ヘルパンギーナとは?子どもの高熱・のどの痛み・登園基準を医師が解説

こどもの症状

「急に高熱が出た」「のどが痛くて水分を飲みたがらない」「保育園でヘルパンギーナが流行っていると言われた」――そんなとき、保護者の方はとても不安になりますよね。ヘルパンギーナは、乳幼児を中心に夏に流行しやすいウイルス感染症です。突然の発熱、のどの痛み、口の奥にできる小さな水ぶくれや潰瘍が特徴です。多くは数日で自然に改善しますが、のどの痛みで水分がとれなくなると、脱水に注意が必要です。

この記事では、ヘルパンギーナの症状、原因、手足口病やプール熱との違い、診断、治療、自宅でできる対処法、登園基準、合併症、受診の目安について、保護者の方にわかりやすく解説します。

この記事のポイント

  • ヘルパンギーナは、夏に多い子どものウイルス感染症です。
  • 突然の高熱、のどの痛み、口の奥の水疱・潰瘍が特徴です。
  • 抗菌薬は基本的に効かず、治療は解熱鎮痛薬や水分補給などの対症療法です。
  • 一番注意したいのは、のどの痛みによる水分不足・脱水です。
  • 登園は「熱がなく、口の痛みの影響がなく、普段の食事がとれること」が目安です。

ヘルパンギーナとは?

ヘルパンギーナは、主にエンテロウイルスというウイルスの仲間によって起こる感染症です。原因となることが多いのは、コクサッキーウイルスA群ですが、コクサッキーウイルスB群やエコーウイルスなどが関係することもあります。いわゆる「夏かぜ」の代表的な病気のひとつで、特に5歳以下の乳幼児に多くみられます。日本では例年、5月頃から増え始め、夏に流行のピークを迎えることが多い病気です。名前は少しこわく聞こえるかもしれませんが、ほとんどの場合は自然に回復します。ただし、口やのどが痛くて飲食ができない場合は、脱水になりやすいため注意が必要です。

ヘルパンギーナの原因と感染経路

ヘルパンギーナの原因はウイルスです。主な感染経路は、以下の3つです。

  • 飛沫感染:咳やくしゃみ、会話で飛ぶしぶきからうつる
  • 接触感染:ウイルスがついた手、おもちゃ、ドアノブなどを触ってうつる
  • 糞口感染:便に排出されたウイルスが手を介して口に入る

小さな子どもは、手を口に入れたり、おもちゃを共有したり、おむつ交換が必要だったりするため、保育園や幼稚園などの集団生活で広がりやすい特徴があります。また、症状がよくなった後も、しばらく便の中にウイルスが出ることがあります。そのため、熱が下がったあとも、手洗いとおむつ交換後の衛生管理は続けることが大切です。

ヘルパンギーナの症状

ヘルパンギーナは、感染してから2〜4日程度の潜伏期間を経て発症します。典型的には、突然の発熱から始まります。

主な症状

  • 突然の高熱
  • のどの痛み
  • 口の奥の水疱や潰瘍
  • 食欲低下
  • 不機嫌
  • よだれが増える
  • 水分を飲みたがらない
  • 頭痛、だるさ
  • 嘔吐を伴うこともある

口の中の水疱は、主にのどの奥、軟口蓋、口蓋垂の周囲にできます。水疱が破れると浅い潰瘍になり、飲み込むときに強い痛みが出ることがあります。熱は1〜3日、長くても数日で下がることが多いですが、口の痛みは熱が下がった後も少し続くことがあります。

保護者の方へ

ヘルパンギーナで一番困るのは、「熱そのもの」よりも、のどの痛みで水分がとれなくなることです。食事は数日少なくても大丈夫なことが多いですが、水分がとれない状態が続く場合は受診してください。

ヘルパンギーナ・手足口病・プール熱の違い

夏に子どもで流行しやすい感染症には、ヘルパンギーナのほかに、手足口病プール熱、正式には咽頭結膜熱があります。どれも発熱やのどの痛みを起こすことがあり、見分けが難しいこともあります。

