在宅医療にかかる費用とは?費用の内訳・支払い方法・公的支援制度まで徹底解説

薬・その他

1.在宅医療にかかる費用について

近年、超高齢社会を背景に「在宅医療」が注目されています。在宅医療とは、通院が困難な患者が自宅で医療サービスを受けることができる仕組みです。医師や看護師、薬剤師などが自宅に訪問し、必要な医療を提供してくれるため、病院に行かなくても継続的な治療や管理が可能です。

しかし、「在宅医療ってお金がかかるのでは?」「入院より高いのでは?」という不安を抱える方も少なくありません。この記事では、在宅医療にかかる費用の目安や内訳、支払い方法、支援制度などを詳しく解説します。


2.在宅医療にかかる費用の内訳

在宅医療にかかる費用は、主に以下の項目に分かれます。

(1)訪問診療費

医師が定期的に自宅を訪問して診療を行う費用です。頻度や内容により金額は変動します。

  • 月2回の訪問診療:6,000~9,000円前後(1割負担時)

(2)往診費

体調の急変などで医師が緊急的に訪問した場合にかかる費用です。

  • 1回あたり:1,500~3,000円前後(1割負担時)

(3)訪問看護費

看護師によるバイタルチェック、処置、服薬管理などのサービスに対する費用です。

  • 1回あたり:800~1,000円(30分未満)〜1,400円程度(1時間以上)

(4)訪問リハビリ費

理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が訪問し、リハビリを提供する場合の費用です。

  • 1回(20分):約300円(1割負担)

(5)訪問薬剤管理指導費

薬剤師が訪問し、薬の説明や服薬指導を行う費用です。

  • 1回あたり:約500~700円(1割負担)

(6)医療材料費

ストマやカテーテル、在宅酸素療法などを受けている場合の医療器具・消耗品費です。

  • 月あたり数千円〜1万円程度(内容により大きく変動)

(7)その他

  • 在宅酸素療法:約5,000円~(1割負担)
  • 経管栄養、点滴管理、人工呼吸器管理などがある場合は加算が発生します。

3.在宅医療にかかる費用のルール

在宅医療の費用は、健康保険・介護保険のいずれかまたは両方が適用されます。

(1)医療保険の対象となるサービス

  • 医師の訪問診療・往診
  • 訪問看護(医療保険扱いの場合)
  • 訪問薬剤管理指導
  • 医療材料や在宅酸素

(2)介護保険の対象となるサービス

  • 訪問看護(主に慢性期や軽度の医療ニーズ)
  • 訪問リハビリ
  • 訪問入浴、訪問介護などと併用可能

※医療と介護の重複サービスは、医療ニーズの高い方に限り、医療保険が優先適用されます。

(3)自己負担割合

  • 原則:70歳以上は1〜3割、70歳未満は3割
  • 高齢受給者証を持っている方は、自己負担限度額が設定されています。

4.在宅医療にかかる費用の支払い方法

在宅医療費の支払い方法は、主に以下の通りです。

(1)月単位のまとめ請求

訪問診療・訪問看護などの費用は、月末にまとめて請求されることが一般的です。

(2)支払い手段

  • 現金、口座振替、クレジットカード等、提供事業所によって異なります。
  • 訪問看護・介護保険のサービスは、ケアマネジャーが費用管理をサポートしてくれる場合もあります。

(3)領収証の管理

医療費控除や高額療養費制度の申請の際に必要となるため、領収証は必ず保管しておきましょう


5.在宅医療にかかる費用と高額療養費制度

在宅医療においても、高額療養費制度の対象となります。

(1)高額療養費制度とは?

1ヶ月の自己負担額が一定額(自己負担限度額)を超えた場合、その超過分が払い戻される制度です。

(2)在宅医療で対象となる費用

  • 医療保険の適用範囲の自己負担分
  • ※介護保険の自己負担分は対象外

(3)自己負担限度額の目安(70歳以上・1割負担の場合)

(4)申請方法

  • 健康保険組合または市区町村の国保窓口に申請
  • マイナンバーカード連携で簡略化可能な場合もあり

(5)限度額適用認定証

事前に取得しておくことで、支払い時点で限度額を超える分を支払わなくて済みます(事後の払い戻しが不要)。

6.まとめ

在宅医療は通院が困難な方や、家で最期を迎えたいという方にとって、安心で人間らしい生活を支える大切な医療形態です。費用面では不安に感じる方も多いですが、保険制度や高額療養費制度を活用することで、多くの場合、経済的負担は抑えられます。

在宅医療を検討している方は、かかりつけ医や地域包括支援センター、ケアマネジャーに早めに相談し、サービス内容や費用を確認することをおすすめします。


参考文献

  1. 厚生労働省「在宅医療の推進に関する資料」
  2. 東京都福祉保健局「在宅療養あんしんガイド」
  3. 全国健康保険協会(協会けんぽ)「高額療養費制度について」
  4. 公益社団法人 日本医師会「在宅医療ガイドブック」
  5. 国民健康保険中央会「医療保険と介護保険の関係について」

タイトルとURLをコピーしました