ツツガムシ病とは?症状・原因・治療をわかりやすく解説【最新版】

おとなの病気

1.ツツガムシ病とは?

ツツガムシ病は、リケッチアという種類の細菌の一種であるOrientia tsutsugamushi(オリエンティア・ツツガムシ)によって引き起こされる感染症で、ダニの一種であるツツガムシ(Leptotrombidium属)によって媒介されます。

日本では、春から秋にかけての野外活動(特に草むらや山林など)を通じて感染することがあり、地域的には西日本を中心に報告例が多く見られます。

ツツガムシ病は発熱、発疹、刺し口(黒色痂皮)などの特徴的な症状を伴い、早期に治療しないと重症化する恐れもあるため、正しい知識と予防が重要です。

ツツガムシ病と同様に、ダニによって媒介される日本後半熱、SFTSも同様の症状を呈するため注意が必要である。

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2.ツツガムシ病の症状

ツツガムシ病の潜伏期間は5〜14日程度で、以下のような症状がみられます。

主な症状

症状 説明
発熱 突然の高熱(39℃前後)が数日続く
頭痛・倦怠感 全身のだるさ、関節痛や筋肉痛を伴うことが多い
発疹 発熱から2〜5日後に体幹や四肢に赤い発疹が出現
刺し口(黒色痂皮) ダニに刺された部分に黒いかさぶた(黒色痂皮)が形成される
リンパ節の腫れ 特に刺し口の近くのリンパ節が腫れることがある

重症化すると…

まれに重症化し、以下のような合併症を起こすこともあります。

  • 肝炎や腎障害
  • 意識障害(中枢神経症状)
  • 播種性血管内凝固(DIC)

特に高齢者や基礎疾患を持つ方では、重症化リスクが高いため注意が必要です。

3.ツツガムシ病の原因

ツツガムシ病は、ダニの幼虫(ツツガムシ)が持つOrientia tsutsugamushiに咬まれることで感染します。

感染の流れ

  1. 野外(特に草地や河川敷、農地など)で活動する
  2. ツツガムシの幼虫に皮膚を刺される
  3. 幼虫の唾液を通じて細菌が体内に侵入
  4. 血流を通じて全身に感染が広がる

この病気は人から人へ直接感染することはありません

注意すべき場所・活動

  • 農作業
  • キャンプ・ハイキング
  • 草刈りや家庭菜園
  • ペットの散歩中に接触することも

近年では都市近郊でも報告されており、地方に限らない感染リスクがあります(厚生労働省, 2024)。

4.ツツガムシ病の検査と診断

ツツガムシ病の診断は、以下のような情報と検査を組み合わせて行います。

問診・身体診察

  • 野外活動歴の有無(特に直近2週間以内)
  • 体に黒色痂皮があるかの確認
  • 発疹の部位・時期など

血液検査

検査名 意義
白血球数・CRP 感染の程度や炎症反応を見る
肝機能・腎機能検査 合併症の有無を評価
抗体検査(ペア血清) O. tsutsugamushiに対する抗体を検出
PCR検査 病原体のDNAを直接検出し、早期診断に有効

抗体検査やPCR法により確定診断されることが多く、早期の臨床判断が重症化予防に重要です。

5.ツツガムシ病の治療

ツツガムシ病の治療は、抗菌薬(テトラサイクリン系)の内服が基本です。

使用される主な薬剤

薬剤名 特徴
ドキシサイクリン 初期治療の第一選択薬、早期投与で劇的に改善する
ミノサイクリン ドキシサイクリンが使えない場合の代替薬
アジスロマイシン 妊婦や小児などへの選択肢

ドキシサイクリンを投与すると、通常は24〜48時間以内に解熱することが多く、迅速な治療開始が重要です。

入院が必要なケース

  • 高齢者や免疫低下状態の人
  • 肝・腎機能障害を伴う場合
  • 点滴による治療が必要な重症例

重症例では早期に感染症科や内科医と連携した対応が推奨されます。

6.こんな症状の時はクリニックを受診しましょう

以下のような状況に当てはまる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

受診の目安

  • 野外活動後、数日して高熱が出た
  • 体のどこかに**黒いかさぶた(刺し口)**ができている
  • 発疹が全身に広がってきた
  • 強い倦怠感や頭痛が続いている

特に秋の行楽シーズンや田畑での作業後に症状が出た場合は、ツツガムシ病の可能性を念頭に置くことが重要です。

参考文献

  1. 厚生労働省. ツツガムシ病に関するQ&A. https://www.mhlw.go.jp
  2. 国立感染症研究所. 感染症発生動向調査・ツツガムシ病. https://www.niid.go.jp
  3. Mahajan SK. Scrub typhus. J Assoc Physicians India. 2005;53:954–958.
  4. Kelly DJ et al. The past and present threat of rickettsial diseases to military medicine and international public health. Clin Infect Dis. 2002;34(Suppl 4):S145–S169.
  5. 日本感染症学会. 感染症治療ガイドライン 第4版. 南山堂, 2023.
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