熱中症の症状と応急処置|危険なサイン・救急車を呼ぶ目安・予防法を医師が解説

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こどもの症状

毎年、気温と湿度が上がる時期になると注意が必要になるのが熱中症です。

熱中症というと、「炎天下で運動をしている人がなる病気」と思われがちですが、実際には自宅の室内や夜間、エアコンを使っていない部屋でも発症します。特に高齢者では、暑さやのどの渇きを感じにくいため、本人が気づかないうちに重症化することがあります。消防庁によると、2025年5月から9月に全国で熱中症により救急搬送された人は10万人を超え、調査開始以降で最多となりました。そのうち65歳以上が半数以上を占め、発生場所では住居が最も多くなっています。熱中症は、早い段階で気づいて適切に対処すれば回復が期待できる一方、意識障害や臓器障害を起こすと命にかかわります。大切なのは、「少し休めば治るだろう」と我慢せず、涼しい場所への移動、身体の冷却、水分・電解質の補給をすぐに始めることです。

この記事では、熱中症の初期症状、危険なサイン、重症度ごとの対応、正しい応急処置、救急車を呼ぶ目安、予防法、熱中症対策グッズについて、最新のガイドラインをもとにわかりやすく解説します。

この記事のポイント

  • 熱中症は屋外だけでなく、室内や夜間にも起こります。
  • めまい、立ちくらみ、筋肉のけいれん、大量の汗は初期症状です。
  • 頭痛、吐き気、強い倦怠感がある場合は、医療機関の受診を検討します。
  • 呼びかけへの反応がおかしい、自力で水が飲めない、けいれんがある場合は、すぐに119番通報してください。
  • 救急車を待つ間も、服を緩め、身体をぬらして風を当てるなど、できるだけ早く冷却を始めます。
  • 意識が悪い人や吐いている人に、無理に飲み物を飲ませてはいけません。

1.熱中症とは?

熱中症とは、高温・多湿な環境に身体が適応できなくなり、体内に熱がこもることで起こるさまざまな障害の総称です。人の身体は、暑くなると皮膚の血流を増やしたり、汗を蒸発させたりして熱を外へ逃がします。しかし、気温や湿度が高い環境、激しい運動、長時間の作業、脱水などが重なると、熱を逃がす仕組みが追いつかなくなります。その結果、次のような変化が起こります。

  • 発汗によって水分と電解質が失われる
  • 脱水によって全身の血流が低下する
  • 体温を十分に下げられなくなる
  • 脳、肝臓、腎臓、筋肉、血液凝固系などに障害が起こる

重症熱中症は、単なる「脱水」や「体温の上昇」ではありません。全身に炎症や凝固異常を起こし、多臓器不全につながる可能性がある救急疾患です。

2.熱中症が起こりやすい環境

熱中症の危険性は、気温だけでは決まりません。湿度、日差し、風の弱さ、服装、運動量、本人の体調などが影響します。

熱中症が起こりやすい場所

  • 炎天下の道路、運動場、グラウンド
  • 風通しの悪い体育館や倉庫
  • エアコンを使っていない室内
  • キッチン、浴室、脱衣所
  • 工事現場、工場、農作業の現場
  • 駐車中の自動車内
  • 夜間も室温が下がらない寝室

曇りの日や、それほど気温が高くない日でも、湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、熱中症が起こることがあります。

熱中症が増えやすい時期

  • 梅雨の晴れ間など、急に暑くなった日
  • 梅雨明け直後
  • 暑さに身体が慣れていない5~6月
  • 猛暑日や熱帯夜が続いた時期
  • 連休明けや、しばらく運動を休んだあとの再開時

身体が暑さに慣れることを「暑熱順化」と呼びます。暑熱順化には一定期間が必要なため、急に暑くなった日は特に注意が必要です。

3.熱中症の初期症状

熱中症は、早期に気づいて対応することが重要です。次のような症状が出たら、熱中症の初期症状を疑います。

  • めまい
  • 立ちくらみ
  • 一時的に目の前が暗くなる
  • 顔色が悪い
  • 大量の汗
  • 手足のしびれ
  • ふくらはぎなどの筋肉のけいれん、こむら返り
  • 筋肉痛
  • 生あくび
  • 気分が悪い

