夏になると、保育園や幼稚園、学校などで「夏風邪」が流行することがあります。特に子どもに多い夏風邪として、ヘルパンギーナ、手足口病、咽頭結膜熱(プール熱)がよく知られています。
お子さんが急に熱を出したり、のどを痛がったり、口の中に水ぶくれができたり、手足に発疹が出たり、目が赤くなったりすると、お母さん・お父さんはとても心配になると思います。
しかし、これらの夏風邪の多くはウイルス感染症であり、数日から1週間程度で自然に回復することが多い病気です。大切なのは、病名だけにとらわれるのではなく、水分がとれているか、ぐったりしていないか、呼吸が苦しそうではないかを確認することです。
この記事では、子どもの夏風邪でよくみられるヘルパンギーナ・手足口病・咽頭結膜熱(プール熱)について、症状の違い、受診のタイミング、自宅でできる対応、登園・登校の目安をわかりやすく解説します。
この記事のポイント
- 夏風邪の多くはウイルス感染症で、抗菌薬は通常必要ありません。
- ヘルパンギーナは「高熱」と「のど・口の奥の痛み」が特徴です。
- 手足口病は「口の中・手・足の発疹」が特徴です。
- 咽頭結膜熱(プール熱)は「発熱・のどの痛み・目の充血」が特徴です。
- 家庭では、食事よりも水分補給を優先しましょう。
夏風邪とは?
「夏風邪」は正式な病名ではなく、夏に流行しやすいウイルス感染症の総称として使われる言葉です。代表的なものに、ヘルパンギーナ、手足口病、咽頭結膜熱(プール熱)などがあります。
原因となるウイルスは、エンテロウイルス、コクサッキーウイルス、アデノウイルスなどです。これらは、飛沫感染、接触感染、便に含まれるウイルスが口に入る糞口感染などで広がります。
夏風邪は「高熱が出る」「のどが痛い」「口内炎ができる」「発疹が出る」「目が赤くなる」など、病気によって特徴があります。ただし、症状だけで完全に見分けることは難しいため、心配な場合は医療機関で相談しましょう。
ヘルパンギーナ・手足口病・咽頭結膜熱の違い
| 病気 | 主な症状 | 特徴 | 注意したいこと |
|---|---|---|---|
| ヘルパンギーナ | 突然の高熱、のどの痛み、口の奥の水ぶくれ・口内炎 | 口の奥が痛くなり、水分を嫌がることがあります | 脱水に注意 |
| 手足口病 | 口の中の水ぶくれ、手・足・おしりなどの発疹、発熱 | 発熱は軽いこともあります。発疹が目立つ病気です | まれに髄膜炎などに注意 |
| 咽頭結膜熱 (プール熱) |
発熱、のどの痛み、目の充血、目やに | アデノウイルスによる感染症で、発熱が数日続くことがあります | 登園・登校停止期間に注意 |
ヘルパンギーナとは?
ヘルパンギーナは、主にエンテロウイルスやコクサッキーウイルスによって起こる、子どもに多い夏の感染症です。特に乳幼児に多く、初夏から夏にかけて流行しやすい病気です。
ヘルパンギーナの主な症状
- 突然の高熱
- のどの痛み
- 口の奥にできる小さな水ぶくれや口内炎
- 食欲低下
- 機嫌が悪い
- よだれが増える
熱は1〜3日程度で下がることが多く、全体としては数日で改善していくことが一般的です。ただし、口の中が痛くて水分をとれないことがあり、脱水には注意が必要です。
ヘルパンギーナで自宅でできる対応
ヘルパンギーナに特効薬はなく、基本的には症状を和らげながら自然に治るのを待ちます。
- 水分をこまめにとらせる
- のどごしのよいものを少量ずつ食べさせる
- 熱や痛みがつらいときは、医師の指示に従って解熱鎮痛薬を使う
- 無理に食べさせず、水分を優先する
口の中が痛いときは、熱いもの、酸っぱいもの、しょっぱいものはしみることがあります。冷ましたスープ、ゼリー、プリン、ヨーグルト、アイス、経口補水液など、子どもが飲み込みやすいものを選びましょう。
手足口病とは?
