「子どもが高い熱を出して、のども痛そう。しかも目が赤い……」そんなときに疑われる感染症のひとつが、プール熱です。正式には咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)といいます。名前に「プール」とついているため、「プールに入ったから感染したの?」「プールを休ませれば大丈夫?」と思われる方も多いかもしれません。しかし実際には、プールだけでうつる病気ではありません。原因は主にアデノウイルスで、くしゃみ・咳・手指・タオル・目やに・便などを介して、家庭内や保育園・幼稚園・学校などで広がることがあります。
この記事では、プール熱の症状、原因、感染経路、診断、治療、自宅での対処法、登園基準、手足口病やヘルパンギーナとの違いについて、保護者の方にわかりやすく解説します。
この記事のポイント
- プール熱は、正式には咽頭結膜熱といいます
- 原因は主にアデノウイルスです
- 主な症状は高熱・のどの痛み・目の充血です
- 特効薬はなく、治療は水分補給や解熱薬などの対症療法が中心です
- 登園・登校は、原則として主要症状が消えてから2日経過後が目安です
プール熱(咽頭結膜熱)とは?
プール熱とは、発熱・のどの痛み・結膜炎を特徴とするウイルス感染症です。正式名称は咽頭結膜熱です。「咽頭」はのど、「結膜」は白目やまぶたの裏側の粘膜を指します。つまり、プール熱はのどと目に症状が出やすい感染症です。かつて、プールでの接触やタオルの共有をきっかけに流行することがあったため「プール熱」と呼ばれるようになりました。しかし、現在ではプールに入っていなくても、保育園・幼稚園・学校・家庭内で感染することがあります。そのため、「プールに入っていないからプール熱ではない」とは言い切れません。
プール熱の原因はアデノウイルス
プール熱の主な原因は、アデノウイルスです。アデノウイルスには多くの型があり、咽頭結膜熱では主に3型が関係しますが、ほかの型でも起こることがあります。アデノウイルスは、子どもに多い感染症の原因となるウイルスで、プール熱以外にも、かぜ症状、結膜炎、胃腸炎、気管支炎、肺炎などを起こすことがあります。多くの場合は自然に治りますが、高熱が数日続くことがあり、保護者の方にとってはとても心配になりやすい病気です。
プール熱はいつ流行する?
プール熱は、一般的には6月頃から増え始め、7〜8月に流行しやすい感染症です。ただし、アデノウイルス自体は一年を通してみられるため、夏以外にも発症することがあります。特に、保育園や幼稚園、学校など、子ども同士の距離が近い環境では流行しやすくなります。
プール熱の主な症状
プール熱の代表的な症状は、次の3つです。
- 高熱
- のどの痛み
- 目の充血・目やに
とくに、39〜40℃近い高熱が出ることもあり、熱が4〜5日ほど続くことがあります。
1.発熱
プール熱では、38〜40℃の高熱が出ることがあります。熱が上がったり下がったりしながら数日続くこともあり、「なかなか熱が下がらない」と不安になる保護者の方も少なくありません。ただし、アデノウイルスでは高熱が比較的長く続くことがあります。水分が取れていて、呼吸が落ち着いており、ぐったりしていなければ、熱の高さだけで過度に慌てる必要はありません。
2.のどの痛み
のどが赤く腫れ、痛みが強くなることがあります。小さなお子さんでは、「のどが痛い」とうまく言えず、次のような様子で気づくことがあります。
- 食べ物を嫌がる
- 飲み物を飲みたがらない
- よだれが増える
- 機嫌が悪い
- 飲み込むときに泣く
のどが痛いときは、無理に固形物を食べさせる必要はありません。まずは水分が取れているかを大切に見てあげましょう。
3.目の充血・目やに
プール熱では、片目または両目が赤くなることがあります。目の症状としては、次のようなものがあります。
- 白目が赤い
- 目やにが出る
- 涙が増える
- まぶしがる
- 目がゴロゴロする
- まぶたが腫れぼったい
目の症状が強い場合や、痛みが強い場合、まぶしがる場合、視力が落ちたように感じる場合は、眼科での評価が必要になることがあります。
その他の症状
プール熱では、以下のような症状を伴うこともあります。
- 頭痛
- 首のリンパ節の腫れ
- 腹痛
- 下痢
- 咳
- 鼻水
- 全身のだるさ
「目とのどの病気」というイメージがありますが、アデノウイルスは全身にさまざまな症状を起こすことがあります。
プール熱の潜伏期間
プール熱の潜伏期間は、一般的に5〜7日程度とされています。潜伏期間とは、ウイルスに感染してから症状が出るまでの期間です。保育園や幼稚園で流行している場合、感染した数日後に発熱や目の充血が出てくることがあります。
プール熱の感染経路|どうやってうつる?
