腎機能低下で注意したい市販薬・痛み止め・サプリメント
健康診断で「腎機能が低下しています」「eGFRが低めです」「クレアチニンが高いです」と言われたとき、食事や水分を気にされる方は多いです。しかし、意外と見落とされやすいのが、市販薬・痛み止め・サプリメントです。
「頭痛のときに市販の痛み止めを飲む」
「腰痛や膝の痛みでロキソニンを使う」
「健康のためにサプリメントを飲んでいる」
このような行動が、腎機能が低下している方では腎臓に負担をかけることがあります。
この記事では、腎機能低下を指摘された方が注意したい薬やサプリメント、受診時に伝えるべきポイントについて、わかりやすく解説します。
腎機能が低下すると、なぜ薬に注意が必要なのか?
腎臓は、血液中の老廃物や余分な水分を尿として体の外に出す臓器です。さらに、多くの薬や薬の成分も、腎臓を通して体外へ排泄されます。
そのため、腎機能が低下していると、
- 薬が体に残りやすくなる
- 副作用が出やすくなる
- 脱水や発熱をきっかけに急に腎機能が悪化する
- もともとの腎機能低下がさらに進む
ことがあります。
特に慢性腎臓病、いわゆるCKDでは、薬の種類や量に注意が必要です。日本腎臓学会のCKD診療に関する資料でも、NSAIDsと呼ばれる痛み止めは腎障害性薬剤であり、特に脱水状態では急性腎障害のリスクが高くなるとされています。
特に注意したい市販の痛み止め:NSAIDs
腎機能低下を指摘された方が、まず注意したいのがNSAIDs:エヌセイズと呼ばれる痛み止めです。NSAIDsは、痛みや炎症、発熱を抑える薬で、市販薬にも処方薬にも多く含まれています。代表的な成分には、以下のようなものがあります。
| 成分名 | よく使われる場面 |
|---|---|
| ロキソプロフェン | 頭痛、腰痛、関節痛、歯痛、生理痛 |
| イブプロフェン | 頭痛、発熱、生理痛、風邪薬 |
| アスピリン | 痛み、発熱、一部では血栓予防 |
| ジクロフェナク | 強い痛み、関節痛、腰痛 |
| ナプロキセン | 痛み、炎症 |
| セレコキシブ | 関節痛、腰痛などの処方薬 |
商品名としては、ロキソニンS、イブ、バファリン、ナロン、ボルタレンなどが知られています。ただし、同じブランド名でも種類によって成分が異なるため、必ず箱や説明書の「成分名」を確認することが大切です。
National Kidney Foundationは、NSAIDsが腎臓への血流を低下させ、急性腎障害やCKD悪化につながる可能性があると説明しています。特に、高用量、長期使用、腎機能低下がある人では注意が必要です。
ロキソニンやイブは絶対に飲んではいけない?
「腎機能が悪いと言われたら、ロキソニンやイブは絶対に禁止ですか?」とよく聞かれます。結論からいうと、自己判断で何日も続けて飲むのは避けた方がよいです。一方で、腎機能の程度、年齢、持病、脱水の有無、内服中の薬によってリスクは変わります。そのため、「一度も使ってはいけない」というよりも、使う前に医師・薬剤師に相談する薬と考えてください。
特に注意が必要なのは、次のような方です。
- eGFRが低いと言われた
- クレアチニンが高いと言われた
- 尿蛋白を指摘された
- 高齢である
- 高血圧、糖尿病、心不全がある
- 利尿薬、血圧の薬を飲んでいる
- 発熱、下痢、嘔吐、食欲低下で脱水気味
- 痛み止めを毎日のように飲んでいる
NSAIDsによる腎障害は、特に脱水や他の薬との組み合わせで起こりやすくなります。日本腎臓学会関連の文献でも、CKD患者へのNSAIDs使用は慎重に考えるべきで、代替薬としてアセトアミノフェンが選択肢になることが示されています。
腎機能低下の方で比較的使いやすい痛み止めは?
