健康診断で「血圧が高いですね」「高血圧の疑いがあります」と言われると、心配になる方も多いのではないでしょうか。
高血圧は、初期にはほとんど自覚症状がありません。しかし、放置すると脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎臓病などの原因になることがあります。つまり、高血圧は「症状が出てから治す病気」ではなく、症状がないうちに見つけて、将来の病気を防ぐために治療する病気です。
この記事では、健康診断で血圧が高いと言われた方に向けて、高血圧の診断基準、家庭血圧の測り方、受診の目安、二次性高血圧、塩分摂取量、治療法、合併症、高血圧緊急症についてわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 健康診断で血圧が高いと言われたときに、まず何をすればよいか
- 高血圧の診断基準と家庭血圧の重要性
- 血圧を下げる目的と、放置した場合の合併症
- 塩分摂取量の目安と今日からできる生活改善
- 二次性高血圧が疑われるケース
- 高血圧の治療法と受診のタイミング
- 高血圧緊急症として救急受診が必要な症状
- 1. 健康診断で血圧が高いと言われたら、まず家庭血圧を測りましょう
- 2. 高血圧の診断基準|健診と家庭血圧では基準が少し違います
- 3. 家庭血圧の正しい測り方
- 4. 血圧を下げる目的は「数字を下げること」ではありません
- 5. 高血圧を放置すると起こりやすい合併症
- 6. 塩分摂取量に注意|日本人は塩分をとりすぎています
- 7. 生活習慣で血圧を下げる方法
- 8. 二次性高血圧とは?原因が隠れている高血圧に注意
- 9. 高血圧の治療|生活改善だけでよい?薬は必要?
- 10. 受診の目安|このような方は一度ご相談ください
- 11. 高血圧緊急症|この症状があるときは救急受診を
- 12. 当院でできること
- まとめ|血圧が高いと言われたら、放置せず家庭血圧を記録して受診を
- よくある質問
- 参考文献
1. 健康診断で血圧が高いと言われたら、まず家庭血圧を測りましょう
健康診断で血圧が高くても、1回の測定だけで必ず高血圧と診断されるわけではありません。緊張、睡眠不足、直前の運動、カフェイン、喫煙、ストレスなどで一時的に血圧が上がることがあります。一方で、健診ではそれほど高くないのに、自宅や職場では血圧が高い「仮面高血圧」もあります。そのため、高血圧の診断や治療方針を決めるうえで、家庭血圧がとても重要です。
健康診断で血圧が高いと言われた方は、まず1〜2週間、自宅で血圧を測定して記録してみましょう。その記録を持って受診すると、診断や治療方針をより正確に判断できます。
2. 高血圧の診断基準|健診と家庭血圧では基準が少し違います
高血圧の診断基準は、病院や健診で測る「診察室血圧」と、自宅で測る「家庭血圧」で異なります。
| 測定場所 | 高血圧の目安 |
|---|---|
| 診察室血圧・健診血圧 | 140/90mmHg以上 |
| 家庭血圧 | 135/85mmHg以上 |
また、治療で目指す血圧は、診断基準とは別に考える必要があります。2025年版の高血圧管理・治療ガイドラインでは、降圧目標として原則診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満が示されています。ただし、高齢の方、ふらつきや立ちくらみがある方、腎機能が低下している方などでは、血圧を下げすぎることで体調不良を起こすこともあります。目標値は年齢や持病、薬の副作用を確認しながら、医師と相談して決めることが大切です。
3. 家庭血圧の正しい測り方
家庭血圧は、測り方によって数値が変わります。できるだけ同じ条件で測定しましょう。
朝の測定
- 起床後1時間以内
- トイレを済ませたあと
- 朝食前
- 血圧の薬を飲む前
- 座って1〜2分安静にしてから測定
夜の測定
- 就寝前
- 入浴・飲酒・運動の直後は避ける
- 座って1〜2分安静にしてから測定
血圧計は、手首式よりも上腕式血圧計がおすすめです。1回だけの数値に一喜一憂せず、朝・夜の平均や数日間の傾向を見ていくことが大切です。
4. 血圧を下げる目的は「数字を下げること」ではありません