プール熱の主な感染経路は、飛沫感染と接触感染です。
飛沫感染
咳やくしゃみ、会話などで飛んだしぶきを吸い込むことで感染します。保育園や幼稚園では、子ども同士の距離が近く、マスクや手洗いを十分に行うことが難しいため、感染が広がりやすくなります。
接触感染
ウイルスがついた手、タオル、おもちゃ、ドアノブ、机、目やに、鼻水などに触れたあと、口・鼻・目を触ることで感染します。特にアデノウイルスは、目の分泌物や便にも含まれることがあるため、タオルの共有やおむつ交換後の手洗いには注意が必要です。
プールでうつることもある?
プール熱という名前の通り、適切に管理されていないプールの水や、プール後のタオル共有などをきっかけに感染が広がることがあります。ただし、現在ではプールだけが主な感染場所ではありません。むしろ、日常生活の中での飛沫感染・接触感染が大切です。
プール熱は兄弟や大人にもうつる?
はい。プール熱は、兄弟姉妹や大人にもうつることがあります。特に家庭内では、看病する保護者や、同じタオルを使った兄弟姉妹に感染することがあります。大人が感染した場合も、発熱、のどの痛み、目の充血などが出ることがあります。仕事や家事をしながら看病している保護者の方にとっては大変ですが、できる範囲で手洗い・タオルの分別・換気を心がけましょう。
プール熱と手足口病・ヘルパンギーナの違い
夏に流行しやすい子どもの感染症には、プール熱のほかに、手足口病やヘルパンギーナがあります。どれも発熱やのどの痛みを起こすことがあり、初期には見分けがつきにくいこともあります。
| 病気 | 主な原因 | 特徴的な症状 | 登園の目安 |
|---|---|---|---|
| プール熱 咽頭結膜熱 |
アデノウイルス | 高熱、のどの痛み、目の充血、目やに | 主要症状が消えて2日経過後 |
| 手足口病 | エンテロウイルスなど | 手・足・口の発疹、水ぶくれ、口内炎 | 全身状態がよく、食事が取れれば登園可とされることが多い |
| ヘルパンギーナ | エンテロウイルスなど | 突然の高熱、のどの奥の水ぶくれ、強いのどの痛み | 全身状態がよく、食事が取れれば登園可とされることが多い |
プール熱の大きな特徴は、目の充血や目やにを伴いやすいことです。一方で、手足口病では手・足・口の発疹、ヘルパンギーナではのどの奥の水ぶくれが目立ちます。ただし、実際には症状が典型的でないこともあります。迷う場合は、無理に自己判断せず医療機関に相談してください。
プール熱の診断方法
プール熱は、症状や周囲の流行状況から診断することがあります。特徴的には、次のような組み合わせがあると疑いやすくなります。
- 高熱が続く
- のどが赤く腫れている
- 目が赤い、目やにが出る
- 保育園や学校で流行している
必要に応じて、のどや目の分泌物を使ったアデノウイルス迅速検査を行うことがあります。ただし、検査は必ず必要というわけではありません。検査で陽性でも特効薬があるわけではないため、症状の強さ、集団生活での対応、他の病気との鑑別が必要かどうかを考えて判断します。
プール熱の治療|抗生物質は効く?