これらは比較的軽い段階でみられる症状ですが、放置すると頭痛、吐き気、意識障害などへ進行する可能性があります。

体温が高くなくても熱中症は否定できません

家庭で測る脇の体温は、身体の中心部の温度を正確に反映しない場合があります。体温の数字だけで判断せず、暑い環境にいたことや、めまい、吐き気、意識状態などを含めて判断してください。

4.熱中症が進行したときの症状

熱中症が進むと、脳や内臓への血流が低下し、次のような症状が現れます。

  • 頭痛
  • 吐き気、嘔吐
  • 強いだるさ、倦怠感
  • 身体に力が入らない
  • 歩くことが難しい
  • 集中力や判断力の低下
  • 普段と様子が違う
  • 呼びかけへの返事がおかしい
  • 日時や場所がわからない
  • けいれん
  • 意識を失う

重症になると、肝障害、腎障害、横紋筋融解症、血液凝固異常、脳障害などを起こし、集中治療が必要になることがあります。なお、重症熱中症でも汗をかいていることがあります。「汗が出ているから重症ではない」「汗が止まったら重症」という判断はできません。

5.救急車を呼ぶべき危険なサイン

次のいずれかがある場合は、重症熱中症の可能性があります。ためらわずに119番へ通報してください。

すぐに救急車を呼ぶ症状

  • 呼びかけへの反応がおかしい、返事ができない
  • 意識がもうろうとしている、意識を失った
  • 自力で水分を飲めない
  • 水分を飲んでもすぐに吐いてしまう
  • けいれんしている
  • 立てない、歩けないほどぐったりしている
  • 身体が非常に熱い
  • 冷却と水分補給をしても症状が改善しない
  • 胸痛、強い息苦しさなど、熱中症以外の重い病気も疑われる

特に重要なのは意識状態です。「名前は言えるか」「ここがどこかわかるか」「今日の日付や状況がわかるか」を確認し、普段と違う返答をする場合は救急要請を検討します。判断に迷うときは、地域の救急相談窓口や「#7119」を利用できる場合があります。ただし、明らかな意識障害やけいれんがある場合は、相談を挟まず直接119番へ通報してください。

6.熱中症の正しい応急処置

熱中症が疑われる人を見つけたら、次の順序で対応します。

① 涼しい場所へ移動する

まず、暑い環境から離します。

  • エアコンが効いた室内
  • 風通しのよい日陰
  • 冷房の効いた車内や店舗
  • 自治体が開設するクーリングシェルター

屋外で倒れている場合は、安全を確認したうえで日陰へ移動させます。

② 衣服を緩める

衣服のボタンやベルトを緩め、熱を逃がしやすくします。可能であれば、上着、靴、靴下、ヘルメット、防具などを外してください。プライバシーには配慮しつつ、身体の表面を広く冷やせる状態にします。

③ 身体をぬらし、風を当てて冷やす

皮膚に水をかけたり、ぬらしたタオルで身体を拭いたりしながら、扇風機、うちわ、携帯扇風機などで風を当てます。水分が蒸発するときに身体の熱が奪われるため、「身体をぬらす+風を当てる」方法は、広い範囲を冷却できる実用的な方法です。冷たすぎる水が用意できなくても、まずは水道水など、すぐに使える水で冷却を開始することが大切です。

④ 首・脇の下・足の付け根などを冷やす

保冷剤、氷嚢、冷たいペットボトルなどがあれば、タオルで包み、次の場所に当てます。

  • 首の周囲
  • 脇の下
  • 足の付け根

ただし、保冷剤を数か所に当てるだけでは、重症熱中症を十分な速さで冷却できないことがあります。保冷剤は補助的に使用し、可能であれば身体全体をぬらして風を当てる方法を併用します。氷や保冷剤を直接皮膚へ長時間当てると、凍傷や皮膚障害を起こす可能性があるため、必ず布やタオルを挟んでください。