病気 主な原因 特徴的な症状 発疹の場所 登園の目安
ヘルパンギーナ エンテロウイルス
主にコクサッキーウイルスA群
突然の高熱、のどの痛み、口の奥の水疱・潰瘍 主にのどの奥 発熱や口の痛みの影響がなく、普段の食事がとれること
手足口病 エンテロウイルス
コクサッキーウイルス、EV71など
口の中の痛み、手足の水疱、発熱は軽いことも多い 口、手のひら、足の裏、足背、膝、おしりなど 発熱や口の痛みの影響がなく、普段の食事がとれること
プール熱
咽頭結膜熱
アデノウイルス 高熱、のどの痛み、目の充血、目やに 皮膚の発疹よりも、目の症状が特徴 発熱、咽頭炎、結膜炎などの主な症状が消えてから2日経過するまで

ヘルパンギーナと手足口病の違い

ヘルパンギーナと手足口病は、どちらもエンテロウイルスが原因になることがあり、口の中に水疱や潰瘍ができる点は似ています。違いとしては、ヘルパンギーナは口の奥の病変と突然の高熱が目立ちます。一方、手足口病は手のひら、足の裏、足背、おしり、膝などの水疱性発疹が目立つことが多いです。ただし、実際には典型的でない症状もあります。「手足の発疹が少ない手足口病」や「口の中の痛みが強い手足口病」もあるため、診察では口の中、手足、全身状態を確認して判断します。

手足口病が流行中|症状・うつる期間・登園目安・受診のタイミングを医師が解説
手足口病が流行しています。手足や口の発疹、発熱、食事がとれない時の対応、うつる期間、保育園・幼稚園の登園目安、受診すべき症状を医師がわかりやすく解説します。

ヘルパンギーナとプール熱の違い

プール熱は、正式には咽頭結膜熱といい、アデノウイルスによる感染症です。高熱とのどの痛みはヘルパンギーナと似ていますが、目の充血、目やに、結膜炎が目立つ場合はプール熱をまた、プール熱はヘルパンギーナより発熱が長引くことがあり、4〜5日ほど高熱が続くことがあります。「プール熱」という名前ですが、現在はプールの水そのものよりも、手指、タオル、接触によって広がることが多いと考えられています。タオルの共有を避け、手洗いをしっかり行うことが重要です。

ヘルパンギーナの診断

ヘルパンギーナは、多くの場合、症状と診察所見から診断します。診察では、以下の点を確認します。

  • 発熱の経過
  • のどの痛みの程度
  • 口の奥の水疱や潰瘍の有無
  • 手足やおしりに発疹がないか
  • 目の充血や目やにがないか
  • 水分がとれているか
  • ぐったりしていないか

通常、ヘルパンギーナに特別な検査は必要ありません。ウイルス検査を行えば原因ウイルスを確認できる場合もありますが、一般診療では、検査結果によって治療方針が大きく変わることは少ないため、症状から判断することが多いです。ただし、高熱が長引く、ぐったりしている、首が硬い、繰り返し吐く、強い頭痛がある、呼吸が苦しそうなどの場合は、ヘルパンギーナ以外の病気や合併症も考えて診察します。

ヘルパンギーナの治療

ヘルパンギーナには、現在のところ原因ウイルスを直接退治する特効薬はありません。また、ウイルス感染症のため、細菌に効く抗菌薬、いわゆる抗生物質は基本的に効きません。治療の中心は、つらい症状をやわらげながら自然に回復するのを待つ対症療法です。

主な治療

  • 発熱やのどの痛みに対する解熱鎮痛薬
  • 水分補給
  • 脱水が強い場合の点滴
  • 合併症が疑われる場合の詳しい検査や入院治療

子どもの解熱鎮痛薬は、一般的にはアセトアミノフェンが使われることが多いです。市販薬を使う場合も、年齢や体重に合った薬を選び、同じ成分の薬を重ねて使わないように注意してください。なお、子どもには自己判断でアスピリンを使用しないでください。薬の使い方に迷う場合は、医療機関や薬剤師に相談しましょう。

自宅でできる対処法

ヘルパンギーナでは、家庭でのケアがとても大切です。特に意識したいのは、水分補給、痛みを刺激しない食事、休養です。

1.水分は少量ずつ、こまめに

のどが痛いと、子どもは水分を飲みたがらなくなります。一度にたくさん飲ませようとすると嫌がることがあるため、少量ずつ、こまめに飲ませましょう。飲みやすいものの例です。

