【最新版】マダニ感染症とは?種類・症状・予防法を解説|日本紅斑熱・SFTS・ツツガムシ病との違いも

おとなの病気

1.マダニ感染症とは?

マダニ感染症とは、マダニ(節足動物の一種)に刺されることによって、体内に病原体が侵入し発症する感染症の総称です。日本では、毎年夏を中心に複数のマダニ媒介感染症が報告されており、重症化するケースもあります。特に「重症熱性血小板減少症候群(SFTS)」は死亡例も多く、注目されています。

マダニは草むらや森林、農地に生息し、人や動物が通ると皮膚に吸着して血を吸います。刺されただけではすぐに気付かないことも多く、発熱や皮疹などの症状が出て初めて気付くことも珍しくありません。

なぜ注意が必要なのか?

  • SFTSは致死率10~30%と高い
  • 日本全域で報告例がある
  • 高齢者では重症化しやすい
  • 市販薬では治せない感染症が多い

早期発見・早期治療が重要なため、正しい知識と予防が鍵となります。


2.日本紅斑熱とツツガムシ病の違い

日本紅斑熱とツツガムシ病は、どちらもマダニ類に類似した節足動物(マダニ・ツツガムシ)を媒介とする感染症で、混同されやすい病気です。

比較項目 日本紅斑熱 ツツガムシ病
媒介動物 マダニ ツツガムシ
病原体 リケッチア・ジャポニカ オリエンチア・ツツガムシ
潜伏期間 2〜8日 5〜14日
主な症状 発熱、皮疹、刺し口 発熱、刺し口、発疹、リンパ節腫脹
発症時期 春〜秋 秋〜初冬
治療 テトラサイクリン系抗菌薬 同左

両者ともリケッチア感染症に分類され、治療には同じ系統の抗菌薬(ドキシサイクリンなど)が用いられます。


3.マダニ感染症の種類

日本国内で報告されている代表的なマダニ感染症は以下のとおりです。

① 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

  • ウイルス性の感染症で、マダニを介して人に感染。
  • 致死率は20%以上。
  • 発熱、消化器症状、血小板減少、意識障害など。
  • 治療法は対症療法中心(有効な抗ウイルス薬はない)。

② 日本紅斑熱

  • 細菌(リケッチア)感染。
  • 刺し口、発熱、紅斑性発疹が三大症状。
  • 抗菌薬(テトラサイクリン系)で治療可能。

③ ライム病

  • スピロヘータという菌による感染症。
  • 欧米に多く、日本でも一部地域で発症例。
  • 遊走性紅斑(拡大する赤い発疹)が特徴。

④ Q熱(コクシエラ感染症)

  • ウシやヒツジ、ヤギなどの家畜からも感染する。
  • 空気感染もあるが、マダニ経由も報告あり。

⑤ ダニ媒介脳炎(TBE)

  • ウイルス性感染症で、北海道などに報告あり。
  • 重症化し、神経症状(痙攣・麻痺)を伴うことも。

4.マダニ感染症と季節性

マダニは**春から秋(特に5~9月)**に活動が活発になり、感染症の発症もこの時期に集中します。特に山間部でのレジャーや農作業、草むらでの作業がリスク要因となります。

  • 4~6月:活動開始、感染症の報告が増え始める
  • 7~8月:最も感染例が多くなるピーク
  • 9~10月:活動は徐々に減少

注意が必要な場所

  • 山林・畑・河原・公園の草むら
  • ペットの散歩ルート
  • バーベキューやハイキング時の林道

5.マダニ感染症の診断と治療

診断

マダニ感染症の診断は、問診・身体所見・血液検査が中心です。

  • 刺し口の確認
  • 発熱、皮疹、リンパ節腫脹
  • 白血球減少、血小板減少、肝酵素上昇(SFTSなど)
  • 必要に応じてPCR検査や血清抗体検査

治療

疾患名 主な治療
SFTS 対症療法(補液、解熱、ステロイドなど)
日本紅斑熱・ツツガムシ病 テトラサイクリン系抗菌薬(ドキシサイクリンなど)
ライム病 ペニシリン系またはテトラサイクリン系抗菌薬
Q熱 ドキシサイクリン、マクロライド系抗菌薬

特にSFTSには特異的な治療法が存在しないため、重症化しやすく注意が必要です。


6.マダニ感染症にならないために

予防の基本は「刺されないこと」

以下の対策を徹底することが重要です。

  • 肌の露出を避ける服装(長袖・長ズボン)
  • 帽子や手袋、首巻きなどの着用
  • 野外活動後の入浴と着替え
  • 防虫スプレー(ディート含有)の使用
  • ペットのマダニ予防薬の使用

マダニを発見したら?

  • 無理に引き抜かず、医療機関で処置を受ける
  • マダニの一部が皮膚内に残ると感染リスクが上がる

7.こんな時は受診を

以下のような症状がある場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。

  • 野外活動後に発熱や皮疹が出た
  • 刺し口が腫れて痛みがある
  • 全身倦怠感や意識障害がある
  • 高齢者・免疫力が低い人で感染が疑われる

早期の抗菌薬投与が重症化を防ぐ鍵になります。


参考文献

  1. 厚生労働省:マダニ媒介感染症について
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000183313.html
  2. 国立感染症研究所:重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/sa/sfts.html
  3. 日本感染症学会:日本紅斑熱の診療ガイドライン
  4. 山口県健康福祉部:マダニ感染症予防リーフレット
  5. Nature Reviews Disease Primers. (2020). “Tick-borne diseases”.
タイトルとURLをコピーしました