⑤ 意識がはっきりしていれば水分を補給する

受け答えが正常で、吐き気が強くなく、自分で安全に飲み込める場合は、少量ずつ水分を補給します。大量に汗をかいている場合や、脱水症状がある場合は、水分と電解質を含む経口補水液が選択肢になります。スポーツドリンクも利用できますが、商品によっては糖分が多いため、日常的な大量摂取には注意が必要です。

意識が悪い人には飲ませないでください

意識がもうろうとしている人、呼びかけへの反応がおかしい人、何度も吐いている人に無理に飲ませると、飲み物が気管に入り窒息や誤嚥を起こす危険があります。119番へ通報し、冷却を続けてください。

⑥ 一人にせず、症状を繰り返し確認する

最初は会話ができていても、短時間で意識状態が悪化することがあります。回復したように見えても一人にせず、次の点を確認します。

  • 会話が正常にできるか
  • 自力で水分を飲めるか
  • 頭痛や吐き気が悪化していないか
  • 立ったり歩いたりできるか
  • 尿が出ているか

意識がなく、普段どおりの呼吸がない場合は、119番通報とAEDの手配を行い、胸骨圧迫を開始します。

7.重症度ごとの症状と対応

日本救急医学会の「熱中症診療ガイドライン2024」では、従来のⅠ~Ⅲ度に加えて、最重症にあたるⅣ度が示されています。

重症度 主な症状・状態 必要な対応
Ⅰ度
軽症
めまい、立ちくらみ、大量の発汗、生あくび、筋肉痛、こむら返り、手足のしびれなど。意識障害はない。 涼しい場所で休ませ、衣服を緩めて冷却する。意識が正常であれば水分・電解質を補給する。改善しなければ受診する。
Ⅱ度
中等症
頭痛、吐き気、嘔吐、強い倦怠感、虚脱感、集中力や判断力の低下など。 医療機関への受診を検討する。自力で飲めない、吐いてしまう、症状が強い場合は救急要請する。
Ⅲ度
重症
意識障害、けいれん、肝障害、腎障害、血液凝固異常など。入院治療が必要となる状態。 直ちに119番へ通報する。救急車を待つ間も全身の冷却を続ける。口から水分を与えない。
Ⅳ度
最重症
医学的には、深部体温40.0℃以上かつ高度の意識障害がある状態。命にかかわる重症熱中症。 一刻も早い救急搬送と、迅速なActive Coolingを含む集中治療が必要。

一般の方がⅢ度とⅣ度を正確に区別する必要はありません。意識がおかしい、自力で飲めない、けいれんがある、身体が非常に熱い場合は、重症と考えて救急要請することが大切です。

8.最新の熱中症治療で重視される「Active Cooling」

日本救急医学会の最新ガイドラインでは、何らかの方法で患者の身体を積極的に冷却することを「Active Cooling」と呼び、重症熱中症では早期に開始することが重要とされています。医療現場で行われる冷却法には、次のような方法があります。

  • 身体をぬらして風を当てる蒸散冷却
  • 冷水へ身体を浸す冷水浸水法
  • 氷嚢や保冷剤による局所冷却
  • 冷却用ブランケットや体温管理装置
  • 重症例に対する血管内体温管理など

2026年に日本救急医学会が公表した「Active Cooling 実践的手引き」でも、重症例では転院先や救急車を待ってから冷やすのではなく、熱中症を疑った時点から、実施可能な冷却をすぐに始めることが強調されています。一方、首や脇の下だけを保冷剤で冷やす局所冷却は、開始しやすい反面、単独では冷却効果が限られます。重症が疑われる場合は、全身をぬらして風を当てるなどの方法を組み合わせます。

スポーツ現場での冷水浸水について

運動中に発症した重症熱中症では、冷水へ身体を浸す方法が短時間で体温を下げられることがあります。ただし、意識障害のある人を浴槽や水槽へ入れると溺水の危険があるため、適切な設備と複数の訓練されたスタッフがいるスポーツ現場などに限られます。家庭で意識の悪い人を一人で浴槽に入れることは避け、119番へ通報し、身体をぬらして風を当てる方法を優先してください。

9.熱中症に解熱剤を使ってもよい?

