睡眠時無呼吸症候群とは?いびき・眠気の症状と検査・治療法を医師が解説

症状・病気から探す

「家族にいびきがうるさいと言われる」
「寝ている間に呼吸が止まっていると言われた」
「しっかり寝たはずなのに、日中に眠い」

このような症状がある場合、睡眠時無呼吸症候群が隠れているかもしれません。

睡眠時無呼吸症候群は、単なる「いびきの問題」ではありません。睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりすることで、体が低酸素状態になり、睡眠の質が低下します。その結果、日中の眠気や集中力低下だけでなく、高血圧、心筋梗塞、脳卒中、不整脈、糖尿病などのリスクにも関わることがあります。一方で、睡眠時無呼吸症候群は検査で見つけることができ、治療によって改善が期待できる病気です。最近では、自宅でできる簡易検査もあり、検査のハードルは以前より低くなっています。

この記事では、睡眠時無呼吸症候群の症状、原因、検査方法、治療法、受診の目安について、医師がわかりやすく解説します。

この記事でわかること

  • 睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気か
  • いびき・無呼吸・日中の眠気などの主な症状
  • 放置すると高血圧・心筋梗塞・脳卒中などにつながる理由
  • 睡眠時無呼吸症候群になりやすい人の特徴
  • 自宅でできる簡易検査と精密検査の違い
  • AHIによる重症度の見方
  • CPAP、マウスピース、生活習慣改善などの治療法
  • 検査を受けた方がよい受診の目安

1. 睡眠時無呼吸症候群とは?

睡眠時無呼吸症候群とは、眠っている間に呼吸が何度も止まったり、呼吸が浅くなったりする病気です。英語ではSleep Apnea Syndromeといい、略してSASと呼ばれます。医学的には、睡眠中に10秒以上の無呼吸や低呼吸が繰り返される状態を評価します。特に多いのは、のどの空気の通り道が狭くなって起こる閉塞性睡眠時無呼吸症候群です。眠っている間の出来事なので、本人は気づいていないことが少なくありません。実際には、家族から「いびきがひどい」「寝ている時に息が止まっている」と指摘されて初めて気づく方も多くいます。睡眠中に呼吸が止まると、血液中の酸素が低下します。すると脳や体は危険を感じて、無意識のうちに眠りを浅くして呼吸を再開させます。この状態が一晩に何度も起こるため、睡眠時間は足りているように見えても、実際には深く眠れていない状態になります。

2. 睡眠時無呼吸症候群の主な症状

睡眠時無呼吸症候群の症状は、夜間の症状と日中の症状に分けて考えるとわかりやすいです。

夜間の症状

  • 大きないびきをかく
  • いびきが途中で止まり、その後に大きな呼吸で再開する
  • 家族から「寝ている間に呼吸が止まっている」と言われる
  • 夜中に何度も目が覚める
  • 息苦しくて目が覚める
  • 夜間のトイレが多い
  • 寝汗をかく
  • 朝起きた時に口が渇いている

日中の症状

  • 日中に強い眠気がある
  • 会議中、運転中、テレビを見ている時に眠くなる
  • 朝起きても疲れが取れない
  • 朝の頭痛がある
  • 集中力や記憶力が落ちた
  • 仕事や家事の効率が下がった
  • イライラしやすい
  • 気分が落ち込みやすい

こんな症状があれば検査をおすすめします

  • 家族から「呼吸が止まっている」と言われた
  • いびきが大きい、またはいびきが急にひどくなった
  • 日中の眠気で仕事や運転に支障がある
  • 高血圧の治療をしているが、なかなか下がらない
  • 朝起きても疲れが取れない
  • 夜間頻尿がある
  • 肥満、首まわりが太い、顎が小さいと言われたことがある

3. 「ただのいびき」と放置してはいけない理由

睡眠時無呼吸症候群が怖いのは、眠気やいびきだけの問題ではないことです。睡眠中に低酸素状態が繰り返されると、体は強いストレスを受けます。その結果、交感神経が活発になり、血圧が上がりやすくなります。また、血管や心臓にも負担がかかり、長期的には生活習慣病や心血管疾患との関連が問題になります。

高血圧との関係

睡眠時無呼吸症候群では、夜間に血圧が下がりにくくなったり、早朝の血圧が高くなったりすることがあります。特に、薬を飲んでいるのに血圧が下がりにくい方では、背景に睡眠時無呼吸症候群が隠れていることがあります。

心筋梗塞・脳卒中・不整脈との関係

無呼吸による低酸素、血圧変動、交感神経の亢進は、心臓や血管に負担をかけます。そのため、睡眠時無呼吸症候群は、心筋梗塞、脳卒中、心房細動などのリスクと関連します。

糖尿病・脂質異常症との関係

睡眠の質が悪くなると、ホルモンバランスや自律神経にも影響します。睡眠時無呼吸症候群では、インスリン抵抗性が悪化し、血糖コントロールに影響することがあります。

交通事故・仕事中の事故との関係

日中の強い眠気は、運転中の居眠りや仕事中のミスにつながることがあります。特に車の運転をする方、機械作業をする方、集中力を必要とする仕事の方は、早めの検査が大切です。

