【医師監修】帯状疱疹とは?症状・原因・治療・ワクチンまで徹底解説

おとなの病気

1.帯状疱疹とは?

帯状疱疹(たいじょうほうしん)は、「水ぼうそう」と同じウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス:VZV)によって引き起こされる感染症です。水ぼうそうにかかったことのある人は、ウイルスが体内に潜伏し、免疫力の低下などをきっかけに再活性化することで、帯状疱疹として発症します。

片側の皮膚に赤い発疹や水ぶくれが帯状に現れ、強い痛みを伴うのが特徴です。高齢者に多い疾患として知られていましたが、最近ではストレスや過労が原因で若年層でも増加傾向にあります。


2.帯状疱疹の症状

帯状疱疹は発症部位や重症度により症状の出方が異なりますが、一般的な経過は以下のとおりです。

① 初期症状(前駆症状)

  • 倦怠感
  • 発熱(微熱程度)
  • ピリピリ・チクチクする痛みやかゆみ(皮膚に異常が出る前)

② 発疹・水ぶくれの出現

  • 痛みのある部位に赤い発疹が現れる
  • その後、水ぶくれ(水疱)へと変化
  • 多くは体の片側に帯状に広がる(体幹部、顔面、背中など)

③ 痛みの持続

  • 発疹が治まった後も**神経痛(帯状疱疹後神経痛:PHN)**として痛みが続く場合あり
  • 特に高齢者では数か月〜1年以上続くことも

3.帯状疱疹の原因

原因は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)によるウイルスの再活性化です。

● 水ぼうそうウイルスの再活性化

  • 水ぼうそうの治癒後もウイルスは神経節(脊髄の神経の根元)に潜伏
  • 加齢、疲労、ストレス、免疫力の低下などをきっかけに再び活動し、神経に沿って皮膚に発症

● リスク因子

以下の人は帯状疱疹を発症しやすいとされています。

リスク因子 解説
高齢者 60歳以上で特に多い
慢性疾患 糖尿病、がん、腎疾患など
免疫抑制状態 抗がん剤治療中、免疫抑制剤使用中
過労・ストレス 若年層でも発症リスク

4.帯状疱疹の診断と治療法

● 診断方法

  1. 問診と視診:典型的な帯状発疹でほぼ診断可能
  2. 水疱の検体検査:PCR検査などでウイルス検出
  3. 神経痛のみの場合:血液検査や神経検査を併用することも

● 治療方法

早期治療が重症化・後遺症予防のカギです。

治療法 内容
抗ウイルス薬 バラシクロビル、アシクロビルなどを内服または点滴
鎮痛薬 アセトアミノフェン、NSAIDs、プレガバリンなど
ステロイド(必要に応じて) 炎症や神経痛の緩和に使用されることも

発症から72時間以内の治療開始が理想です。


5.帯状疱疹の予後

● 回復までの期間

  • 通常は2〜3週間程度で皮膚症状が改善
  • ただし神経痛(PHN)が長引くことがある

● 帯状疱疹後神経痛(PHN)とは?

  • 発疹が治った後も持続する痛み
  • 高齢者では約2〜3割が経験
  • 焼けるような痛み、しびれ、感覚異常など
  • 治療には神経障害性疼痛に対する薬(プレガバリン、デュロキセチンなど)が用いられます

6.帯状疱疹で注意すること(日常生活など)

● 他人への感染

帯状疱疹そのものは空気感染しませんが、水疱の中にウイルスが含まれており、水ぼうそうにかかったことがない人に接触感染する可能性があります。

特に注意が必要な対象:

  • 乳幼児
  • 妊婦
  • 免疫が低下している人

● 入浴・運動・出勤

項目 注意点
入浴 発疹部分をこすらないように。水疱が破れていなければOK
運動 痛みが軽ければ軽い運動は可。ただし無理は禁物
出勤・登校 水疱がある間は感染力があるので慎重に。医師の判断を仰ぎましょう

7.帯状疱疹とワクチン

現在、日本では帯状疱疹の予防として以下の2種類のワクチンが使用されています。

● 乾燥弱毒生水痘ワクチン(ビケンなど)

  • 1回接種
  • 50歳以上が対象
  • 効果は5年程度とされる

● 不活化ワクチン(シングリックス®)

  • 2回接種(2か月間隔)
  • 高い予防効果(90%以上)
  • 免疫が低下している人にも使用可
  • 費用は自費または一部自治体で助成あり

● ワクチン接種の推奨

  • 帯状疱疹にかかったことがある人でも再発防止に有効
  • 50歳以上、あるいは基礎疾患を持つ方に特に推奨されます

8.まとめ:帯状疱疹は早期対応と予防が重要

帯状疱疹は誰にでも起こりうる疾患ですが、特に高齢者や免疫力の落ちている人では重症化や後遺症のリスクが高くなります。早期の受診・治療と、予防のためのワクチン接種が非常に重要です。

もし「ピリピリする痛み」や「帯状の発疹」が出たら、すぐに医療機関を受診しましょう。


9.参考文献

  1. 厚生労働省 感染症・予防接種ナビ「帯状疱疹とは」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187997.html
  2. 日本皮膚科学会「帯状疱疹診療ガイドライン」
  3. CDC(Centers for Disease Control and Prevention)
    https://www.cdc.gov/shingles/about/index.html
  4. ワクチン情報・日本ワクチン学会
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