  • 麦茶
  • 経口補水液
  • 薄めたスポーツドリンク
  • 冷ましたスープ
  • ゼリー飲料
  • アイスや氷を少量ずつ

経口補水液は脱水が心配なときに役立ちますが、味を嫌がる子もいます。無理に一種類にこだわらず、本人が飲めるものを優先しましょう。

2.食事は「食べられるもの」で大丈夫

数日間、食事量が減ることはよくあります。水分がとれていて、少しずつ元気が戻っているなら、食事を無理に食べさせる必要はありません。食べやすいものの例です。

  • プリン
  • ゼリー
  • ヨーグルト
  • 豆腐
  • 冷ましたおかゆ
  • うどんをやわらかく煮たもの
  • 茶碗蒸し
  • スープ

避けた方がよいものは、以下のような刺激の強いものです。

  • オレンジジュースなど酸っぱいもの
  • 炭酸飲料
  • 熱い食べ物
  • 辛いもの
  • 硬いせんべいや揚げ物

3.入浴は元気があれば短時間で

高熱でぐったりしているときは無理に入浴する必要はありません。汗をかいたら、ぬるいタオルで体を拭くだけでも十分です。熱が下がって元気があり、水分もとれている場合は、短時間のシャワーや入浴は可能です。ただし、長風呂は体力を使うため避けましょう。

4.家庭内感染を防ぐポイント

兄弟姉妹や保護者にうつることもあります。家庭内では以下を意識しましょう。

  • 石けんと流水で手洗いをする
  • タオルを共有しない
  • 食器やコップの共有を避ける
  • おむつ交換後は必ず手洗いをする
  • よく触る場所やおもちゃを清潔にする
  • 咳やくしゃみがある場合は咳エチケットを行う

症状がよくなった後も便からウイルスが出ることがあるため、登園後もしばらくは、おむつ交換後やトイレ後の手洗いを丁寧に行いましょう。

受診の目安

ヘルパンギーナは自然に治ることが多い病気ですが、以下の場合は医療機関を受診してください。

早めに受診した方がよい場合

  • 水分がほとんどとれない
  • 半日以上おしっこが出ていない、または明らかに尿が少ない
  • 泣いても涙が少ない
  • 口や唇が乾いている
  • ぐったりしている
  • 眠ってばかりで反応が悪い
  • 高熱が3日以上続く
  • 強い頭痛がある
  • 繰り返し吐く
  • 首を痛がる、首が硬い
  • けいれんを起こした
  • 呼吸が苦しそう
  • 胸を痛がる、顔色が悪い
  • 生後3か月未満の赤ちゃんの発熱

特に、水分がとれない、尿が少ない、ぐったりしている場合は、脱水の可能性があります。迷う場合は早めに相談しましょう。

ヘルパンギーナの登園基準

保育園や幼稚園にいつから行けるのかは、保護者の方がとても悩むポイントです。ヘルパンギーナは、インフルエンザのように「発症後○日間は必ず休む」という形ではなく、基本的には本人の全身状態で判断します。こども家庭庁の保育所における感染症対策ガイドラインでは、ヘルパンギーナの登園の目安は、発熱や口腔内の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれることとされています。

登園を考えてよい目安

  • 熱が下がっている
  • 機嫌がよい
  • 水分がしっかりとれている
  • 普段に近い食事がとれる
  • 集団生活に参加できる元気がある

口の中の水疱や潰瘍が完全になくなるまで待つ必要はありません。ただし、痛みで水分や食事がとれない状態では、園で過ごすのはつらいため、自宅で園によっては登園届や医師の診断が必要な場合があります。地域や施設のルールに従ってください。

手足口病・プール熱の登園基準との違い

ヘルパンギーナと手足口病は、登園の考え方が似ています。どちらも、症状が改善したあとも便からウイルスが出ることがあるため、「完全にうつらない状態」を待つことは現実的ではありません。そのため、登園の目安は、流行を完全に止める目的よりも、子ども本人が無理なく集団生活を送れるかが大切になります。

  • ヘルパンギーナ:発熱や口の痛みの影響がなく、普段の食事がとれること
  • 手足口病:発熱や口の水疱・潰瘍の影響がなく、普段の食事がとれること
  • プール熱:発熱、咽頭炎、結膜炎などの主な症状が消失してから2日を経過するまで

プール熱は学校保健安全法で第二種感染症に位置づけられており、登園・登校停止期間の考え方がヘルパンギーナや手足口病とは異なります。

ヘルパンギーナの合併症

ヘルパンギーナは多くの場合、自然に治る病気ですが、まれに合併症を起こすことがあります。

1.脱水症

最も注意したい合併症です。口やのどが痛いため、水分を飲めなくなることで起こります。脱水のサインには、尿が少ない、口が乾いている、泣いても涙が少ない、ぐったりしている、皮膚の張りが弱いなどがあります。

