【最新版】RSウイルス感染症とは?症状・原因・治療法までわかりやすく解説

こどもの病気

1.RSウイルス感染症とは?

RSウイルス感染症(Respiratory Syncytial Virus:RSV)は、主に乳幼児や高齢者に重症化しやすい呼吸器感染症です。風邪と似た症状から始まりますが、特に生後6か月未満の赤ちゃんでは細気管支炎肺炎に進展することがあります。

日本では冬季を中心に毎年流行しますが、近年では流行時期が夏にずれるケースもあり、季節を問わない注意が必要な感染症となりつつあります。

主な感染経路

  • 飛沫感染(咳・くしゃみ)
  • 接触感染(ドアノブやおもちゃなど)

感染力が非常に強く、一度感染しても再感染することがあります。そのため、保育園や高齢者施設での集団感染にもつながりやすい特徴があります。

2.RSウイルス感染症の症状

RSウイルス感染症の症状は、年齢や基礎疾患の有無によって異なります

乳幼児の主な症状

  • 発熱
  • 咳、鼻水、鼻づまり
  • 呼吸が速い・ゼーゼー音(喘鳴)
  • 食欲不振
  • 無呼吸発作(特に新生児)

高齢者や基礎疾患のある人の場合

  • 長引く咳
  • 息切れ
  • 慢性呼吸器疾患(COPDや喘息)の悪化

合併症

  • 細気管支炎(bronchiolitis)
  • 肺炎
  • 中耳炎
  • 無呼吸発作(特に未熟児)

特に生後6か月未満の乳児では、初期症状が軽くても急速に呼吸困難が進行することがあるため注意が必要です。

3.RSウイルス感染症の原因

RSウイルス感染症の原因はその名の通り、RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)です。

このウイルスはパラミクソウイルス科に属しており、上気道から下気道まで感染するのが特徴です。主に鼻や喉などの粘膜に侵入し、炎症を起こします。

なぜRSウイルスは重症化しやすいのか?

  • 乳幼児は気道が狭く、炎症によって呼吸困難を引き起こしやすい。
  • 初感染時は免疫が未熟なため、ウイルスの増殖を抑えにくい。
  • 高齢者や心疾患・呼吸器疾患のある人では、ウイルスによる肺炎やCOPD悪化のリスクが高まる。

6.RSウイルス感染症の検査と診断

RSウイルス感染症の診断には、症状と年齢・流行時期の情報が参考にされますが、以下のような検査が行われることもあります。

主な検査方法

検査名 内容
鼻咽頭ぬぐい液検査 鼻の奥を綿棒でぬぐい、ウイルス抗原の有無を確認
PCR検査 RSウイルス遺伝子の有無を調べる高感度な検査
胸部X線 肺炎や細気管支炎が疑われる場合に画像診断を実施

小児科や内科の外来で使用される迅速抗原検査は10〜15分で結果が出るため、感染対策や保育園の登園判断にも役立ちます。

7.RSウイルス感染症の治療

現時点では、RSウイルスに特効薬はありません。治療は主に対症療法(症状を和らげる治療)が中心です。

対症療法の内容

  • 解熱剤(高熱に対して)
  • 去痰薬・咳止め(年齢や状態によって慎重に使用)
  • 酸素投与(呼吸が苦しい場合)
  • 点滴(脱水時)

入院の目安

  • 呼吸困難が強い
  • 哺乳や水分摂取ができない
  • 無呼吸発作がある
  • 高リスク児(未熟児、心疾患、慢性肺疾患など)

予防的な治療:パリビズマブ(Synagis)

RSウイルスの重症化を予防するために、重症化リスクの高い乳児に限りパリビズマブ(商品名:シナジス)というモノクローナル抗体製剤を月1回注射します。これは予防目的であり、治療薬ではありません。

ワクチン開発の動向

これまでRSウイルスに対するワクチン開発は難航していましたが、2023年に欧米で初の成人向けRSウイルスワクチンが承認され、日本でも導入が期待されています。

8.こんな症状の時はクリニックを受診しましょう

RSウイルスは通常の風邪と見分けがつきにくいですが、以下のような症状がある場合は早めに受診しましょう。

小児の場合

  • 呼吸が早く、肩やお腹が大きく動いている
  • 顔色が悪い、唇が紫色
  • 哺乳ができない・食欲がない
  • 発熱が3日以上続く
  • ゼーゼーとした音がする

高齢者・成人の場合

  • 咳が長引いて息苦しい
  • 持病(COPDや喘息)が悪化している
  • 38度以上の発熱が続く
  • 全身のだるさ・食欲不振が強い

感染拡大を防ぐためにも、マスクの着用や手洗い・うがい、体調の変化への注意が大切です。


9.参考文献

  1. 厚生労働省 感染症発生動向調査 RSウイルス感染症
    https://www.mhlw.go.jp
  2. 日本小児科学会 RSウイルス感染症について
    https://www.jpeds.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=20
  3. Centers for Disease Control and Prevention (CDC) – RSV
    https://www.cdc.gov/rsv/
  4. American Academy of Pediatrics. Updated guidance for the use of palivizumab prophylaxis among infants and young children at increased risk of hospitalization for RSV infection.
    Pediatrics. 2014;134(2):415-420.
  5. Clinical Infectious Diseases. RSV Vaccine Approvals and Updates 2023.
    https://academic.oup.com/cid/
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