手足口病は、口の中、手のひら、足の裏、足の甲、おしりなどに水ぶくれのような発疹が出るウイルス感染症です。乳幼児に多い病気ですが、小学生や大人が感染することもあります。
手足口病の主な症状
- 口の中の水ぶくれ・口内炎
- 手のひら、足の裏、足の甲の発疹
- おしりや膝の発疹
- 発熱
- 食欲低下
手足口病は、発熱があっても高熱にならないこともあります。一方で、口の中の痛みが強い場合は、食事や水分を嫌がることがあります。
また、原因となるウイルスが複数あるため、一度かかっても別の型のウイルスで再びかかることがあります。
手足口病で自宅でできる対応
- 水分をこまめにとる
- 口にしみない食べ物を選ぶ
- 発疹は無理に触らない
- 手洗いをしっかり行う
- おむつ交換後は手洗いを徹底する
手足口病も、基本的には自然に改善する病気です。発疹に特別な塗り薬が必要ないことも多く、かゆみや痛みが強い場合には医療機関で相談しましょう。
咽頭結膜熱(プール熱)とは?
咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)は、主にアデノウイルスによって起こる感染症です。以前はプールを介して感染が広がることがあったため、一般的に「プール熱」とも呼ばれています。
ただし、現在はプールだけで感染する病気ではありません。咳やくしゃみ、手指、タオルの共有などを通じて感染することがあります。そのため、家庭や保育園、幼稚園、学校などの集団生活で広がることがあります。
咽頭結膜熱の主な症状
- 発熱
- のどの痛み
- 目の充血
- 目やに
- 涙が多い
- 頭痛
- 食欲低下
咽頭結膜熱では、発熱、咽頭炎、結膜炎が特徴です。熱が数日続くこともありますが、多くは自然に改善します。
目の充血が強い、目の痛みがある、まぶしがる、見えにくそうにしている場合は、眼科受診も検討しましょう。
咽頭結膜熱で自宅でできる対応
- 水分をこまめにとる
- のどが痛いときは、刺激の少ない食べ物を選ぶ
- 発熱でつらいときは、医師の指示に従って解熱鎮痛薬を使う
- タオルを家族で共有しない
- 目やにを拭いた後は手洗いをする
- プールや集団活動は、医師や園・学校の指示に従う
アデノウイルスには抗菌薬は効きません。基本的には、水分補給や休養、解熱鎮痛薬などによる対症療法が中心です。
受診のタイミング|こんなときは医療機関へ
夏風邪の多くは自然に改善しますが、次のような場合は医療機関を受診しましょう。
受診をおすすめする症状
- 水分がほとんどとれない
- 半日以上おしっこが出ない、尿が極端に少ない
- ぐったりしている、反応が悪い
- 呼吸が苦しそう
- 強い頭痛、何度も吐く、首を痛がる
- けいれんを起こした
- 高熱が3日以上続く
- 目の痛みが強い、まぶしがる、見えにくそうにしている
- 生後3か月未満の赤ちゃんの発熱
特に、ヘルパンギーナや手足口病では口の痛みで水分がとれず、脱水になることがあります。熱の高さだけでなく、水分がとれているか、尿が出ているか、普段と比べて元気があるかを確認しましょう。
自宅でできる夏風邪のケア
1. 水分補給を最優先にする
夏風邪では、食事が少しとれなくても、水分がとれていれば数日で回復することが多いです。無理に食べさせようとせず、まずは水分を優先しましょう。
おすすめは、麦茶、水、経口補水液、薄めたスープ、ゼリー飲料などです。一度にたくさん飲めない場合は、スプーン1杯ずつでもよいので、こまめに飲ませましょう。
2. 食事は「食べられるもの」で大丈夫
口の中やのどが痛いときは、普段の食事を嫌がることがあります。その場合は、栄養バランスよりも「痛くなく食べられるもの」を優先してかまいません。
- ゼリー
- プリン
- ヨーグルト
- 冷ましたおかゆ
- 冷ましたうどん
- アイス
- 豆腐
オレンジジュース、炭酸飲料、熱いスープ、濃い味付けのものは、口内炎やのどの痛みにしみることがあります。
3. 解熱薬は「つらそうなとき」に使う
発熱は体がウイルスと戦っている反応でもあります。熱があるから必ず解熱薬を使わなければならないわけではありません。