プール熱の原因はウイルスであるため、抗生物質は基本的に効きません。また、アデノウイルスに対する一般的な特効薬もありません。治療は、つらい症状を和らげながら自然に回復するのを待つ対症療法が中心です。
主な治療
- 発熱や痛みに対する解熱鎮痛薬
- 水分補給
- のどにしみない食事の工夫
- 目の症状が強い場合の点眼薬
- 脱水がある場合の点滴
子どもの解熱薬としては、一般的にアセトアミノフェンが使われることが多いです。薬の種類や量は年齢・体重によって異なるため、医師や薬剤師の指示に従ってください。
自宅でできる対処法
プール熱で大切なのは、無理に熱を下げることよりも、水分が取れているか、呼吸が苦しくないか、ぐったりしていないかを見ることです。
1.水分補給を最優先に
のどが痛いと、食事だけでなく水分も嫌がることがあります。脱水を防ぐために、少量ずつこまめに飲ませましょう。おすすめは、次のような飲み物です。
- 水
- 麦茶
- 経口補水液
- 薄めたスポーツドリンク
- スープ
- ゼリー飲料
一度にたくさん飲めなくても、スプーン1杯、ひと口ずつでも大丈夫です。
2.のどにしみない食べ物を選ぶ
のどが痛いときは、無理に普通の食事を食べさせなくても大丈夫です。食べやすいものとしては、次のようなものがあります。
- ゼリー
- プリン
- ヨーグルト
- 冷ましたおかゆ
- うどん
- 豆腐
- 茶碗蒸し
- アイスクリーム
反対に、オレンジジュース、炭酸飲料、熱いもの、辛いもの、しょっぱいものは、のどにしみることがあります。
3.目やにはやさしく拭き取る
目やにが出るときは、清潔なガーゼやティッシュを水で湿らせ、やさしく拭き取りましょう。左右の目を同じティッシュで拭くと、片方の目からもう片方の目へ広がる可能性があるため、目ごとに新しいものを使うと安心です。
4.タオルは家族と分ける
アデノウイルスは接触感染しやすいため、タオルの共有は避けましょう。洗面所の手拭きタオルも、できればペーパータオルにするか、本人専用に分けるとよいでしょう。
5.アルコール消毒だけに頼らない
アデノウイルスは、一般的なアルコール消毒が効きにくいことがあります。そのため、家庭内での予防では、アルコール消毒だけでなく、流水と石けんによる手洗いがとても大切です。特に、看病のあと、目やにを拭いたあと、おむつ交換のあと、トイレのあと、食事の前は、しっかり手を洗いましょう。
病院を受診するタイミング
プール熱は自然に治ることが多い病気ですが、次のような場合は医療機関を受診してください。
- 水分がほとんど取れない
- 半日以上おしっこが出ない、尿が極端に少ない
- ぐったりして反応が悪い
- 呼吸が苦しそう
- 顔色が悪い
- けいれんした
- 強い頭痛や繰り返す嘔吐がある
- 目の痛みが強い
- まぶしがる、見えにくそうにする
- 高熱が長く続き、全身状態が悪い
- 生後3か月未満の赤ちゃんの発熱
特に乳児は脱水になりやすいため、「いつもより元気がない」「飲めない」「尿が少ない」と感じたら早めに相談しましょう。
プール熱の登園・登校基準
プール熱、つまり咽頭結膜熱は、学校保健安全法では第二種感染症に分類されます。登園・登校の目安は、原則として、発熱・のどの痛み・結膜炎などの主要症状が消えたあと、2日を経過してからです。
登園・登校の目安
主要症状が消えてから2日経過後
例:月曜日に熱・のどの痛み・目の症状がすべて落ち着いた場合、火曜・水曜を自宅で過ごし、木曜日から登園・登校を検討します。
ただし、園や学校によって、登園許可証や医師の意見書が必要な場合があります。地域や施設のルールも確認してください。また、登園基準を満たしていても、食事や水分が十分に取れない、機嫌が悪い、体力が戻っていない場合は、無理に登園しない方が安心です。
解熱したらすぐ登園していい?
