【最新版】ノロウイルス感染症とは?症状・原因・検査・治療をわかりやすく解説

おとなの病気

1.ノロウイルス感染症とは?

ノロウイルス感染症は、冬季に流行する代表的な急性胃腸炎のひとつで、特に乳幼児や高齢者で重症化することがあります。わずかなウイルス量でも感染力が強く、学校や介護施設などで集団感染が起きやすいため、社会的にも大きな影響を及ぼします。

ノロウイルスはカリシウイルス科ノロウイルス属に分類され、1950年代から知られていますが、1972年に米国ノーウォーク市で発生した集団感染事例により、「ノーウォーク様ウイルス」として初めて同定されました。

ノロウイルスの特徴

  • 非常に少量(10〜100個程度)のウイルスでも感染可能
  • アルコール消毒が効きにくい
  • 冬季(11月〜3月)に流行のピーク
  • 便や吐物を介して感染が広がる

感染者の排泄物や吐物から、手指や調理器具を介して他人に広がるため、「手洗い」と「衛生管理」が最も重要な予防策です。


2.ノロウイルス感染症の症状

ノロウイルスに感染すると、潜伏期間(感染から発症まで)は約24〜48時間とされており、その後、以下のような急性胃腸炎症状が出現します。

主な症状

症状 説明
吐き気・嘔吐 特に子どもに多く見られる症状
下痢 水様性の便、1日数回以上になることも
腹痛 腸のけいれんによる痛み
発熱 微熱〜38℃程度の発熱がみられることも
全身倦怠感 食欲不振、脱水により体力が奪われることも

症状の持続期間

通常は1〜3日で回復しますが、高齢者や免疫力が低下している方では重症化や脱水の危険があります。


3.ノロウイルス感染症の原因

ノロウイルスは主に経口感染(口から体内に入る)で広がります。

主な感染経路

  1. 汚染された食品の摂取

  • 生牡蠣や貝類:海水中でノロウイルスを濃縮しやすい
  • 感染者が調理した食品
  1. 人から人への感染

  • 手指やドアノブ、タオルなどを介した接触感染
  1. 吐物や便の飛沫感染

  • 感染者が嘔吐した場所の処理が不十分だとウイルスが空中に広がる

注意すべき食品と状況

  • 加熱が不十分な二枚貝(特にカキ)
  • 学校・保育園・介護施設での接触機会
  • トイレの共用や共有タオルの使用

6.ノロウイルス感染症の検査と診断

医療機関での診断方法

ノロウイルス感染症は、症状や流行状況から臨床的に診断されることが多いですが、以下のような検査が行われることもあります。

検査名 内容 備考
迅速診断キット 便を用いてウイルス抗原を検出 保険適用外(特定施設で使用)
RT-PCR法 ウイルスの遺伝子を検出する最も正確な方法 主に行政検査や研究用
症状・家族歴の確認 流行状況・家族や周囲の感染の有無を確認 診断の手がかりとなる

検査の限界

  • ノロウイルスは保険診療での検査対象にならないことが多いため、重症例や集団感染時を除いて積極的に検査されないことが多いです。
  • ウイルスは回復後も1週間程度便から排泄されることがあり、感染拡大防止の観点での注意が必要です。

7.ノロウイルス感染症の治療

ノロウイルスに対しては、ウイルスを直接殺す薬(抗ウイルス薬)はありません。そのため、対症療法が中心となります。

主な治療内容

治療法 説明
水分補給 経口補水液(OS-1など)やスポーツドリンクで脱水予防
食事療法 消化の良いものを少量ずつ摂取、無理に食べない
安静 無理をせず、体力の回復を待つ
点滴療法 重度の脱水や嘔吐で経口摂取が難しい場合に行う

注意点

  • 下痢止め薬の使用は推奨されません(ウイルス排出が遅れるおそれ)
  • 高齢者や基礎疾患のある方は脱水症状に特に注意が必要です

8.こんな症状の時はクリニックを受診しましょう

ノロウイルス感染症は通常軽症で済みますが、以下のような場合は早めの受診が必要です。

受診すべき症状・状況

  • 水分がとれないほどの嘔吐や下痢が続く
  • 尿量が減っている・口が乾いているなど脱水のサイン
  • 高齢者や乳幼児がぐったりしている
  • 血便や強い腹痛がある
  • 周囲に同様の症状の人がいて感染が疑われる場合

9.終わりに:予防が最大の武器

ノロウイルスは完全な予防が難しいウイルスですが、手洗いや調理の加熱、体調管理などを徹底することで感染リスクを大きく減らすことが可能です。特に家庭や施設での感染対策が重要です。

感染が疑われたら慌てず、まずは脱水予防と安静を意識し、重症化が心配な場合は早めに医療機関へ相談しましょう。


参考文献

  1. 厚生労働省. ノロウイルスに関するQ&A.
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160576.html
  2. 国立感染症研究所. 感染症発生動向調査.
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/10/2096-weeklygraph/1646-norovirus.html
  3. 日本臨床微生物学会. 「ノロウイルスに関する基礎知識と対策」.
  4. 日本環境感染学会. ノロウイルス感染症対策マニュアル.
  5. Centers for Disease Control and Prevention (CDC). Norovirus.
    https://www.cdc.gov/norovirus/index.html

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