- 1.FIFA 11+とは?サッカーのケガ予防のためのウォーミングアップ
- 2.なぜサッカーではケガ予防が重要なのか?
- 3.FIFA 11+で予防が期待される主なケガ
- 4.FIFA 11+の内容|3つのパートで構成される
- 5.Part 1|ランニングと動的ストレッチ
- 6.Part 2|体幹・筋力・バランス・ジャンプ動作
- 7.Part 3|スプリントと方向転換
- 8.FIFA 11+はどのくらい効果があるの?
- 9.どのくらいの頻度で行えばよい?
- 10.FIFA 11+を行うときの注意点
- 11.小学生にもFIFA 11+は必要?
- 12.保護者・指導者がチェックしたいポイント
- 13.受診を考えた方がよい症状
- 14.まとめ|FIFA 11+はサッカー選手のケガ予防に役立つ習慣
- 参考文献
1.FIFA 11+とは?サッカーのケガ予防のためのウォーミングアップ
FIFA 11+(フィファ・イレブンプラス)とは、サッカー選手のケガを予防するために作られた、約20分間のウォーミングアッププログラムです。
FIFA Medical Assessment and Research Centre(F-MARC)を中心に開発され、主に14歳以上のサッカー選手を対象としています。
サッカーでは、ダッシュ、急停止、方向転換、ジャンプ、接触プレーが多く、膝・足首・太もも・股関節に大きな負担がかかります。そのため、前十字靭帯(ACL)損傷、足関節捻挫、肉離れ、膝の痛みなどが起こりやすい競技です。
FIFA 11+は、単なる準備運動ではなく、体幹・下肢筋力・バランス・ジャンプ動作・着地動作・方向転換動作を総合的に鍛えることで、ケガを起こしにくい体の使い方を身につけることを目的としています。
2.なぜサッカーではケガ予防が重要なのか?
サッカーでは、相手との接触だけでなく、接触がない場面でも大きなケガが起こります。特に注意したいのが、次のような場面です。
- 急に止まる
- 急に方向転換する
- ジャンプ後に片脚で着地する
- ボールを追いながら体勢が崩れる
- 疲労がたまった状態でプレーを続ける
このような場面では、膝が内側に入ったり、体幹がぶれたり、足首が不安定になったりします。その結果、膝や足首に大きな負担がかかり、ケガにつながります。
特に前十字靭帯損傷は、復帰までに長期間を要することがあり、選手にとって大きな問題です。だからこそ、日頃のウォーミングアップの中で、正しい体の使い方を身につけておくことが重要です。
3.FIFA 11+で予防が期待される主なケガ
FIFA 11+は、サッカーで起こりやすい下肢のケガを減らす目的で作られています。
| ケガ・障害 | 起こりやすい場面 | FIFA 11+で意識するポイント |
|---|---|---|
| 前十字靭帯(ACL)損傷 | 急停止、方向転換、ジャンプ着地 | 膝が内側に入らない着地・切り返し動作 |
| 足関節捻挫 | 着地、接触、方向転換 | 片脚バランス、足首の安定性 |
| 肉離れ | ダッシュ、スプリント、急加速 | ハムストリングスの筋力、柔軟性 |
| 膝の痛み | ジャンプ、ダッシュ、繰り返す練習 | 股関節・体幹・膝の連動 |
| 腰痛 | 体幹のぶれ、接触、キック動作 | 体幹安定性、姿勢コントロール |
4.FIFA 11+の内容|3つのパートで構成される
FIFA 11+は、全部で約20分のプログラムです。大きく分けて、次の3つのパートで構成されています。
| パート | 内容 | 目的 |
|---|---|---|
| Part 1 | ゆっくりしたランニングと動的ストレッチ | 体を温め、股関節や下肢を動きやすくする |
| Part 2 | 筋力・バランス・体幹・ジャンプ動作 | ケガを予防するための体の使い方を身につける |
| Part 3 | 中〜高強度のランニング、方向転換、スプリント | 試合に近い動きへ体を準備する |
FIFA 11+の特徴は、ウォーミングアップでありながら、筋力トレーニングやバランストレーニングの要素も含まれていることです。
5.Part 1|ランニングと動的ストレッチ
Part 1では、ゆっくりしたランニングを行いながら、股関節や下肢を動かしていきます。代表的な動きには、次のようなものがあります。
- まっすぐ走る
- 股関節を外側に開く
- 股関節を内側に動かす
- パートナーと回り込む動作
- 肩同士で軽く接触しながらジャンプする動作
- 前後への素早いステップ
ここでは、いきなり全力で走るのではなく、体を温めながら、股関節・膝・足首がスムーズに動くように準備します。
6.Part 2|体幹・筋力・バランス・ジャンプ動作
FIFA 11+で最も重要なのがPart 2です。ここでは、体幹、股関節、太もも、膝、足首の安定性を高める運動を行います。代表的な内容は以下の通りです。
| 運動 | 目的 |
|---|---|
| プランク | 体幹を安定させ、姿勢のぶれを防ぐ |
| サイドプランク | 横方向の体幹安定性を高める |
| ハムストリングス運動 | 肉離れ予防、膝の安定性向上 |
| 片脚バランス | 足首の捻挫予防、着地時の安定性向上 |
| スクワット | 膝・股関節・足首を連動させる |
| ジャンプ動作 | 正しい着地、膝のコントロールを身につける |
特に大切なのは、膝が内側に入らないことです。ジャンプの着地やスクワットで膝が内側に入ると、前十字靭帯や膝関節に負担がかかりやすくなります。FIFA 11+では、股関節・膝・足首が一直線に近い状態になるように意識します。
7.Part 3|スプリントと方向転換
Part 3では、より試合に近い動きに入ります。
- 中等度から高強度のランニング
- 大きなステップでの走行
- 方向転換
- ストップ&ゴー
- 加速・減速
サッカーでは、試合中に急に止まったり、切り返したりする場面が多くあります。このときに膝や足首が不安定だと、ケガにつながります。
Part 3では、体が温まった状態でスピードを上げ、実際のプレーに近い動きを安全に行う準備をします。
8.FIFA 11+はどのくらい効果があるの?