つまり、睡眠時無呼吸症候群は「いびきがうるさい病気」ではなく、将来の健康と安全に関わる病気です。

4. 睡眠時無呼吸症候群の原因

睡眠時無呼吸症候群にはいくつかのタイプがありますが、最も多いのは閉塞性睡眠時無呼吸症候群です。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群

閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、眠っている間にのどの空気の通り道が狭くなり、呼吸が止まったり浅くなったりするタイプです。原因としては、以下のようなものがあります。

  • 肥満により、のど周囲に脂肪がつく
  • 首まわりが太い
  • 顎が小さい、または下顎が後ろに下がっている
  • 扁桃やアデノイドが大きい
  • 鼻づまりがある
  • 飲酒により、のどの筋肉がゆるむ
  • 睡眠薬や一部の薬剤の影響
  • 加齢により、のどの筋肉がゆるみやすくなる

「睡眠時無呼吸症候群=太っている人の病気」と思われがちですが、必ずしもそうではありません。日本人では、顎が小さい、顔やのどの骨格の影響で、肥満が強くなくても睡眠時無呼吸症候群になることがあります。

中枢性睡眠時無呼吸症候群

中枢性睡眠時無呼吸症候群は、脳から呼吸をする指令がうまく出なくなることで起こるタイプです。心不全、脳卒中、薬剤などが関係することがあります。一般的ないびきや無呼吸の多くは閉塞性ですが、背景に心臓や脳の病気が関わることもあるため、症状がある場合は自己判断せず医療機関で相談することが大切です。

5. 睡眠時無呼吸症候群になりやすい人

特徴 理由
肥満がある のど周囲に脂肪がつき、空気の通り道が狭くなりやすくなります。
首まわりが太い 首の周囲の脂肪や構造により、気道が圧迫されやすくなります。
顎が小さい・後退している 舌が後ろに落ち込みやすく、気道が狭くなりやすくなります。
中年以降の男性 筋肉の緩みや体格の影響でリスクが上がります。
閉経後の女性 ホルモンバランスの変化により、睡眠時無呼吸が増えることがあります。
飲酒習慣がある アルコールでのどの筋肉がゆるみ、無呼吸が悪化しやすくなります。
鼻づまりがある 鼻呼吸がしにくくなり、睡眠中の呼吸が乱れやすくなります。
高血圧・糖尿病・心疾患がある 睡眠時無呼吸症候群を合併していることがあります。

6. 睡眠時無呼吸症候群の検査

睡眠時無呼吸症候群は、症状だけで確定診断することはできません。診断には、睡眠中の呼吸状態や酸素の低下を調べる検査が必要です。ただし、検査といっても、いきなり大がかりな検査をするとは限りません。まずは自宅でできる簡易検査から行うことが多く、普段の睡眠に近い状態で調べることができます。

自宅でできる簡易検査

簡易検査では、自宅で小型の機械を装着して眠ります。主に、以下のような項目を確認します。

  • 睡眠中の呼吸の状態
  • 鼻や口の空気の流れ
  • 血液中の酸素飽和度
  • 脈拍
  • いびきや体位

検査は、機械を装着して普段通り眠るだけです。注射や痛みを伴う検査ではありません。入院が必要ないため、仕事や家庭の都合がある方でも受けやすい検査です。

簡易検査のポイント

  • 自宅で検査できる
  • 痛みはない
  • 普段の睡眠に近い状態で調べられる
  • いびきや無呼吸、酸素低下の有無がわかる
  • 検査結果によって、治療や精密検査が必要か判断できる

精密検査:終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)

簡易検査で睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合や、より詳しい評価が必要な場合には、終夜睡眠ポリグラフ検査を行います。PSG検査とも呼ばれます。PSG検査では、呼吸だけでなく、脳波、眼球運動、筋電図、心電図、酸素飽和度などを詳しく測定します。睡眠の深さや、無呼吸がどの睡眠段階で起こっているかも確認できます。

AHIで重症度を判断します

睡眠時無呼吸症候群の重症度は、AHIという指標で評価します。AHIとは、1時間あたりに無呼吸や低呼吸が何回起こるかを示す数値です。

AHI 重症度 目安
5以上〜15未満 軽症 症状や合併症に応じて治療を検討します。
15以上〜30未満 中等症 眠気や生活習慣病がある場合は積極的な治療対象になります。
30以上 重症 CPAPなどの治療を検討することが多い状態です。

大切なのは、数値だけでなく、眠気の程度、高血圧や心臓病の有無、仕事や運転への影響などを含めて総合的に判断することです。

7. 睡眠時無呼吸症候群の治療法

睡眠時無呼吸症候群は、原因や重症度に応じて治療法を選びます。治療によって、いびきや眠気の改善だけでなく、血圧や生活の質の改善が期待できます。

CPAP療法

CPAP療法は、睡眠時無呼吸症候群の代表的な治療です。鼻や口にマスクを装着し、空気を送り込むことで、睡眠中にのどがふさがるのを防ぎます。CPAPは、特に中等症から重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群でよく使われます。適切に使用できると、無呼吸やいびきが減り、日中の眠気や熟眠感の改善が期待できます。CPAP治療は、始めて終わりではありません。再診では、使用時間、マスクのフィット感、空気漏れ、眠気の改善、鼻づまり、皮膚トラブルなどを確認します。必要に応じて圧の調整やマスクの変更を行うことで、より続けやすい治療になります。