熱中症による体温上昇に、アセトアミノフェンやNSAIDsなどの解熱剤を使用することは、基本的に勧められません。

感染症による発熱は、脳の体温設定が高くなることで起こります。一方、熱中症は、身体に入った熱や身体が作った熱を外へ逃がせなくなることで起こります。仕組みが異なるため、通常の解熱剤では十分な効果が期待できません。また、重症熱中症では肝臓や腎臓、血液凝固系が障害されることがあり、薬によって臓器障害を悪化させる可能性もあります。感染症による発熱との区別が難しい場合もあるため、自己判断で解熱剤を追加するのではなく、まずは涼しい場所への移動、身体の冷却、適切な水分補給を行い、症状に応じて医療機関を受診してください。

高体温と発熱の違いとは?熱中症・感染症との見分け方を医師がわかりやすく解説
高体温と発熱はどちらも体温が上がる状態ですが、原因や対処法は異なります。熱中症による高体温、感染症などによる発熱の違い、受診の目安、家庭でできる予防法を医師がわかりやすく解説します。

10.熱中症の水分・塩分補給

普段の予防では、のどが渇く前に飲む

高齢者や子どもでは、のどの渇きを感じた時点ですでに脱水が進んでいることがあります。起床時、食事時、外出前、入浴前後、就寝前など、時間を決めて水分を取る方法も有効です。

汗が少ない日常生活では水やお茶でもよい

通常の食事が取れており、大量に汗をかいていない日常生活では、水やカフェインの少ないお茶などで水分補給ができます。高血圧予防などの観点からも、汗をほとんどかいていないのに塩分を過剰摂取する必要はありません。

大量に汗をかいたときは電解質も補う

長時間のスポーツ、屋外作業、農作業などで大量に汗をかいた場合は、水分だけでなくナトリウムなどの電解質も失われます。スポーツドリンクや電解質を含む飲料を利用し、休憩とあわせて補給します。

経口補水液は脱水時のための飲料

経口補水液は、水分と電解質を効率よく吸収できるように調整された飲料です。熱中症による脱水が疑われ、意識が正常で自力で飲める場合に役立ちます。ただし、経口補水液は一般的な清涼飲料水ではなく、日常的に大量に飲み続けるための飲み物ではありません。腎臓病、心不全、高血圧などで水分や塩分の制限を受けている方は、主治医の指示に従ってください。

アルコールは水分補給にならない

ビールなどのアルコール飲料は、熱中症予防の水分補給にはなりません。判断力の低下や脱水を招く可能性があるため、飲酒後の入浴、運動、炎天下での活動にも注意してください。

11.熱中症の予防法

① 暑さ指数(WBGT)を確認する

熱中症の危険性を判断するときは、最高気温だけでなく暑さ指数(WBGT)を確認しましょう。WBGTは、気温、湿度、日射や輻射熱などを組み合わせた指標です。環境省の熱中症予防情報サイトや天気予報アプリなどで確認できます。

WBGT 危険度 日常生活での目安
31以上 危険 外出をなるべく避け、涼しい室内へ移動する。高齢者では安静にしていても危険がある。
28以上31未満 厳重警戒 炎天下を避け、室内の温度上昇にも注意する。激しい運動や長時間の作業を避ける。
25以上28未満 警戒 運動や作業では、十分な休憩と水分補給を取り入れる。
25未満 注意 激しい運動や重労働では熱中症が起こる可能性がある。

② 熱中症警戒アラートを確認する

熱中症警戒アラートは、予測される日最高WBGTが33以上となる地点がある場合に発表されます。さらに、都道府県内のすべての対象地点で翌日の日最高WBGTが35に達すると予測される場合などには、熱中症特別警戒アラートが発表されます。特別警戒アラートが発表された場合は、通常の熱中症対策だけでは不十分となる可能性があります。不要不急の外出、運動、屋外イベント、作業などの中止や延期を検討してください。

③ エアコンを我慢しない

室内では温度計や湿度計を使用し、暑いと感じる前からエアコンを使用します。特に高齢者は暑さを感じにくいため、本人の感覚だけに頼らず、家族や周囲の人が確認することが大切です。夜間も室温が高い場合は、就寝中も適切に冷房を使用してください。扇風機やサーキュレーターを併用すると、室内の空気を循環させやすくなります。