プール熱では、熱が下がっただけでは登園の条件を満たさないことがあります。大切なのは、発熱だけでなく、のどの痛みや目の症状も含めた主要症状が落ち着いているかです。「熱は下がったけれど、目が赤い」「目やにが多い」「のどが痛くて食べられない」という場合は、もう少し自宅で様子を見る必要があります。
家庭内感染を防ぐためにできること
プール熱は家庭内でも広がることがあります。完全に防ぐことは難しいですが、次の工夫で感染拡大を減らすことができます。
- タオルを共有しない
- 食器やコップを共有しない
- こまめに手洗いする
- 目やにや鼻水を拭いたティッシュはすぐ捨てる
- ドアノブ、蛇口、トイレ周りを清潔にする
- おむつ交換後は特にしっかり手を洗う
- きょうだいが目を触った手で口や鼻を触らないよう声かけする
看病する保護者の方も、疲れがたまると体調を崩しやすくなります。できる範囲で休みながら対応してください。
プール熱の合併症はある?
多くの子どもは自然に回復しますが、まれに注意が必要なことがあります。
脱水
高熱やのどの痛みで水分が取れないと、脱水になることがあります。尿が少ない、口の中が乾いている、泣いても涙が少ない、ぐったりしている場合は注意が必要です。
目の炎症が強い場合
結膜炎の症状が強い場合、角膜に炎症が及ぶことがあります。目の痛みが強い、まぶしがる、見えにくそうにする場合は、眼科を受診しましょう。
肺炎・重症感染
頻度は高くありませんが、アデノウイルスは肺炎などを起こすこともあります。特に、乳児、基礎疾患がある子ども、免疫が弱い方では注意が必要です。
プール熱についてよくある質問
Q1.プールに入っていないのにプール熱になりますか?
なります。プール熱という名前ですが、感染経路はプールだけではありません。咳・くしゃみ・手指・タオル・目やに・便などを介して感染します。
Q2.抗生物質を飲めば早く治りますか?
プール熱はウイルス感染症のため、抗生物質は基本的に効きません。治療は、水分補給や解熱薬などの対症療法が中心です。
Q3.熱は何日くらい続きますか?
高熱が4〜5日ほど続くことがあります。ただし、水分が取れない、ぐったりしている、呼吸が苦しそうなどの症状があれば、日数にかかわらず受診してください。
Q4.登園許可証は必要ですか?
園や学校によって対応が異なります。咽頭結膜熱は出席停止の対象となる感染症のため、登園・登校前に園や学校のルールを確認してください。
Q5.一度かかったらもうかかりませんか?
アデノウイルスには多くの型があるため、繰り返しかかることがあります。一度かかったからといって、今後まったく感染しないわけではありません。
まとめ|プール熱は「目・のど・高熱」がポイント。脱水に注意して見守りましょう
プール熱は、正式には咽頭結膜熱といい、主にアデノウイルスによって起こる感染症です。高熱、のどの痛み、目の充血が特徴で、熱が数日続くこともあります。見ている保護者の方はとても不安になると思いますが、多くは自然に回復します。大切なのは、熱の高さだけで判断するのではなく、水分が取れているか、尿が出ているか、ぐったりしていないか、呼吸が苦しくないかを見ることです。また、プール熱は登園・登校基準が決められている感染症です。主要症状が落ち着いてから2日経過するまでは、自宅でゆっくり休ませてあげましょう。「いつ受診したらいいかわからない」「手足口病やヘルパンギーナとの違いがわからない」「登園してよいか迷う」という場合は、無理に自己判断せず、医療機関に相談してください。