CPAP治療で期待できること

  • 無呼吸や低呼吸の改善
  • いびきの軽減
  • 日中の眠気の改善
  • 朝の頭痛や熟眠感の改善
  • 血圧への良い影響
  • 仕事や運転時の集中力改善

マウスピース治療

軽症から中等症の方では、マウスピース治療が選択肢になることがあります。正式には口腔内装置と呼ばれ、下顎を少し前に出すことで、のどの空気の通り道を広げる治療です。マウスピースは、歯科で作成する専用の装置です。すべての方に合うわけではないため、重症度や歯の状態を含めて判断します。

生活習慣の改善

生活習慣の見直しも大切です。特に肥満がある方では、減量によって睡眠時無呼吸が改善することがあります。

  • 体重を減らす
  • 寝る前の飲酒を控える
  • 禁煙する
  • 睡眠薬や安定剤について医師に相談する
  • 横向きで寝る工夫をする
  • 鼻づまりを治療する

ただし、生活習慣の改善だけで十分とは限りません。無呼吸が強い場合は、CPAPなどの治療を並行して行うことが重要です。

耳鼻科的治療・手術

扁桃肥大、アデノイド肥大、鼻づまり、鼻中隔弯曲などが関係している場合は、耳鼻科的治療が有効なことがあります。小児では、扁桃やアデノイドが原因で睡眠時無呼吸が起こることもあります。手術が必要かどうかは、原因、年齢、重症度、全身状態をふまえて慎重に判断します。

8. 検査を受けるメリット

睡眠時無呼吸症候群は、本人が気づきにくい病気です。しかし、検査を受けることで、今の眠気や疲れが「年齢のせい」「忙しさのせい」なのか、それとも睡眠中の無呼吸が関係しているのかを確認できます。検査を受けるメリットは、次の通りです。

  • いびきや無呼吸の原因がわかる
  • 日中の眠気や疲労感の原因を調べられる
  • 高血圧や心血管リスクへの対策につながる
  • 運転中や仕事中の眠気による事故予防につながる
  • 治療が必要かどうかを客観的に判断できる
  • CPAPやマウスピースなど、自分に合った治療を選べる

特に、家族から無呼吸を指摘された方、日中の眠気が強い方、高血圧や心臓病がある方は、早めに検査を受けることをおすすめします。

9. よくある質問

Q. いびきがあるだけでも検査した方がよいですか?

大きないびき、途中で止まるいびき、呼吸が止まっていると言われる場合は、検査をおすすめします。単なるいびきに見えても、睡眠時無呼吸症候群が隠れていることがあります。

Q. 自分では眠気を感じません。それでも検査は必要ですか?

眠気を自覚しない方でも、家族から無呼吸を指摘される場合や、高血圧、心疾患、脳卒中の既往がある場合は注意が必要です。症状の自覚が少なくても、睡眠中に低酸素が起こっていることがあります。

Q. 検査は痛いですか?

自宅で行う簡易検査は、センサーを装着して眠る検査です。注射や痛みを伴う検査ではありません。普段の睡眠に近い状態で調べることができます。

Q. CPAPは一生続ける必要がありますか?

体重減少、生活習慣の改善、鼻づまりの治療、手術などにより、状態が改善することもあります。ただし、自己判断で中止すると無呼吸が再び悪化することがあるため、治療の継続や中止は医師と相談して決めることが大切です。

Q. 肥満ではありませんが、睡眠時無呼吸症候群になりますか?

なります。日本人では、顎が小さい、下顎が後ろに下がっている、のどが狭いなど、体格以外の要因で睡眠時無呼吸症候群になることがあります。

10. まとめ

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする病気です。いびきや日中の眠気だけでなく、高血圧、心筋梗塞、脳卒中、不整脈、糖尿病、交通事故などにも関わる可能性があります。しかし、睡眠時無呼吸症候群は、検査で見つけることができ、治療によって改善が期待できる病気です。自宅でできる簡易検査もあり、検査のハードルは高くありません。

「いびきがひどい」
「寝ている間に呼吸が止まっていると言われた」
「日中の眠気がつらい」
「高血圧がなかなか改善しない」

このような方は、早めに医療機関で相談してみてください。睡眠の質を整えることは、毎日の元気だけでなく、将来の健康を守ることにもつながります。

受診をおすすめする方

  • 家族からいびきや無呼吸を指摘された方
  • 日中の眠気や集中力低下がある方
  • 朝起きても疲れが取れない方
  • 高血圧、糖尿病、心疾患がある方
  • 運転中に眠気を感じる方
  • 自宅でできる睡眠時無呼吸の検査を希望される方

参考文献

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