルスに対する特効薬(抗ウイルス薬)は存在しません。そのため、治療は対症療法が基本です。

対症療法の具体例

  • 解熱薬(アセトアミノフェンなど)で高熱を抑える
  • 十分な水分補給と安静
  • 二次感染(肺炎や中耳炎など)に対して抗菌薬
  • 栄養補給のための点滴

重症化しやすい乳児や免疫不全のある患者では、免疫グロブリン製剤の投与が検討されることもあります。

また、海外ではビタミンA補充療法が推奨されており、発展途上国では重症度を軽減させる効果が認められています。


7.麻疹(はしか)の合併症と予後

麻疹は単なる「子どもの病気」ではなく、深刻な合併症を引き起こすことがある、非常に注意すべき感染症です。

主な合併症

  • 肺炎(約6%):麻疹ウイルス自体または細菌の二次感染による
  • 中耳炎(7〜9%)
  • 脳炎(約1,000人に1人):けいれんや意識障害を起こし、後遺症や死亡のリスクあり
  • 亜急性硬化性全脳炎(SSPE):数年後に発症する進行性の神経障害、予後不良

予後

健康な人であれば自然に回復することが多いものの、乳幼児・高齢者・免疫力の弱い人では重症化するリスクが高いです。日本でも毎年、麻疹による入院や死亡例が報告されています。


8.なぜ麻疹(はしか)を治療しないといけないのか?

麻疹は極めて感染力が強く、命に関わる合併症を引き起こす感染症です。そのため、「自然に治るから放っておけばいい」とは決して言えません。

さらに、治療よりも予防の方がはるかに効果的です。麻疹に一度かかると終生免疫がつくとはいえ、その代償は大きく、ワクチン接種が最も安全で確実な対策です。

麻疹を治療・予防すべき理由

  • 高熱・全身の発疹などで日常生活が困難に
  • 感染力が高く、周囲の人にうつす
  • 脳炎など命に関わる合併症のリスク
  • 社会的流行による医療逼迫の可能性
  • ワクチンで予防できるにも関わらず、罹患することで大きな損失を受ける

9.参考文献

  1. 厚生労働省「麻疹(はしか)に関するQ&A」
     https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html
  2. 国立感染症研究所「麻疹に関する情報」
     https://www.niid.go.jp/niid/ja/measles.html
  3. World Health Organization (WHO). Measles factsheet.
     https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/measles
  4. 日本小児科学会「麻疹に関する解説」
     https://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=102
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