健康診断で「血糖値が高い」「HbA1cが高い」「糖尿病の疑いがあります」と言われると、不安になりますよね。ただし、血糖値やHbA1cが少し高いと言われたからといって、すぐに糖尿病と確定するわけではありません。一方で、血糖の異常を放置すると、将来的に糖尿病や合併症につながることがあります。
この記事では、健康診断で血糖値・HbA1cの異常を指摘された方に向けて、糖尿病の診断基準、血糖が高いとどうなるのか、合併症、治療法、食事・運動などの生活習慣改善、遺伝やすい臓がんとの関連まで、わかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 血糖値とHbA1cの違い
- 糖尿病の診断基準
- 血糖値が高い状態を放置するとどうなるのか
- 糖尿病の合併症と予後
- 糖尿病の種類と治療法
- 食事・運動など生活習慣で気をつけること
- 糖尿病と遺伝、すい臓がんとの関係
血糖値・HbA1cとは?まず健診結果の意味を知りましょう
血糖値とは
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の濃度のことです。ブドウ糖は体を動かす大切なエネルギー源ですが、血液中に多すぎる状態が続くと血管を傷つけてしまいます。血糖値は食事の影響を受けやすく、食後には上がり、時間がたつと下がります。そのため、健診では主に空腹時血糖が測定されることが多いです。
HbA1cとは
HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)は、過去1〜2か月程度の平均的な血糖の状態を反映する検査です。血糖値はその日の食事や体調で変動しますが、HbA1cは比較的長い期間の血糖状態をみることができます。そのため、糖尿病の診断や治療効果の確認にとても重要な検査です。
血糖値・HbA1cが高いとどうなる?放置してはいけない理由
血糖値が高い状態が続いても、初期にはほとんど症状がありません。そのため、「元気だから大丈夫」「まだ薬は飲みたくない」と思ってしまう方も少なくありません。しかし、血糖が高い状態が続くと、少しずつ全身の血管や神経に負担がかかります。糖尿病が怖い理由は、血糖値そのものよりも、長い時間をかけて合併症が進行することにあります。
血糖値が高いと出やすい症状
血糖値がかなり高くなると、次のような症状が出ることがあります。
- のどが渇く
- 水分をたくさん飲む
- 尿の回数が増える
- 体重が減る
- 疲れやすい
- 目がかすむ
- 傷が治りにくい
- 皮膚や陰部の感染を繰り返す
ただし、健康診断で血糖異常を指摘される段階では、無症状の方も多くいます。症状がないからこそ、健診結果をきっかけに早めに確認することが大切です。
糖尿病の診断基準|血糖値・HbA1cはいくつから?
糖尿病は、血糖値やHbA1cの数値だけでなく、症状や再検査の結果などを総合して診断します。日本糖尿病学会の基準では、以下のいずれかに当てはまる場合、「糖尿病型」と判定されます。
| 検査項目 | 糖尿病型の目安 |
|---|---|
| 空腹時血糖値 | 126mg/dL以上 |
| 75g経口ブドウ糖負荷試験 2時間値 | 200mg/dL以上 |
| 随時血糖値 | 200mg/dL以上 |
| HbA1c | 6.5%以上 |