FIFA 11+は、複数の研究でサッカー選手のケガ予防効果が報告されています。システマティックレビューでは、FIFA 11+を行うことで、サッカーのケガが約39%減少したと報告されています。また、別のレビューでは、適切に継続することで下肢のケガを減らす可能性が示されています。ただし、重要なのは「やったことがある」ではなく、正しいフォームで継続することです。FIFA 11+は、週に1回だけ形だけ行うよりも、練習前の標準的なウォーミングアップとして継続することで効果が期待されます。
9.どのくらいの頻度で行えばよい?
FIFA 11+は、基本的には練習前のウォーミングアップとして、週2回以上行うことが推奨されています。
| 場面 | 実施内容 |
|---|---|
| 通常練習前 | Part 1〜Part 3まで全体を実施 |
| 試合前 | ランニング中心の短縮版を実施 |
| 導入初期 | ゆっくり正しいフォームを確認 |
| 慣れてきたら | 強度やレベルを段階的に上げる |
最初から難しいレベルで行う必要はありません。むしろ、フォームが崩れた状態で行うと逆効果になることがあります。まずは基本動作を正しく行い、慣れてきたら少しずつ強度を上げていきましょう。
10.FIFA 11+を行うときの注意点
FIFA 11+は安全性の高いプログラムですが、次の点には注意が必要です。
- 痛みがあるときは無理に行わない
- 膝が内側に入らないようにする
- 着地は柔らかく行う
- 体幹が大きくぶれないようにする
- 疲れてフォームが崩れたら中止する
- コーチや指導者がフォームを確認する
特に、成長期の選手や過去に膝・足首のケガをしたことがある選手では、フォーム確認が重要です。
11.小学生にもFIFA 11+は必要?
通常のFIFA 11+は、主に14歳以上の選手を対象としています。一方で、7〜13歳の子ども向けには、FIFA 11+ Kidsというプログラムもあります。子どもでは、大人と同じ強度のトレーニングを行うのではなく、年齢や発達段階に合わせて、バランス、体の使い方、転倒予防、着地動作を楽しく学ぶことが大切です。小学生に導入する場合は、無理な筋力トレーニングとしてではなく、遊びの要素を取り入れた運動準備として行うとよいでしょう。
12.保護者・指導者がチェックしたいポイント
FIFA 11+を効果的に行うには、選手本人だけでなく、保護者や指導者の理解も大切です。
- ウォーミングアップを省略していないか
- 痛みを我慢してプレーしていないか
- 膝が内側に入る癖がないか
- 足首の捻挫を繰り返していないか
- 練習量が急に増えていないか
- 疲労や睡眠不足が続いていないか
サッカーのケガ予防は、ストレッチだけで完結するものではありません。練習量、休養、栄養、睡眠、フォーム、シューズなどを含めて総合的に考える必要があります。
13.受診を考えた方がよい症状
次のような症状がある場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
- 膝が腫れている
- 膝がガクッと抜ける感じがある
- 足首の捻挫を繰り返している
- 痛みが1〜2週間以上続いている
- 走る、蹴る、ジャンプする動作で痛みがある
- 痛みをかばってフォームが変わっている
- 太ももやふくらはぎの肉離れを繰り返している
特に、膝の腫れや不安定感がある場合は、前十字靭帯損傷や半月板損傷が隠れていることがあります。痛みを我慢してプレーを続けるのではなく、早めに相談することが大切です。
14.まとめ|FIFA 11+はサッカー選手のケガ予防に役立つ習慣
FIFA 11+は、サッカー選手のケガを予防するために作られた、科学的根拠のあるウォーミングアッププログラムです。特に、前十字靭帯損傷、足関節捻挫、肉離れ、膝の痛みなどの予防を考えるうえで、体幹・下肢筋力・バランス・着地動作・方向転換動作を鍛えることは非常に重要です。大切なのは、短期間だけ行うことではなく、練習前の習慣として継続することです。サッカーを長く安全に楽しむために、チーム全体でFIFA 11+を取り入れ、ケガをしにくい体づくりを目指しましょう。

参考文献
- FIFA|Injury prevention and health promotion
- Thorborg K, et al. Effect of specific exercise-based football injury prevention programmes on the overall injury rate in football: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2017.
- Bizzini M, et al. FIFA 11+: an effective programme to prevent football injuries in various player groups worldwide. Br J Sports Med. 2015.
- The FIFA 11+ Kids Injury Prevention Program Reduces Injury Rates Among Male Children Soccer Players. Orthop J Sports Med. 2023.
- FIFA 11+ KIDS in the prevention of soccer injuries in children: a systematic review. 2024.

