電子タバコ・VAPE関連肺障害「EVALI」とは?症状・原因・治療を解説

症状・病気から探す

「電子タバコやVAPEは、紙巻きタバコより安全なのでは?」と思っている方も多いかもしれません。しかし近年、電子タバコやVAPEの使用後に咳、息切れ、胸痛、発熱、急性呼吸不全などを起こすEVALI(イーバリ/電子タバコ・VAPE関連肺障害)が報告されています。

EVALIは、英語のE-cigarette or Vaping product use-Associated Lung Injuryの略で、電子タバコやVAPE製品の使用に関連して起こる肺障害を指します。特に2019年に米国で大規模なアウトブレイクが起こり、入院や死亡例も報告されました。日本では米国ほど多くはありませんが、電子タバコや加熱式タバコに関連した急性肺障害の報告があり、注意が必要です。

この記事でわかること

  • EVALI(電子タバコ・VAPE関連肺障害)とは何か
  • 電子タバコ・VAPE・加熱式タバコ・紙巻きタバコの違い
  • EVALIで起こる症状:咳、息切れ、胸痛、発熱、吐き気など
  • EVALIの原因として注目されているビタミンEアセテートやTHCとの関連
  • 日本国内で報告された重症EVALI症例
  • 検査・診断・治療の流れ
  • 電子タバコやVAPE使用後に受診した方がよい症状

1.EVALIとは?電子タバコ・VAPEで起こる急性肺障害

EVALIとは、電子タバコやVAPE製品の使用後に起こる肺障害の総称です。典型的には、電子タバコやVAPEを使用してから数日〜数週間のうちに、咳や息切れ、胸痛、発熱、倦怠感、吐き気、下痢などが出現します。

特徴的なのは、単なる「咳」や「風邪」のように見えても、短期間で酸素が足りない状態(低酸素血症)急性呼吸不全に進行することがある点です。実際に、米国では2019年にEVALIの大規模な集団発生が起こり、2020年2月時点で2,807例の入院または死亡例、68例の死亡がCDCに報告されています。

一方で、EVALIは「肺炎」や「インフルエンザ」「COVID-19」「マイコプラズマ肺炎」などと症状が似ているため、診断が難しい病気でもあります。電子タバコやVAPEを使っていることを医師に伝えることが、診断の大きな手がかりになります。

2.電子タバコ・VAPE・加熱式タバコ・紙巻きタバコの違い

まず、言葉の整理をしておきましょう。一般の方が混同しやすいのが、電子タバコVAPE加熱式タバコ紙巻きタバコの違いです。

種類 仕組み 特徴 注意点
電子タバコ・VAPE リキッドを加熱してエアロゾルを吸入する 香料、プロピレングリコール、グリセリンなどを含むことがある 海外ではニコチンやTHCを含む製品もあり、EVALIとの関連が問題になった
加熱式タバコ タバコ葉を燃やさずに加熱して吸入する ニコチンを含むタバコ製品 紙巻きタバコより有害物質が少ないとされる一方、健康影響がないわけではない
紙巻きタバコ タバコ葉を燃焼させて煙を吸入する ニコチン、タール、一酸化炭素などを含む 肺がん、COPD、心筋梗塞、脳卒中など多くの病気のリスクになる

「煙が出ない」「タールが少ない」「においが少ない」という理由で、電子タバコや加熱式タバコを安全だと感じる方もいます。しかし、吸い込むエアロゾルの中には、肺に刺激を与える物質や健康影響が十分にわかっていない成分が含まれる可能性があります。

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3.EVALIの主な症状|咳・息切れ・胸痛だけでなく、吐き気や下痢も

EVALIの症状は、呼吸器症状だけとは限りません。胃腸炎やインフルエンザのように見えることもあります。

分類 症状
呼吸器症状 咳、息切れ、呼吸困難、胸痛、喘鳴、息苦しさ
全身症状 発熱、寒気、倦怠感、体重減少、筋肉痛、頭痛
消化器症状 吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、食欲低下

CDCの報告では、EVALIでは呼吸器症状に加えて、発熱・悪寒・体重減少などの全身症状、吐き気・嘔吐・下痢などの消化器症状を伴うことが多いとされています。つまり、「電子タバコを吸ってから、風邪のような症状と息苦しさが出てきた」という場合には注意が必要です。

4.すぐ受診した方がよい症状

電子タバコやVAPE、加熱式タバコを使用している方で、次のような症状がある場合は、早めに医療機関へ相談してください。

早めの受診が必要な症状

  • 息苦しい、呼吸が浅い
  • 少し歩いただけで息切れする
  • 胸の痛みがある
  • 咳が続く、悪化している
  • 発熱があり、肺炎のような症状がある
  • 吐き気、嘔吐、下痢に加えて息苦しさがある
  • 唇や顔色が悪い
  • SpO2が95%未満、または普段より低い

特に、息苦しさ、胸痛、SpO2低下、呼吸困難がある場合は、軽い症状と自己判断せず、救急受診も検討してください。EVALIでは、初期症状が軽くても48時間以内に急激に悪化した例が報告されています。

5.EVALIの原因|ビタミンEアセテート、THC、添加物が注目されている

EVALIの原因は完全には解明されていませんが、米国のアウトブレイクでは、特にTHC含有VAPE製品ビタミンEアセテートとの関連が強く示されました。

ビタミンEアセテートとは?