④ 暑い時間帯を避ける

外出、買い物、散歩、運動、庭仕事、農作業などは、日中の暑い時間帯を避け、比較的涼しい早朝や夕方に行います。ただし、夕方や夜間でも気温と湿度が高い日はあるため、WBGTや実際の室温を確認してください。

⑤ 休憩を予定に組み込む

「疲れたら休む」のではなく、疲れる前に定期的な休憩を取ります。スポーツや作業では、本人任せにせず、指導者や責任者が休憩時間を決めておくことが重要です。

⑥ 涼しい服装を選ぶ

  • 通気性や吸湿性のよい衣服
  • 身体を締めつけすぎない服装
  • 熱を吸収しにくい明るい色の衣服
  • つばの広い帽子
  • 日傘

ヘルメット、防護服、マスクなどを着用する仕事では、体内に熱がこもりやすいため、より短い間隔で休憩を取る必要があります。

⑦ 睡眠と食事を整える

睡眠不足、二日酔い、発熱、下痢、食欲不振などがある日は、熱中症の危険性が高まります。体調が悪い日は、運動や屋外作業を中止または軽減してください。朝食を抜くと、水分や塩分を摂取する機会も減ります。暑い時期ほど、食事を欠かさないことが大切です。

12.特に熱中症へ注意が必要な人

高齢者

高齢者は、暑さやのどの渇きを感じにくく、汗をかく能力や体温調節機能も低下します。自宅で静かに過ごしているだけでも熱中症を発症することがあります。

  • エアコンを使用しているか確認する
  • 定期的に電話や訪問で声をかける
  • 飲水量だけでなく食事量や尿量も確認する
  • 夜間の室温にも注意する

乳幼児・子ども

子どもは体温調節機能が十分に発達しておらず、身長が低いため、地面からの照り返しの影響も受けやすくなります。遊びに夢中になり、自分から休憩や水分補給を申し出ないこともあります。短時間であっても、子どもを車内に残してはいけません。窓を少し開けていても、車内温度は急激に上昇します。

持病や服薬がある人

心臓病、腎臓病、糖尿病、認知症、精神疾患などがある方は、熱中症や脱水の影響を受けやすい場合があります。また、利尿薬、降圧薬、抗精神病薬、抗うつ薬、抗コリン作用のある薬などは、脱水や体温調節に影響する可能性があります。ただし、自己判断で薬を中止してはいけません。暑い時期の水分量や薬の調整については、主治医へ相談してください。

スポーツをする人・屋外で働く人

部活動、ランニング、工事、農作業、配送、警備などでは、身体が作る熱と環境から受ける熱が重なります。責任者はWBGTを測定し、休憩場所、飲料、冷却用品、緊急連絡体制を事前に準備する必要があります。体調不良を申し出やすい雰囲気を作り、「根性で続ける」ことを求めないことも重要な熱中症対策です。

13.おすすめの熱中症対策グッズ

熱中症対策グッズは便利ですが、エアコン、休憩、水分補給、活動時間の変更に代わるものではありません。補助的に使用しましょう。

対策グッズ 使い方・選び方 注意点
WBGT計 屋外、スポーツ、作業現場では、日射や輻射熱を反映できる黒球付きの機器が便利です。 一般的な室温計とは数値の意味が異なります。測定場所にも注意します。
保冷できる水筒 外出時にすぐ水分補給できるよう、常に携帯します。 飲料を持っているだけで安心せず、定期的に飲みます。
経口補水液 脱水症状があり、意識が正常で自力摂取できる場合に利用します。 日常の水代わりに大量摂取しません。心臓病・腎臓病などがある方は医師へ相談します。
保冷剤・氷嚢 首、脇の下、足の付け根などの冷却に使用します。 直接皮膚へ長時間当てず、全身冷却の補助として使います。
冷却タオル 水でぬらし、首や身体を冷やします。風を当てると蒸発による冷却が期待できます。 ぬるくなったら再び水でぬらします。
携帯扇風機・うちわ 皮膚をぬらした状態で風を当てる応急処置にも利用できます。 非常に暑い環境では、風だけに頼らず冷房の効いた場所へ移動します。
冷却ベスト 屋外作業やスポーツ時に身体へ蓄積する熱を減らす補助になります。 冷却効果が切れる前に交換し、休憩を省略しないようにします。
帽子・日傘 直射日光や輻射熱を避けます。つばが広く通気性のあるものが便利です。 帽子の中に熱がこもることがあるため、日陰で外して休憩します。
遮光カーテン・すだれ 窓から入る日射を減らし、室温の上昇を抑える補助になります。 室温が高い場合は、遮光だけでなくエアコンを使用します。

首に装着する冷却リングだけで予防できる?

