子どもに多い「水いぼ」とは?症状・治療・予防法を徹底解説【医師監修】

こどもの病気

1.水いぼとは?

「水いぼ(みずいぼ)」は、伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)というウイルス性の皮膚感染症です。原因はポックスウイルス科の「伝染性軟属腫ウイルス(Molluscum contagiosum virus, MCV)」で、特に1歳から10歳くらいまでの子どもに多くみられます。

水いぼは自然に治ることもありますが、人にうつる可能性がある感染症であり、保育園やプールなどでの集団生活を送る子どもたちにとって注意が必要な疾患です。


2.水いぼの症状

水いぼは、皮膚にできる小さな白っぽい丘疹として始まります。以下のような特徴があります。

  • 直径2〜5mm程度の丸い丘疹
  • 表面がつるっとしていて光沢がある
  • 中央が少しくぼんでいる
  • 痛みやかゆみは基本的にないが、掻くことで二次感染を起こすこともある
  • 押すと白いカスのような内容物が出る(この中にウイルスが多く含まれる)

多くの場合、1個〜数十個程度まで広がることがあり、数ヶ月かけて数が増えることもあります。


3.水いぼができやすい場所や時期は?

■ できやすい場所

水いぼは以下のような摩擦や接触が多い場所にできやすいです。

  • 脇の下
  • 胸や腹部
  • 太ももや膝の裏
  • おしり
  • 顔(特に幼児)

■ かかりやすい時期

  • 夏場(6〜9月)に多く見られます。これは、肌の露出が増え、プールや水遊びで皮膚接触が増えるためと考えられます。
  • 湿気や汗で皮膚のバリア機能が低下することも要因の一つです。

また、アトピー性皮膚炎や皮膚のバリア機能が低下している子どもは、水いぼにかかりやすい傾向にあります(日本皮膚科学会, 2022)。


4.水いぼの診断

水いぼは、典型的な皮膚所見で診断が可能です。以下のような方法で診断されます。

  • 視診:皮膚表面の特徴的な丘疹から多くは即座に診断可能です。
  • ダーモスコピー:拡大鏡を使って中央のくぼみや光沢を確認。
  • 内容物の検査:白い内容物を取り出してウイルスの有無を確認する場合も。

基本的には皮膚科の医師による視診で診断が確定されることが多いです。


5.水いぼの治療

■ 治療しない場合(自然経過)

水いぼはウイルス感染症ですが、多くは半年〜1年以内に自然に治癒します。そのため、特に症状が軽く数が少ない場合は、経過観察(様子見)とすることもあります。

ただし、以下の場合は積極的な治療を考慮します。

  • 掻いて広がってしまう
  • 保育園やプールでの制限がかかる
  • 見た目や心理的ストレスが大きい

■ 積極的治療法

治療法 方法 特徴・副作用
ピンセット除去 内容物をつまんで取り除く 最も一般的。痛みを伴うため、麻酔テープを使用することも。出血・疼痛あり
凍結療法(液体窒素) -196℃の窒素ガスで患部を凍らせる 痛みが強く、小児には不向きなことも
外用薬 サリチル酸ワセリンなど 効果に個人差あり。毎日の塗布が必要
イミキモド(保険適用外) 免疫応答を高めてウイルスを排除 費用がかかり、小児には使用されにくい

治療方針は、子どもの年齢、症状の程度、本人や家族の希望に応じて医師と相談しながら決めることが大切です。


6.水いぼはうつる?

■ 感染経路

水いぼは皮膚と皮膚の直接接触で感染します。

  • 兄弟間での皮膚接触
  • タオルやお風呂での共用
  • プールでの接触(水自体から感染するわけではなく、皮膚接触やビート板などの共有が原因)

■ 感染を防ぐには?

  • 水いぼに触れないこと
  • タオルや衣類の共有を避ける
  • 掻き壊さないよう爪を短く保つ
  • 保育園や学校へは原則登園・登校可能ですが、プールの指導が制限される場合もあり、主治医の判断が重要です。

厚生労働省の指針によれば、水いぼによる登園・登校の制限は不要とされています(保育所における感染症対策ガイドライン, 2022)。


7.参考文献

  1. 日本皮膚科学会. 伝染性軟属腫診療ガイドライン2022
  2. 厚生労働省. 保育所における感染症対策ガイドライン(2022年版)
  3. Centers for Disease Control and Prevention (CDC). Molluscum Contagiosum – Information for Healthcare Providers
  4. Berger EM et al. Molluscum contagiosum: An update. Pediatric Dermatology. 2017;34(4):357-363.
  5. 大塚篤司. 『皮膚科医が伝えたい子どもの皮膚トラブル対策』講談社, 2020.
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