ビタミンEアセテートは、食品やサプリメント、化粧品などに使われることがある成分です。食べたり皮膚に塗ったりする場合と、肺に吸い込む場合では安全性が異なります。CDCは、ビタミンEアセテートがEVALIのアウトブレイクと強く関連していると報告しています。特に重要なのは、米国でEVALI患者の気管支肺胞洗浄液を調べた研究で、EVALI患者の肺からビタミンEアセテートが高頻度に検出された一方、EVALIでない比較対象者からは検出されなかった点です。

THC含有製品との関連

米国のEVALI患者の多くは、THCを含む電子タバコ・VAPE製品の使用歴がありました。特に、友人・知人・非公式な販売経路・オンラインなどから入手した製品が問題視されました。ただし、EVALIはTHCだけで説明できるとは限りません。ニコチン含有製品のみの使用者でもEVALIが疑われた症例が報告されており、香料、溶媒、加熱で生じる化学物質、金属粒子など、複数の要因が関与している可能性があります。

6.日本でもEVALIは起こる?国内で報告された症例

日本では、米国のような大規模なEVALIアウトブレイクは報告されていません。また、日本ではニコチン含有電子タバコは医薬品医療機器等法上、承認なしに販売できる製品ではなく、国内で一般に販売されている電子タバコは非ニコチン製品が中心です。しかし、日本呼吸器学会は、電子タバコや加熱式タバコによる急性肺障害の調査協力を呼びかけており、加熱式タバコによる急性好酸球性肺炎などの急性肺障害が報告されています。

日本国内の重症例:VV-ECMOを必要とした20歳代女性

2026年には、日本国内で販売された電子タバコによるEVALIと考えられた重症例が報告されています。症例は20歳代女性で、気管支喘息の既往があり、来院1週間前に電子タバコを使用しました。その後、発熱と呼吸困難が出現し、重症呼吸不全となりました。

この症例では、人工呼吸管理を行っても低酸素血症が改善せず、VV-ECMO(体外式膜型人工肺)が導入されました。CTでは両側肺にびまん性浸潤影を認め、感染症、自己免疫疾患、アレルゲンなど他の原因を検索したうえで、EVALIと診断されました。抗菌薬とステロイド治療により改善し、入院24日目に後遺症なく退院したと報告されています。

この症例からわかる重要な点は、EVALIはまれではあるものの、若年者でも重症呼吸不全を起こし得るということです。

7.EVALIの検査・診断|肺炎や感染症との区別が大切

EVALIは、血液検査だけで診断できる病気ではありません。診断では、電子タバコやVAPEの使用歴、症状、画像検査、感染症や他疾患の除外が重要になります。

診断で確認されること

  • 電子タバコ・VAPE・加熱式タバコの使用歴
  • 使用開始時期、使用量、製品の種類、リキッドの内容
  • 咳、息切れ、胸痛、発熱、嘔吐、下痢などの症状
  • SpO2など酸素状態
  • 胸部レントゲンや胸部CTでの肺炎像・すりガラス影
  • 血液検査での炎症反応、白血球数、肝機能など
  • インフルエンザ、COVID-19、細菌性肺炎、マイコプラズマ、レジオネラなどの除外
  • 心不全、自己免疫疾患、薬剤性肺障害など他の原因の除外

日本呼吸器学会が示した症例定義でも、発症前90日以内の電子タバコまたは加熱式タバコの吸入開始・変更、胸部X線またはCTでのびまん性陰影、感染症や他疾患の除外が重要とされています。

8.EVALIの治療|使用中止、酸素投与、ステロイド、感染症治療

EVALIの治療で最も大切なのは、電子タバコやVAPE、加熱式タバコの使用を中止することです。使用を続けると、症状が悪化したり再発したりする可能性があります。

主な治療内容

  • 電子タバコ・VAPE・加熱式タバコの中止
  • 酸素投与:低酸素血症がある場合
  • 入院管理:SpO2低下、呼吸困難、基礎疾患がある場合
  • ステロイド治療:肺の炎症を抑える目的で検討される
  • 抗菌薬・抗ウイルス薬:肺炎やインフルエンザなど感染症が否定できない場合
  • 人工呼吸管理・ECMO:重症呼吸不全の場合

CDCの報告では、EVALI患者の多くでステロイド治療後に改善がみられたとされています。ただし、EVALIは感染症と見分けが難しく、ステロイドは感染症を悪化させる可能性もあるため、自己判断で使用する薬ではありません。治療方針は、呼吸器内科や救急医療の判断が必要です。