2.熱性けいれん

乳幼児では、高熱に伴って熱性けいれんを起こすことがあります。多くは短時間で自然に止まりますが、初めてのけいれん、5分以上続くけいれん、左右差があるけいれん、けいれん後の意識が戻りにくい場合は、救急受診が必要です。

3.無菌性髄膜炎

まれに、エンテロウイルス感染に関連して無菌性髄膜炎を起こすことがあります。強い頭痛、繰り返す嘔吐、首の痛み、ぐったりしている場合は注意が必要です。

4.心筋炎

非常にまれですが、急性心筋炎を合併することがあります。顔色が悪い、呼吸が苦しそう、胸を痛がる、脈が極端に速い、ぐったりしている場合は、早急な受診が必要です。

ヘルパンギーナは大人にもうつる?

ヘルパンギーナは子どもに多い病気ですが、大人にもうつることがあります。特に、子どもの看病をしている保護者や、保育・医療・介護など子どもと接する機会が多い人は感染することがあります。大人がかかった場合も、発熱、のどの痛み、口内炎のような痛みが出ることがあります。仕事や家事を無理せず、手洗い、タオルの共有を避ける、食器の共有を避けるなど、家庭内感染対策を行いましょう。

ヘルパンギーナは何度もかかる?

ヘルパンギーナの原因となるウイルスには複数の種類があります。そのため、一度かかっても、別の型のウイルスに感染して再び発症することがあります。「去年かかったのに、またヘルパンギーナと言われた」ということは珍しくありません。繰り返すからといって、必ずしも免疫が弱いという意味ではありません。

予防方法

ヘルパンギーナを完全に防ぐことは難しいですが、基本的な感染対策で広がりを減らすことができます。

  • 帰宅後、食事前、トイレ後、おむつ交換後に手洗いをする
  • タオルを共有しない
  • おもちゃやよく触る場所を清潔にする
  • 咳やくしゃみがあるときは咳エチケットを行う
  • 体調が悪いときは無理に登園しない
  • 便にウイルスが出ることがあるため、おむつ交換後の手洗いを徹底する

ヘルパンギーナには、国内で承認されたワクチンはありません。日頃の手洗いと、体調不良時に無理をさせないことが大切です。

よくある質問

Q1.ヘルパンギーナに抗菌薬は必要ですか?

ヘルパンギーナはウイルス感染症のため、抗菌薬は基本的に効きません。ただし、中耳炎や細菌感染など別の病気を合併している場合は、医師の判断で抗菌薬が使われることがあります。

Q2.熱が下がっても口が痛そうです。登園してよいですか?

熱が下がっていても、水分や食事が十分にとれない場合は、まだ登園は控えた方がよいでしょう。登園の目安は、熱だけでなく、口の痛みの影響がなく、普段の食事がとれるかどうかです。

Q3.発疹や口内炎が残っていたら登園できませんか?

口の中の水疱や潰瘍が完全に消えるまで待つ必要はありません。発熱がなく、口の痛みで食事や水分摂取に困らず、元気に集団生活ができる状態であれば登園を検討できます。ただし、園のルールも確認してください。

Q4.兄弟にうつりますか?

うつることがあります。タオル、コップ、食器の共有を避け、手洗いをしっかり行いましょう。特におむつ交換後やトイレ後の手洗いが重要です。

Q5.プールに入ってもいいですか?

発熱がある、のどが痛い、水分が十分にとれない、元気がない場合はプールは控えてください。解熱して元気が戻り、食事や水分がとれるようになってから、園や学校のルールに従いましょう。

まとめ

ヘルパンギーナは、夏に子どもに多いウイルス感染症で、突然の高熱、のどの痛み、口の奥の水疱・潰瘍が特徴です。多くは数日で自然に回復しますが、のどの痛みによって水分がとれなくなると脱水のリスクがあります。家庭では、無理に食べさせるよりも、まず水分を少量ずつこまめにとることを意識しましょう。手足口病とは手足の発疹の有無、プール熱とは目の充血や登園基準の違いがポイントになります。ただし、実際には見分けが難しいこともあるため、ぐったりしている、水分がとれない、高熱が続く、強い頭痛や嘔吐がある場合は、早めに医療機関へ相談してください。登園は、発熱や口の痛みの影響がなく、普段の食事がとれることが目安です。子どもが無理なく園で過ごせるかを大切に判断しましょう。

参考文献

タイトルとURLをコピーしました