高血圧の治療の目的は、単に血圧の数字を下げることではありません。最大の目的は、将来の脳卒中、心筋梗塞、心不全、腎臓病、認知症などを予防することです。高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれることがあります。痛みや苦しさがないまま血管に負担をかけ続け、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞として現れることがあるためです。「症状がないから大丈夫」ではなく、症状がない今こそ、将来の合併症を防ぐチャンスと考えましょう。
5. 高血圧を放置すると起こりやすい合併症
血圧が高い状態が続くと、全身の血管に負担がかかります。特に影響を受けやすいのは、脳、心臓、腎臓、目、大動脈です。
| 臓器 | 起こりやすい合併症 |
|---|---|
| 脳 | 脳梗塞、脳出血、認知症 |
| 心臓 | 狭心症、心筋梗塞、心不全、心肥大 |
| 腎臓 | 慢性腎臓病、腎不全 |
| 大動脈 | 大動脈瘤、大動脈解離 |
| 目 | 高血圧性網膜症、視力低下 |
高血圧の治療は、今すぐ困っている症状を取るためだけではなく、5年後、10年後の脳・心臓・腎臓を守るための治療です。
6. 塩分摂取量に注意|日本人は塩分をとりすぎています
高血圧の生活改善で最も重要なもののひとつが減塩です。日本人は、醤油、味噌、漬物、麺類の汁、加工食品などから塩分を多くとりやすい食生活です。厚生労働省の情報では、食塩相当量の目標量は成人男性で7.5g/日未満、成人女性で6.5g/日未満とされていますが、高血圧の方では1日6g未満が目標とされています。
今日からできる減塩の工夫
- ラーメン・うどん・そばの汁は全部飲まない
- 醤油やソースは「かける」より「つける」
- 漬物、梅干し、佃煮、加工肉を食べすぎない
- 味噌汁は具だくさんにして汁の量を減らす
- だし、酢、レモン、香辛料、薬味を活用する
- 外食やコンビニ食では栄養表示の食塩相当量を見る
「薄味にしないといけない」と考えると続きにくいですが、まずは麺類の汁を残す、醤油を減らす、加工食品を控えるだけでも減塩につながります。
7. 生活習慣で血圧を下げる方法
高血圧の治療では、薬だけでなく生活習慣の見直しが重要です。特に、減塩、体重管理、運動、節酒、睡眠の改善は血圧管理に役立ちます。
体重管理
体重が増えると血圧も上がりやすくなります。肥満がある方では、体重を少し減らすだけでも血圧が改善することがあります。
運動
ウォーキング、軽いジョギング、自転車、水中歩行などの有酸素運動がおすすめです。無理な運動ではなく、息が弾む程度の運動を継続することが大切です。
節酒
飲酒量が多いと血圧が上がりやすくなります。毎日飲酒する方、飲む量が多い方は、休肝日を作る、量を減らすなどの工夫が必要です。
睡眠とストレス
睡眠不足やストレスも血圧上昇に関係します。いびきが大きい、日中の眠気が強い、寝ても疲れが取れない方では、睡眠時無呼吸症候群が隠れていることもあります。
8. 二次性高血圧とは?原因が隠れている高血圧に注意
高血圧の多くは、塩分のとりすぎ、肥満、運動不足、加齢、遺伝などが関係する「本態性高血圧」です。一方で、何らかの病気や薬が原因で血圧が高くなるものを二次性高血圧といいます。二次性高血圧は、原因を見つけて治療することで血圧が大きく改善することがあります。特に、若い方の高血圧、急に悪化した高血圧、薬を飲んでも下がりにくい高血圧では確認が必要です。
二次性高血圧が疑われるケース
- 40歳未満で高血圧を指摘された
- 急に血圧が高くなった
- 複数の薬を飲んでも血圧が下がりにくい
- 血液検査でカリウムが低いと言われた
- いびき、無呼吸、日中の強い眠気がある
- 腎機能が悪い、尿蛋白を指摘された
- 発作的な動悸、頭痛、発汗を伴って血圧が上がる
- ステロイド、痛み止め、漢方薬、サプリメントなどを使用している
二次性高血圧の主な原因
- 原発性アルドステロン症などの副腎ホルモン異常
- 腎臓病、腎血管性高血圧
- 睡眠時無呼吸症候群
- 甲状腺疾患
- 褐色細胞腫、クッシング症候群などの内分泌疾患
- 薬剤性高血圧
健康診断で血圧が高いと言われた方の中にも、二次性高血圧が隠れていることがあります。必要に応じて、血液検査、尿検査、心電図、腎機能、電解質、ホルモン検査、睡眠時無呼吸の評価などを行います。
9. 高血圧の治療|生活改善だけでよい?薬は必要?
