1.超音波による骨粗鬆症検査とは?
骨粗鬆症は、骨の密度(骨密度)が低下して骨がもろくなり、骨折のリスクが高まる病気です。特に高齢者や閉経後の女性に多くみられ、日本では1,000万人以上が骨粗鬆症とされています(日本骨粗鬆症学会, 2021)。
この骨粗鬆症を早期に発見するために行われるのが「骨密度検査」です。従来の検査では「X線を使ったDEXA(デキサ)法」が有名ですが、最近では「超音波(QUS: Quantitative Ultrasound)による骨密度検査」も普及しています。
超音波法とは?
超音波による骨密度検査は、かかとの骨(踵骨)に超音波をあて、骨の強度を測定する方法です。X線を使わないため被ばくの心配がなく、簡便でスクリーニング(ふるい分け)に適しているとされます。
2.超音波による骨粗鬆症検査の方法
測定の流れ
- 靴下を脱ぎ、足首から下を露出。
- 専用の機械に片足のかかとをのせます。
- ジェルを塗布し、超音波プローブが骨に向けて音波を送信。
- 数秒で結果が出ます。
- このように、数分で終了し、痛みや不快感もありません。
測定部位:踵骨(しょうこつ)
踵骨は海綿骨が多く、骨代謝の変化が反映されやすいため、超音波検査に適しています。また、アクセスしやすい部位でもあります。
3.超音波による骨粗鬆症検査と他の検査との比較
比較項目 | 超音波法(QUS) | DEXA法(腰椎・大腿骨) | CT(QCT) |
---|---|---|---|
使用する技術 | 超音波 | X線 | X線 |
測定部位 | 踵骨 | 腰椎・大腿骨 | 腰椎・大腿骨 |
被ばくの有無 | なし | あり(ごく微量) | あり |
精度 | 中程度(スクリーニング向け) | 高い(診断基準に使用) | 非常に高い(研究や特殊症例) |
検査時間 | 約5分 | 約10~15分 | 約15分 |
費用(目安) | 約1,000~2,000円(自費の場合) | 約3,000~5,000円(保険適用あり) | 高額(1万円以上、自費) |
ポイント:
- 超音波法はあくまでスクリーニング目的。疑いがあれば、さらにDEXA法など精密検査が推奨されます。
- 病院ではDEXA法が主流ですが、自治体健診や薬局イベントなどで超音波検査が導入されているケースも多いです。
4.超音波による骨粗鬆症検査のメリット
① 非侵襲的で安全(放射線なし)
X線を使わないため、妊婦さんや若年者でも安全に受けられます。
② 短時間で簡便
靴を脱ぐだけで、痛みもなく短時間で結果がわかるため、忙しい方にも向いています。
③ どこでも実施可能
携帯型の装置も多く、病院以外の健康イベントや企業健診などでも実施可能です。
④ 結果がその場でわかる
測定後すぐに結果を印刷でき、骨の健康状態をすぐ確認できます。
⑤ スクリーニングに最適
全身状態の評価ではなく、**「骨が弱っているかどうかの目安」**を知るには有効です。
5.どんな人に超音波による骨粗鬆症検査をしたらよいか?
以下のような方は、一度スクリーニング検査として超音波による骨密度検査を受けてみるとよいでしょう。
● 特に検査を推奨される人
対象者 | 理由 |
---|---|
閉経後の女性 | エストロゲン低下で骨代謝が急変するため |
65歳以上の高齢者 | 加齢による骨量低下が顕著なため |
家族に骨粗鬆症や骨折歴がある人 | 遺伝的なリスクがあるため |
やせ型の人(BMIが低い) | 骨量が少なく骨折リスクが高いため |
喫煙や過度な飲酒をする人 | 骨代謝に悪影響があるため |
ステロイド薬を長期内服している人 | 骨吸収を促進する副作用があるため |
運動不足の人 | 骨への負荷が少なく、骨密度が下がりやすいため |
● 骨粗鬆症が疑われる症状がある人
- 背中が丸くなってきた
- 身長が縮んだ気がする
- 転倒して骨折したことがある
- 背中や腰に慢性的な痛みがある
このような方は、まずは簡便な超音波検査でスクリーニングし、必要に応じて整形外科などで精密検査(DEXA)を受けましょう。
6.まとめと参考文献
● まとめ
- 超音波による骨粗鬆症検査は簡便・非侵襲・安全。
- 骨の健康状態を手軽に知ることができるスクリーニング検査として有効。
- DEXA検査と比べると精度はやや劣るが、費用や実施のしやすさで優れる。
- 特に高齢者や閉経後の女性、リスク因子をもつ方は検査の受検を推奨。
骨折してからでは遅いため、「骨が弱っていないか?」を知る第一歩として、ぜひ活用しましょう。
参考文献
- 日本骨粗鬆症学会. 骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2022年版.
- Kanis JA, et al. “Assessment of fracture risk and its application to screening for postmenopausal osteoporosis: synopsis of a WHO report.” Osteoporosis Int. 1994.
- Krieg MA, et al. “Quantitative ultrasound in the management of osteoporosis: the 2007 ISCD Official Positions.” J Clin Densitom. 2008.
- Kutsuzawa A. et al. “Comparison of bone mineral density measurements by DEXA and quantitative ultrasound.” J Bone Miner Metab. 2009.
- 厚生労働省. 骨粗鬆症対策に関する取り組み. https://www.mhlw.go.jp/