首を冷やすグッズは、暑さを和らげる補助として利用できますが、熱中症を確実に防ぐものではありません。冷却リングを着けているからといって、炎天下での活動を続けたり、水分補給や休憩を省いたりしないでください。

塩飴だけで予防できる?

塩飴は塩分の補給にはなりますが、水分はほとんど補給できません。必ず飲み物と組み合わせてください。また、通常の食事を取れていて汗をあまりかいていない人が、大量の塩飴や塩分を摂取する必要はありません。

14.病院を受診したほうがよい目安

救急車を呼ぶほどではなくても、次の場合は医療機関を受診してください。

  • 頭痛や吐き気が続いている
  • 水分を取ると吐いてしまう
  • 強い倦怠感が残っている
  • 休憩と冷却をしても改善しない
  • 尿が極端に少ない、色が非常に濃い
  • 筋肉痛が強い、尿が赤褐色になった
  • 高齢者、乳幼児、妊娠中、基礎疾患がある
  • 一度意識が遠のいた、転倒した

熱中症と思っていても、脳卒中、心筋梗塞、不整脈、低血糖、感染症など、別の病気が隠れている場合があります。片側の手足が動かしにくい、ろれつが回らない、胸が痛い、強い息苦しさがある場合は、熱中症と決めつけず救急要請してください。

15.熱中症に関するよくある質問

Q.室内にいれば熱中症にはなりませんか?

室内でも熱中症になります。特にエアコンを使っていない部屋、風通しの悪い部屋、キッチン、浴室、夜間の寝室では注意が必要です。

Q.汗をかいていれば重症ではありませんか?

汗をかいている重症熱中症もあります。汗の有無だけでは重症度を判断できません。意識状態、自力で飲めるか、歩けるかなどを確認してください。

Q.水を一気にたくさん飲ませたほうがよいですか?

意識が正常であれば、むせないよう少量ずつ飲ませます。一気に大量に飲むと、吐き気や嘔吐につながることがあります。

Q.経口補水液とスポーツドリンクは同じですか?

同じではありません。一般に経口補水液は脱水時の水分・電解質補給を目的としており、スポーツドリンクとは電解質や糖分の濃度が異なります。日常の水分補給と、脱水時の補給を使い分けます。

Q.熱中症になった翌日から運動してもよいですか?

症状が完全に改善していない段階で運動を再開すると、再び悪化する可能性があります。頭痛、だるさ、食欲低下などが残っている場合は休み、症状が強かった場合や意識障害があった場合は、医師の判断を受けてから運動を再開してください。

16.まとめ|熱中症は「早く気づき、早く冷やす」ことが大切

熱中症は予防できる病気ですが、対応が遅れると命にかかわります。めまい、立ちくらみ、こむら返り、大量の汗などが現れたら、すぐに活動を中止し、涼しい場所へ移動してください。衣服を緩め、身体をぬらして風を当て、意識が正常であれば水分と電解質を補給します。

呼びかけへの反応がおかしい、自力で水が飲めない、けいれんしている、立てないほどぐったりしている場合は、迷わず119番へ通報してください。

救急車を待っている間も冷却を続けることが、命や後遺症を左右する可能性があります。毎日の気温だけでなく暑さ指数(WBGT)を確認し、エアコン、休憩、水分補給、活動時間の変更を組み合わせて、自分と周囲の人を熱中症から守りましょう。

医療機関を受診される方へ

この記事は一般的な医学情報を提供するものであり、個別の診断や治療に代わるものではありません。意識障害、けいれん、自力で水分が取れない状態などがある場合は、記事を読み進めるより先に119番へ通報してください。

参考文献・関連情報

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