高血圧の治療は、血圧の高さだけでなく、年齢、家庭血圧、糖尿病、脂質異常症、腎臓病、喫煙、心臓病や脳卒中の既往などを総合して判断します。軽度の高血圧でリスクが低い場合は、まず生活習慣の改善から始めることがあります。一方で、血圧が高い状態が続いている方、糖尿病や腎臓病などを合併している方、すでに心臓や脳の病気がある方では、早めに薬物治療を検討します。
主な降圧薬
- カルシウム拮抗薬
- ARB・ACE阻害薬
- 利尿薬
- β遮断薬
- ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬など
降圧薬は「一度飲み始めたら終わり」ではありません。家庭血圧、体調、血液検査、腎機能、電解質などを確認しながら、薬の種類や量を調整します。生活習慣の改善により、薬を減らせる場合もあります。
10. 受診の目安|このような方は一度ご相談ください
健康診断で血圧が高いと言われた方は、以下に当てはまる場合、一度医療機関で相談することをおすすめします。
受診をおすすめするケース
- 健診で140/90mmHg以上を指摘された
- 家庭血圧の平均が135/85mmHg以上
- 160/100mmHg以上の血圧が続く
- 糖尿病、脂質異常症、腎臓病、心臓病がある
- 尿蛋白、腎機能低下、心電図異常を指摘された
- 若いのに高血圧を指摘された
- 薬を飲んでいるのに血圧が下がらない
- いびき、無呼吸、日中の眠気がある
- どのくらい塩分をとっているか知りたい
受診時には、健診結果、家庭血圧の記録、お薬手帳を持参すると診療がスムーズです。
11. 高血圧緊急症|この症状があるときは救急受診を
血圧が非常に高く、脳、心臓、腎臓、大動脈などに急な障害が起きている状態を高血圧緊急症といいます。血圧の数字だけで決まるわけではありませんが、180/120mmHg以上の血圧に加えて、次のような症状がある場合は、すぐに救急受診が必要です。
すぐに救急受診が必要な症状
- 突然の激しい頭痛
- ろれつが回らない、片側の手足が動かない
- 意識がぼんやりする、けいれん
- 胸の痛み、強い息苦しさ
- 背中を引き裂かれるような痛み
- 急な視力低下、見えにくさ
- 強い吐き気や嘔吐を伴う頭痛
このような症状がある場合は、自己判断で薬を追加して様子を見るのではなく、119番通報を含めて救急対応を検討してください。
12. 当院でできること
当院では、健康診断で血圧が高いと言われた方に対して、家庭血圧の確認、生活習慣の見直し、塩分摂取量の評価、二次性高血圧のスクリーニング、必要に応じた薬物治療を行っています。高血圧は、早く気づいて、正しく測り、必要な検査と治療につなげることで、将来の合併症を予防できる病気です。
「健診で血圧が高いと言われたけれど、薬を飲むべきかわからない」
「家庭血圧をどう測ればよいかわからない」
「塩分をどれくらい減らせばよいかわからない」
「若いのに血圧が高く、原因が心配」
このような方は、自己判断で放置せず、お気軽にご相談ください。
まとめ|血圧が高いと言われたら、放置せず家庭血圧を記録して受診を
- 健診血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上は高血圧の目安です。
- 家庭血圧は、高血圧の診断や治療方針を決めるうえで重要です。
- 高血圧の治療目的は、脳卒中・心筋梗塞・腎臓病などの合併症を防ぐことです。
- 高血圧の方は、塩分摂取量を1日6g未満に近づけることがすすめられます。
- 若年、高度高血圧、治療抵抗性高血圧では、二次性高血圧の確認が大切です。
- 強い頭痛、麻痺、胸痛、息苦しさなどを伴う場合は高血圧緊急症の可能性があり、救急受診が必要です。
健康診断で血圧が高いと言われたことは、将来の病気を防ぐための大切なサインです。まずは家庭血圧を記録し、健診結果と一緒に医療機関へ相談しましょう。
よくある質問
Q. 健診で1回だけ血圧が高いと言われました。すぐ薬が必要ですか?
1回だけの血圧では判断できないことがあります。まずは家庭血圧を1〜2週間測定し、平均値を確認することが大切です。ただし、160/100mmHg以上が続く場合や、糖尿病・腎臓病・心臓病がある場合は早めの受診をおすすめします。
Q. 家では正常なのに、病院や健診では高くなります。これも高血圧ですか?
診察室だけで血圧が高くなる「白衣高血圧」の可能性があります。ただし、将来的に高血圧へ進みやすい場合もあるため、家庭血圧を継続して確認することが大切です。
Q. 血圧の薬は一度始めると一生やめられませんか?
必ずしも一生やめられないわけではありません。体重減少、減塩、運動、節酒などで血圧が改善すれば、薬を減らせる場合もあります。ただし、自己判断で中止すると血圧が急に上がることがあるため、必ず医師と相談してください。
Q. 血圧が高いだけで症状がありません。受診する必要はありますか?
高血圧は症状がないことがほとんどです。症状がないうちに治療することで、脳卒中や心筋梗塞などの重大な合併症を予防できます。健診で高血圧を指摘された場合は、家庭血圧を記録して一度相談しましょう。