9.EVALIの予後と後遺症|改善しても経過観察が必要

EVALIは、適切な治療により改善することが多い一方で、重症化するとICU入室、人工呼吸器、ECMOが必要になることがあります。また、退院後に症状が再燃したり、肺機能や画像所見の異常が残ったりする可能性もあります。そのため、EVALIで入院した場合は、退院後もSpO2の確認、胸部レントゲン、肺機能検査などで経過をみることがあります。特に喘息、COPD、心疾患などの持病がある方は注意が必要です。

10.EVALIを防ぐためにできること

EVALIの予防で最も重要なのは、電子タバコやVAPE製品、特に内容成分が不明な製品を使用しないことです。

EVALIを防ぐためのポイント

  • 電子タバコやVAPEを新たに始めない
  • 成分不明のリキッドを使用しない
  • 個人輸入品、知人から入手した製品、非公式ルートの製品を避ける
  • 製品に自分でオイルや添加物を混ぜない
  • 未成年、若年者、妊娠中の方は使用しない
  • 喘息やCOPDなど呼吸器疾患がある方は特に注意する
  • 禁煙目的なら、医療機関で禁煙治療を相談する

「紙巻きタバコよりましだから」と電子タバコや加熱式タバコに切り替える方もいますが、完全な禁煙とは異なります。禁煙を目指す場合は、ニコチン依存症の治療や禁煙補助薬など、医学的に確立された方法を相談することが大切です。

11.よくある質問

Q1.EVALIは電子タバコを1回吸っただけでも起こりますか?

頻度は高くありませんが、短期間の使用後に重症化した症例は報告されています。特に、成分不明のリキッドや非公式に入手した製品、添加物を含む製品では注意が必要です。

Q2.EVALIと普通の肺炎はどう違いますか?

症状は肺炎と非常によく似ています。咳、発熱、息切れ、胸痛、倦怠感などが起こります。EVALIでは、電子タバコやVAPEの使用歴、胸部CTの所見、感染症検査で明らかな原因がないことなどを総合して診断します。

Q3.加熱式タバコでもEVALIのような肺障害は起こりますか?

日本では、加熱式タバコに関連した急性好酸球性肺炎などの急性肺障害が報告されています。加熱式タバコは電子タバコと仕組みは異なりますが、「安全なタバコ」と考えるのは適切ではありません。

Q4.電子タバコは肺がんの原因になりますか?

EVALIは肺がんではなく、主に急性の肺障害です。一方で、電子タバコやVAPEの長期的な肺がんリスクについては、まだ十分にわかっていません。紙巻きタバコが肺がん、COPD、心血管疾患の明確なリスクであることは確立していますが、電子タバコも肺への刺激や炎症を起こす可能性があり、長期的な影響には注意が必要です。

Q5.電子タバコをやめたら治りますか?

軽症例では、使用を中止して改善することもあります。ただし、息苦しさや胸痛、発熱、SpO2低下がある場合は、自己判断せず医療機関を受診してください。重症例では酸素投与、ステロイド、人工呼吸管理が必要になることがあります。

12.まとめ|電子タバコ・VAPE使用後の息苦しさは放置しない

EVALIは、電子タバコやVAPE製品の使用に関連して起こる肺障害です。米国では2019年に大規模なアウトブレイクが起こり、ビタミンEアセテートやTHC含有製品との関連が強く示されました。日本ではまれですが、電子タバコや加熱式タバコに関連した急性肺障害は報告されており、若年者でも重症呼吸不全を起こす可能性があります。

電子タバコやVAPE、加熱式タバコを使用している方で、咳、息切れ、胸痛、発熱、吐き気、下痢、SpO2低下などがある場合は、早めに医療機関へ相談してください。受診時には、使用している製品の種類、使用開始時期、使用頻度、リキッドの内容、個人輸入や非公式ルートで入手した製品かどうかを伝えることが大切です。

「煙が出ないから安全」「紙巻きタバコより害が少ないはず」と考えず、肺に異変を感じたら早めに相談しましょう。

参考文献

  1. CDC:Outbreak of Lung Injury Associated with the Use of E-Cigarette, or Vaping, Products
  2. FDA:Lung Injuries Associated with Use of Vaping Products
  3. CDC MMWR:Interim Guidance for Health Care Providers Evaluating and Caring for Patients with Suspected EVALI
  4. CDC MMWR:Characteristics of a Nationwide Outbreak of EVALI — United States, August 2019–January 2020
  5. Blount BC, et al. Vitamin E Acetate in Bronchoalveolar-Lavage Fluid Associated with EVALI. N Engl J Med. 2020.
  6. 日本呼吸器学会:新型タバコ(電子タバコや加熱式タバコ)による急性肺障害の調査協力のお願い
  7. 医学界新聞:本邦で検証が進む新型たばこ関連肺障害
  8. 堀場篤ほか:Veno–venous extracorporeal membrane oxygenationを用いて治療した若年者の重症電子タバコ関連肺障害の1例. 日本救急医学会雑誌. 2026.
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