1.蜂に刺されるとどうなるか?
蜂に刺される事故は、夏から秋にかけてのアウトドアシーズンに多く発生します。刺された直後は、強い痛みや腫れ、かゆみなどが生じますが、場合によっては命に関わるアナフィラキシーショックを引き起こすこともあります。
一般的な症状
- 刺された部位の激しい痛み
- 赤みや腫れ
- かゆみ
これらは多くの場合、数日以内に自然と回復しますが、刺された回数や体質によって重症度が異なります。
重症化の兆候
- 全身のじんましん
- 呼吸困難、息苦しさ
- めまい、失神
- 血圧低下
- 嘔吐や下痢などの消化器症状
このような症状が現れた場合は、アナフィラキシーショックの可能性が高く、すぐに救急車を呼ぶべき状況です。
2.日本にいる蜂の種類
日本に生息する蜂は、大きく分けて以下の3つのグループに分類されます。
蜂の種類 | 特徴 | 危険性 |
---|---|---|
スズメバチ | 攻撃的で毒性が強い。体長2~4cmと大型。 | 非常に高い |
アシナガバチ | 細身で脚が長く、巣を外に吊るす。 | 中程度 |
ミツバチ | 比較的おとなしいが、巣への接近には注意。 | 低〜中程度 |
スズメバチ
特にキイロスズメバチやオオスズメバチは攻撃性が高く、複数回刺される危険性があります。巣の近くに人が入ると、集団で襲ってくることがあります。
アシナガバチ
比較的おとなしい性質ですが、巣に近づいたり攻撃したりすると刺してくることがあります。庭木やベランダ、軒下などに巣を作ることがあります。
ミツバチ
攻撃性は低いものの、巣に触れたり刺激した場合には防御行動として刺してきます。ミツバチは一度刺すと針が体に残り、蜂自身は死んでしまいます。
3.蜂の種類による症状の違い
蜂の種類によって注入される毒の成分が異なり、症状にも違いが出ます。
種類 | 主な症状 | 備考 |
---|---|---|
スズメバチ | 強い痛み・腫れ・アナフィラキシーのリスク大 | 多く刺されると致命的 |
アシナガバチ | 中等度の痛みと腫れ | 刺された箇所が熱を持つことが多い |
ミツバチ | 刺された後に針が残る。かゆみと腫れ | アナフィラキシーに注意が必要 |
スズメバチは神経毒やヒスタミン様物質を含んでおり、痛みや炎症が非常に強く出るのが特徴です。また、多くの人がアレルギー反応を起こしやすい酵素も含んでいます。
6.蜂に刺された時の対応
刺されたときの初期対応が重症化を防ぐ鍵です。以下の手順で冷静に対応しましょう。
ステップ1:安全な場所に避難する
蜂の巣が近くにある可能性があるため、まずは安全な場所に移動しましょう。スズメバチは一匹が攻撃すると、仲間を呼んで集団で襲ってくることがあります。
ステップ2:針の確認と除去(ミツバチの場合)
ミツバチに刺された場合は、針が皮膚に残ることがあります。指でつままず、カードなどでこすり出すように取り除きましょう。
指でつまむと毒嚢が圧迫され、より多くの毒が体内に入ってしまう恐れがあります。
ステップ3:患部を冷やす
刺された部位を保冷剤や冷水で冷やすと、腫れや痛みが軽減されます。冷やしすぎに注意し、タオルで包むなどして凍傷を防ぎましょう。
ステップ4:安静にして様子を見る
動き回ると血流が増えて毒が全身にまわる可能性があるため、静かにして様子を見ます。
ステップ5:抗ヒスタミン薬や鎮痛薬の使用
- かゆみ → 抗ヒスタミン薬(市販のかゆみ止め)
- 痛み → アセトアミノフェンやロキソプロフェン
ただし、アナフィラキシーの兆候がある場合は自己判断せず救急要請を優先しましょう。
7.アナフィラキシーショックになったら
アナフィラキシーとは、短時間で全身にアレルギー反応が起きる危険な状態です。刺されたことがきっかけで急激に発症することがあります。
アナフィラキシーの症状チェック
- 刺されてから数分~30分以内に全身症状が出現
- 息苦しい、喉が締めつけられる
- 動悸が速くなる
- 吐き気、意識の低下
すぐにすべき対応
- 119番に通報し、救急車を要請
- 仰向けで足を高くして寝かせる(ショック体位)
- エピペン®がある場合はすぐに太ももへ自己注射
エピペンとは?
エピペンはアドレナリン自己注射薬で、アナフィラキシー症状を一時的に緩和します。過去にアナフィラキシーを起こしたことがある人は、医師の処方で携帯することが推奨されます。
9.参考文献
- 厚生労働省:アナフィラキシーへの対応マニュアル
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000534258.pdf - 日本中毒情報センター:「蜂毒による中毒」
https://www.j-poison-ic.jp/ - 林昌洋ら.「蜂刺症の救急対応」日本救急医学会雑誌 2005; 16(3): 187–192.
- 三宅貴夫.「アナフィラキシーショックの診断と治療」アレルギー 2016; 65(3): 279–288.
- 日本アレルギー学会.アナフィラキシーガイドライン 2022年版