ただし、1回の健康診断だけで糖尿病と確定しないこともあります。たとえば、健診前日の食事、体調不良、強いストレス、睡眠不足、薬の影響などで一時的に血糖値が高くなることもあります。そのため、血糖値やHbA1cが高いと言われた場合は、医療機関で再検査を行い、必要に応じて空腹時血糖、HbA1c、尿検査、75g経口ブドウ糖負荷試験などを確認します。
糖尿病予備群・境界型にも注意が必要です
糖尿病の基準には達していなくても、血糖値が正常より高めの状態を糖尿病予備群や境界型と呼ぶことがあります。境界型の段階では、まだ薬が必要ないことも多いですが、将来的に糖尿病へ進行するリスクがあります。また、糖尿病になる前の段階から、動脈硬化のリスクが高まることも知られています。つまり、健診で「少し高い」と言われた段階は、怖がりすぎる必要はありませんが、生活習慣を見直す大切なタイミングです。
糖尿病の種類|1型・2型・その他の糖尿病
糖尿病と聞くと「食べすぎ」「太っている人の病気」というイメージを持たれがちですが、実際にはいくつかの種類があります。
1型糖尿病
1型糖尿病は、自己免疫などにより、すい臓のインスリンを作る細胞が壊れてしまうことで起こります。インスリンがほとんど出なくなるため、インスリン注射が必要になることが多い糖尿病です。子どもや若い方に発症することもありますが、大人になってから見つかることもあります。
2型糖尿病
日本人の糖尿病で最も多いのが2型糖尿病です。2型糖尿病は、遺伝的な体質に加えて、食べすぎ、運動不足、肥満、加齢、ストレス、睡眠不足などが重なることで発症しやすくなります。日本人は欧米人と比べて、強い肥満がなくてもインスリンを分泌する力が低下しやすいとされており、やせている方でも糖尿病になることがあります。
その他の糖尿病
糖尿病には、1型・2型以外にも次のようなものがあります。
- すい臓の病気による糖尿病
- ホルモンの病気による糖尿病
- ステロイドなど薬剤による糖尿病
- 遺伝子異常による糖尿病
- 妊娠糖尿病
急に血糖値が悪化した場合や、体重減少を伴う場合は、単なる生活習慣だけでなく、他の病気が隠れていないかを確認することも大切です。
糖尿病の予後と合併症|何が怖い病気なのか
糖尿病の予後は、血糖値だけで決まるわけではありません。血圧、コレステロール、体重、喫煙、腎機能、年齢、合併症の有無なども関係します。一方で、糖尿病は早く見つけて適切に治療すれば、合併症の発症や進行を抑えることができます。大切なのは、症状がない時期から治療を始めることです。
糖尿病の三大合併症
糖尿病の合併症としてよく知られているのが、次の3つです。
| 合併症 | 起こりうること |
|---|---|
| 糖尿病網膜症 | 視力低下、眼底出血、失明の原因になることがあります |
| 糖尿病性腎症 | 尿蛋白、腎機能低下、進行すると透析が必要になることがあります |
| 糖尿病神経障害 | 足のしびれ、痛み、感覚低下、足の傷や壊疽につながることがあります |
これらは細い血管が傷むことで起こるため、細小血管合併症と呼ばれます。
心筋梗塞・脳卒中などのリスクも高まります
糖尿病では、太い血管の動脈硬化も進みやすくなります。その結果、次のような病気のリスクが高まります。
- 心筋梗塞
- 狭心症
- 脳梗塞
- 閉塞性動脈硬化症
- 足の血流障害
特に、高血圧、脂質異常症、喫煙、肥満が重なると、心血管病のリスクはさらに高くなります。そのため、糖尿病の治療では血糖値だけでなく、血圧・脂質・禁煙・体重管理も重要です。
糖尿病の治療目標|HbA1cはどこまで下げる?