腎機能低下を指摘された方では、痛みや発熱に対してアセトアミノフェンが選択されることがあります。アセトアミノフェンは、NSAIDsとは作用の仕方が異なり、腎臓への血流低下を起こしにくい薬です。そのため、腎機能低下がある方の痛み止めとして使われることがあります。ただし、注意点もあります。
- 飲みすぎると肝臓に負担がかかる
- 市販の風邪薬にも含まれていることがある
- 複数の薬を重ねると過量になることがある
- 腎機能がかなり低い方では用量調整が必要な場合がある
つまり、「アセトアミノフェンならいくら飲んでも安全」ではありません。使う場合も、用量・回数を守り、長く続ける場合は医師に相談しましょう。
市販の風邪薬にも注意が必要です
腎機能低下を指摘された方は、痛み止めだけでなく、総合感冒薬、いわゆる風邪薬にも注意が必要です。市販の風邪薬には、複数の成分が入っています。たとえば、
- 解熱鎮痛薬
- 咳止め
- 鼻水止め
- 抗ヒスタミン薬
- カフェイン
- 生薬成分
などが組み合わさっています。
その中に、イブプロフェンなどのNSAIDsが含まれていることがあります。また、眠気、ふらつき、尿が出にくい、血圧が上がるなどの副作用が問題になることもあります。腎機能低下を指摘されている方は、風邪薬を選ぶときも、薬局で「腎機能が低いと言われています」と伝えてください。
胃薬・便秘薬・漢方薬にも注意が必要なことがあります
「痛み止め以外なら大丈夫」と思われがちですが、腎機能低下がある方では、胃薬や便秘薬、漢方薬にも注意が必要な場合があります。
胃薬
一部の胃薬は、長期間使用することで腎機能への影響が指摘されることがあります。特に、胃酸を強く抑える薬を長く飲んでいる場合は、定期的な腎機能チェックが大切です。
便秘薬
マグネシウムを含む便秘薬は、腎機能が低下している方では体内にマグネシウムがたまりやすくなることがあります。厚生労働省関連の情報でも、腎機能障害や腎不全がある場合、マグネシウムの過剰摂取には注意が必要とされています。
漢方薬・生薬
漢方薬は「自然のものだから安全」と思われがちですが、腎機能低下がある方では注意が必要です。特に、複数の漢方薬やサプリメントを併用している場合、成分が重複したり、血圧・カリウム・肝機能・腎機能に影響したりすることがあります。
腎機能低下で注意したい処方薬
処方薬の中にも、腎機能に応じて量を調整したり、定期的な採血が必要になったりする薬があります。代表的には、以下のような薬です。
| 薬の種類 | 注意点 |
|---|---|
| NSAIDs | 腎機能悪化、むくみ、血圧上昇に注意 |
| 一部の抗菌薬 | 腎機能に応じて量の調整が必要 |
| 利尿薬 | 脱水時に腎機能が悪化することがある |
| ACE阻害薬・ARB | 腎保護に使うこともあるが、脱水時や併用薬に注意 |
| SGLT2阻害薬 | 腎保護目的で使うこともあるが、脱水や体調不良時に注意 |
| メトホルミン | 腎機能に応じて使用可否を判断 |
| 一部の抗凝固薬 | 腎機能に応じた用量調整が必要 |
| 造影剤 | CT検査などで事前確認が必要 |
ここで大切なのは、腎臓に注意が必要な薬=悪い薬ではないということです。たとえば、血圧の薬や糖尿病の薬の中には、腎臓を守る目的で使われる薬もあります。自己判断で中止すると、かえって血圧や血糖が悪化し、腎臓に負担をかけることがあります。不安な薬がある場合は、自己判断でやめずに、医師や薬剤師に相談しましょう。
体調が悪い日は「いつもの薬」も注意が必要です
発熱、下痢、嘔吐、食欲低下、熱中症などで脱水気味のときは、腎臓への血流が低下しやすくなります。このようなときに、NSAIDsや利尿薬、一部の血圧の薬、糖尿病の薬などが重なると、急に腎機能が悪くなることがあります。次のような日は、早めに医療機関へ相談してください。
- 水分があまり取れない