ただし、眠れない、水分がとれない、ぐったりしてつらそうな場合は、医師から処方された解熱鎮痛薬を使うことで楽になることがあります。子どもには使えない解熱薬もあるため、自己判断で大人用の薬を使わないようにしましょう。
4. 家族内感染を防ぐ
夏風邪のウイルスは、咳やくしゃみ、手指、便、目やになどを介して広がります。完全に防ぐことは難しいですが、次の対策で感染リスクを下げることができます。
- 石けんと流水で手洗いをする
- タオルを共有しない
- おむつ交換後は手洗いを徹底する
- 目やにを拭いたティッシュはすぐ捨てる
- よく触る場所をこまめに拭く
- 咳やくしゃみがあるときは咳エチケットを意識する
手足口病やヘルパンギーナでは、症状がよくなった後も便からウイルスが排出されることがあります。そのため、登園後もしばらくは手洗いとおむつ処理を続けることが大切です。
登園・登校の目安
登園・登校の判断は、病気の種類、症状の強さ、園や学校のルールによって異なります。迷う場合は、園・学校、または医療機関に確認しましょう。
ヘルパンギーナの登園目安
ヘルパンギーナは、一般的にはインフルエンザのように「何日間は必ず休む」と決まっている病気ではありません。
目安としては、熱が下がり、食事や水分がある程度とれて、普段に近い元気があれば登園を検討します。ただし、園によって登園許可証が必要な場合があります。
手足口病の登園目安
手足口病も、発疹が残っているだけで必ず休まなければならない病気ではありません。発疹があっても、本人が元気で、発熱がなく、食事や水分がとれていれば登園できることがあります。
ただし、口の痛みが強くて食べられない、よだれが多い、発熱している、ぐったりしている場合は、無理に登園せず自宅で休ませましょう。
咽頭結膜熱(プール熱)の登園・登校目安
咽頭結膜熱は、学校保健安全法で出席停止期間が定められている感染症です。
発熱、のどの痛み、目の充血などの主要症状がなくなった後、2日を経過するまで出席停止とされています。
そのため、咽頭結膜熱と診断された場合は、自己判断で登園・登校せず、医師や園・学校の指示に従いましょう。
夏風邪でよくある質問
Q. 夏風邪に抗菌薬は必要ですか?
多くの夏風邪はウイルスが原因です。抗菌薬は細菌に対する薬なので、ウイルス感染症には通常効果がありません。ただし、中耳炎や肺炎など細菌感染を合併している場合は抗菌薬が必要になることがあります。
Q. 何度も手足口病にかかることはありますか?
あります。手足口病の原因となるウイルスは複数あるため、一度かかっても別のウイルスで再び感染することがあります。
Q. 発疹が残っていると登園できませんか?
手足口病では、発疹が残っていても、発熱がなく、食事や水分がとれて、本人が元気であれば登園できることがあります。ただし、園の方針によって異なるため、園に確認しましょう。
Q. 口内炎が痛くて何も食べません。大丈夫ですか?
数日食事量が減ることはよくあります。大切なのは水分がとれているかどうかです。水分もとれない、尿が少ない、ぐったりしている場合は受診しましょう。
Q. 咽頭結膜熱はプールに入ったから感染するのですか?
咽頭結膜熱は「プール熱」と呼ばれることがありますが、現在はプールだけで感染する病気ではありません。咳やくしゃみ、手指、タオルの共有などでも感染します。予防には、手洗い、タオルを共有しないこと、体調が悪いときは無理にプールへ入らないことが大切です。
まとめ
夏風邪としてよくみられるヘルパンギーナ、手足口病、咽頭結膜熱(プール熱)は、子どもに多い感染症です。突然の発熱や発疹、目の充血があると驚きますが、多くは自然に回復します。
一方で、口やのどの痛みで水分がとれない場合や、ぐったりしている場合、けいれん、強い頭痛、繰り返す嘔吐、目の痛みや見えにくさがある場合は受診が必要です。
ご家庭では、無理に食べさせるよりも水分補給を優先し、手洗い、タオルの共有を避ける、おむつ交換後の手洗いなどを続けましょう。お子さんの様子を見ながら、心配なときは早めに医療機関へ相談してください。