糖尿病の治療目標は、年齢、合併症、低血糖のリスク、生活状況などによって個別に決めます。一般的には、合併症予防のためにHbA1c 7.0%未満を目標にすることが多いです。ただし、若くて低血糖のリスクが少ない方では、より厳格な目標を目指すこともあります。一方で、高齢の方、重い合併症がある方、低血糖を起こしやすい方では、無理に下げすぎない目標にすることもあります。大切なのは、数値だけを追いかけるのではなく、安全に、長く続けられる治療を選ぶことです。
糖尿病の治療法|食事・運動・薬物療法
糖尿病の治療は、主に次の3つを組み合わせて行います。
- 食事療法
- 運動療法
- 薬物療法
食事療法
食事療法は、糖尿病治療の基本です。ただし、「糖質を完全に抜く」「好きなものを全部やめる」という極端な方法は長続きしません。まずは、次のようなポイントを意識しましょう。
- 1日3食をできるだけ規則正しく食べる
- 食事の時間が大きくずれないようにする
- 主食の量を食べすぎない
- 野菜、海藻、きのこ類を取り入れる
- 甘い飲み物を控える
- 間食や夜食を見直す
- アルコールを飲みすぎない
- 早食いを避け、ゆっくり食べる
特に、ジュース、スポーツドリンク、加糖コーヒー、甘い炭酸飲料などは、血糖値を急に上げやすい飲み物です。健康診断で血糖値が高いと言われた方は、まず甘い飲み物を減らすことから始めるのがおすすめです。
運動療法
運動は、血糖値を下げるだけでなく、インスリンの効きをよくし、体重や血圧、脂質の改善にも役立ちます。目安としては、ウォーキングなどの有酸素運動を週150分程度、週3回以上行うことが勧められます。また、筋肉を保つために、スクワットや軽い筋力トレーニングなどのレジスタンス運動も有効です。いきなり激しい運動を始める必要はありません。まずは、次のような工夫から始めてみましょう。
- 食後に10〜15分歩く
- エレベーターではなく階段を使う
- 車移動を少し減らす
- 1日20〜30分の散歩を習慣にする
- テレビを見ながら軽い筋トレをする
ただし、インスリンや一部の糖尿病薬を使っている方は、運動で低血糖を起こすことがあります。薬を使っている方、心臓病や腎臓病がある方は、運動を始める前に医師に相談しましょう。
薬物療法
生活習慣の改善だけで血糖コントロールが難しい場合は、薬を使います。糖尿病の薬には、さまざまな種類があります。
- インスリンの効きをよくする薬
- インスリンの分泌を助ける薬
- 糖の吸収をゆるやかにする薬
- 尿から糖を出しやすくする薬
- 食欲や体重にも影響する注射薬
- インスリン注射
最近は、血糖値だけでなく、体重、心臓、腎臓への影響も考えながら薬を選ぶ時代になっています。どの薬がよいかは、年齢、体重、腎機能、心臓病の有無、低血糖リスク、生活スタイルによって変わります。薬を始めることは「悪くなった」という意味ではありません。合併症を防ぐために、体を守る治療の一つです。
血糖値・HbA1cを改善する生活習慣のポイント
体重を少し減らすだけでも効果があります
肥満がある方では、体重を少し減らすだけでも血糖値が改善することがあります。目標は最初から大きくなくてかまいません。まずは現在の体重の3〜5%程度の減量を目指すだけでも、血糖、血圧、脂質の改善につながることがあります。
睡眠不足やストレスも血糖に影響します
血糖値は、食事や運動だけでなく、睡眠不足やストレスの影響も受けます。睡眠時間が短い、夜勤がある、強いストレスが続いている、食事時間が不規則といった方は、血糖コントロールが乱れやすくなります。生活を完璧に整える必要はありませんが、できる範囲で睡眠、食事時間、運動のリズムを整えることが大切です。
禁煙も重要です
糖尿病と喫煙が重なると、動脈硬化が進みやすくなり、心筋梗塞や脳卒中、足の血流障害などのリスクが高くなります。血糖値が高いと言われた方は、禁煙についてもぜひ検討しましょう。
糖尿病は遺伝する?家族に糖尿病がいる場合
糖尿病は、遺伝だけで決まる病気ではありません。ただし、2型糖尿病では、家族に糖尿病の方がいると発症しやすい体質を受け継いでいる可能性があります。そこに、食べすぎ、運動不足、肥満、加齢、睡眠不足、ストレスなどが重なることで発症しやすくなります。つまり、家族に糖尿病がいるから必ず糖尿病になるわけではありません。一方で、家族歴がある方は、若いうちから血糖値・HbA1cを確認し、生活習慣を整えることが大切です。また、親が糖尿病である場合、食事内容や生活リズムが家族内で似ていることもあります。家族全体で、甘い飲み物を減らす、食後に歩く、野菜を増やすなどの工夫をすると、無理なく続けやすくなります。
血糖値の悪化とすい臓がんの関連
血糖値やHbA1cが高い場合、多くは2型糖尿病や糖尿病予備群です。しかし、注意したいのがすい臓がんとの関連です。すい臓は、血糖値を下げるインスリンを作る臓器です。すい臓に病気が起こると、インスリンの分泌に影響し、糖尿病が急に発症したり、もともとの糖尿病が急に悪化したりすることがあります。特に、次のような場合は医療機関で相談してください。
- 急に血糖値やHbA1cが悪化した
- 生活習慣が変わっていないのに血糖が上がった
- 食事を減らしていないのに体重が減っている
- 背中やみぞおちの痛みが続く
- 食欲不振がある
- 皮膚や白目が黄色くなる
- 家族にすい臓がんの方がいる
もちろん、血糖値が高いからといって、すぐにすい臓がんを疑う必要はありません。ただし、急な糖尿病の発症や急激な悪化、体重減少を伴う場合は、腹部エコーやCTなどの検査が必要になることがあります。
健康診断で血糖値・HbA1cが高いと言われたら何科を受診する?