- 尿の量が明らかに少ない
- 下痢や嘔吐が続いている
- 高熱がある
- 強いだるさがある
- むくみや息切れがある
- 痛み止めを飲みたいが腎機能が心配
腎機能低下で注意したいサプリメント
サプリメントは薬ではありませんが、腎機能が低下している方では注意が必要です。National Kidney Foundationは、腎臓病がある方では「腎臓デトックス」「腎臓クレンズ」などをうたうサプリやハーブティーを避けるよう注意しています。効果を裏づける証拠が限られ、薬との相互作用や腎臓への害が問題になることがあるためです。特に注意したいものを見ていきましょう。
1. クレアチン
筋トレや運動目的で使われるクレアチンは、腎機能低下を指摘された方では注意が必要です。クレアチンを摂取すると、採血で測定されるクレアチニン値に影響することがあります。また、腎機能が低下している方では、安全性を自己判断しにくいため、使用前に医師へ相談しましょう。
2. 高用量ビタミンC
ビタミンCは一般的な量であれば問題になりにくいですが、高用量のサプリメントを長期間摂取する場合は注意が必要です。ビタミンCは体内でシュウ酸に変わることがあり、腎結石や腎機能への影響が問題になることがあります。特に、腎機能低下がある方、尿路結石を繰り返している方は注意しましょう。
3. カリウム入りサプリ・青汁・電解質ドリンク
腎機能が低下すると、カリウムを尿に排泄しにくくなることがあります。カリウムが高くなりすぎると、不整脈など命に関わる状態につながることがあります。厚生労働省関連資料では、腎機能が正常でサプリメントなどを使わない限りカリウム過剰のリスクは低いとされていますが、これは逆に言えば、腎機能が低下している方やカリウム入りサプリを使う方では注意が必要ということです。特に、以下のようなものは確認が必要です。
- カリウム入りサプリ
- 電解質パウダー
- スポーツ系サプリ
- 青汁
- 野菜濃縮ドリンク
- 減塩食品に含まれるカリウム塩
「体によさそう」と思って続けているものが、腎機能の状態によっては合わないことがあります。
4. マグネシウムサプリ・便秘薬
マグネシウムは便秘薬やサプリメントに含まれることがあります。腎機能が低下していると、マグネシウムを体外に出しにくくなり、高マグネシウム血症を起こすことがあります。症状としては、だるさ、血圧低下、吐き気、意識障害、呼吸が弱くなるなどがあります。便秘薬を長く使っている方は、「酸化マグネシウム」などが含まれていないか確認しましょう。
5. プロテイン・高たんぱくサプリ
プロテインそのものが全員に危険というわけではありません。しかし、腎機能低下がある方では、たんぱく質の摂取量を調整した方がよい場合があります。特に、食事に加えてプロテインを毎日追加している場合、たんぱく質の摂取量が多くなりすぎることがあります。腎機能低下を指摘された方は、プロテインを始める前に、eGFR、尿蛋白、糖尿病や高血圧の有無を含めて相談しましょう。
6. 海外製サプリ・ダイエットサプリ・デトックス系商品
海外製サプリメントやダイエットサプリ、デトックス系商品は、成分がわかりにくいものもあります。また、医薬品成分が含まれていたり、利尿作用をうたっていたり、腎臓に負担をかける可能性がある成分が含まれていることもあります。特に、次のような表現には注意しましょう。
- 腎臓を洗い流す
- デトックス
- 老廃物を排出
- むくみを取る
- 強力ダイエット
- 海外で人気
- 医師不要
- 天然成分だから安全
「天然」「植物由来」「オーガニック」と書かれていても、腎臓に安全とは限りません。Mayo Clinicも、腎臓病がある方ではサプリメントが体内に蓄積したり、薬と相互作用したり、急性腎障害や長期的な腎機能悪化につながる可能性があると注意しています。
薬局や病院で必ず伝えてほしいこと
腎機能低下を指摘された方は、病院や薬局で次のことを伝えると安全性が高まります。
- 健診で腎機能低下を指摘された
- eGFRやクレアチニンの値
- 尿蛋白の有無
- 現在飲んでいる薬
- 市販薬の使用状況
- サプリメントや健康食品
- 痛み止めをどのくらい使っているか
- 脱水、下痢、発熱があるか
可能であれば、お薬手帳だけでなく、サプリメントの写真や商品名も見せるとよいでしょう。
受診をおすすめする症状
腎機能低下を指摘されている方で、次のような症状がある場合は早めに受診してください。
- 尿の量が少ない
- 尿が泡立つ
- 血尿がある
- むくみが強い
- 息切れがある
- 血圧が急に高くなった
- 強いだるさが続く
- 食欲がない
- 痛み止めを何日も飲んでいる
- 健診でeGFR低下や尿蛋白を指摘された
腎機能低下は、初期には自覚症状が少ないことが多いです。そのため、採血や尿検査で早めに確認することが大切です。
まとめ:腎機能低下を指摘されたら、市販薬とサプリも確認しましょう
腎機能低下を指摘された方は、食事や生活習慣だけでなく、市販薬・痛み止め・サプリメントにも注意が必要です。特に注意したいのは、以下のものです。
- ロキソプロフェン、イブプロフェンなどのNSAIDs
- 総合感冒薬に含まれる解熱鎮痛成分
- マグネシウムを含む便秘薬やサプリ
- カリウム入りサプリ、青汁、電解質ドリンク
- クレアチン、プロテイン、高用量ビタミンC
- デトックス系、海外製、成分不明のサプリメント
ただし、処方薬の中には腎臓を守るために必要な薬もあります。自己判断で薬を中止するのではなく、医師や薬剤師に相談しながら安全に使うことが大切です。健康診断で腎機能低下、eGFR低下、クレアチニン高値、尿蛋白を指摘された方は、一度ご相談ください。
FAQ
Q. 腎機能が低いと言われたら、ロキソニンは飲んではいけませんか?
自己判断で何日も続けて飲むことはおすすめしません。腎機能の程度や脱水の有無、他の薬との組み合わせでリスクが変わるため、使用前に医師・薬剤師へ相談しましょう。
Q. 腎臓にやさしい痛み止めはありますか?
腎機能低下がある方では、NSAIDsよりもアセトアミノフェンが選ばれることがあります。ただし、飲みすぎると肝臓に負担がかかるため、用量を守ることが大切です。
Q. 市販の風邪薬は飲んでも大丈夫ですか?
市販の風邪薬には、NSAIDsや眠気を起こす成分などが含まれていることがあります。腎機能低下を指摘されている方は、購入時に薬剤師へ相談しましょう。
Q. サプリメントなら薬ではないので安全ですか?
安全とは限りません。カリウム、マグネシウム、クレアチン、高用量ビタミンC、海外製サプリ、デトックス系商品などは注意が必要です。
Q. 腎機能低下で薬を飲んでいる場合、何を持って受診すればよいですか?
お薬手帳、健診結果、採血結果、尿検査結果、市販薬やサプリメントの写真・商品名を持参すると相談しやすくなります。
参考文献
本記事は、以下の公的機関・専門機関の情報を参考に作成しています。
-
- 日本腎臓学会「腎臓検診でわかること」
https://jsn.or.jp/general/kidneydisease/symptoms02.php - 厚生労働省「慢性腎臓病(CKD)ってなぁに?」
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202503_004.html - 厚生労働省「腎疾患対策」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/jinshikkan/index.html - PMDA「酸化マグネシウム製剤 適正使用に関するお願い」
https://www.pmda.go.jp/files/000235889.pdf
- 日本腎臓学会「腎臓検診でわかること」