血糖値やHbA1cの異常を指摘された場合は、内科、糖尿病内科、かかりつけ医で相談できます。受診時には、健診結果を持参しましょう。医療機関では、必要に応じて次のような検査を行います。
- 空腹時血糖
- HbA1c
- 尿糖・尿蛋白
- 腎機能検査
- 肝機能検査
- 脂質検査
- 尿アルブミン検査
- 眼底検査の紹介
- 必要に応じて75g経口ブドウ糖負荷試験
- 急な悪化や体重減少がある場合は腹部画像検査
早めに受診した方がよいケース
次のような場合は、早めの受診をおすすめします。
- HbA1cが6.5%以上
- 空腹時血糖が126mg/dL以上
- 随時血糖が200mg/dL以上
- 尿糖を強く指摘された
- のどの渇き、尿が多い、体重減少がある
- 妊娠中、または妊娠を希望している
- ステロイド治療中で血糖が高い
- 以前より急に血糖値が悪化した
よくある質問
Q. HbA1cが少し高いだけでも受診した方がいいですか?
はい。HbA1cが少し高い段階でも、糖尿病予備群や境界型の可能性があります。早めに生活習慣を見直すことで、糖尿病への進行を防げる可能性があります。
Q. 血糖値が高いと言われたら、すぐ薬が必要ですか?
必ずしもすぐに薬が必要とは限りません。数値の程度、年齢、体重、合併症の有無、生活習慣などを確認し、まず食事や運動から始める場合もあります。一方で、血糖値が高い場合や症状がある場合は、早めに薬物治療が必要になることもあります。
Q. 甘いものをやめれば糖尿病は治りますか?
甘い飲み物やお菓子を減らすことは大切ですが、それだけで十分とは限りません。主食の量、食事時間、運動不足、体重、睡眠、ストレスなども血糖値に関係します。全体の生活習慣を少しずつ整えることが重要です。
Q. やせていても糖尿病になりますか?
はい。日本人では、強い肥満がなくてもインスリンを出す力が弱くなり、糖尿病になることがあります。やせている方でも、HbA1cや血糖値が高い場合は放置せず確認しましょう。
Q. 糖尿病は一度なったら治りませんか?
糖尿病は長く付き合う病気ですが、早期に生活習慣を改善することで、薬を使わずに良好な血糖を維持できる方もいます。薬が必要になった場合でも、適切に治療すれば合併症を防ぎながら生活することができます。
まとめ|血糖値・HbA1cが高いと言われたら、早めの確認が大切です
健康診断で血糖値・HbA1cが高いと言われると、不安になるかもしれません。しかし、早めに気づけたことは大きなチャンスです。糖尿病は、初期には症状がほとんどありませんが、放置すると網膜症、腎症、神経障害、心筋梗塞、脳卒中などの合併症につながります。一方で、早めに確認し、食事・運動・体重管理・必要な治療を行えば、合併症の予防につながります。血糖値やHbA1cが高いと言われた方は、「まだ症状がないから大丈夫」と考えず、健診結果を持って医療機関で相談しましょう。
