片頭痛の新しい治療薬「CGRP関連薬」とは?注射・内服の効果、副作用、使い方を医師が解説

薬について

「片頭痛はいつものことだから仕方ない」「市販薬やトリプタンで何とか我慢している」――そのように感じている方は少なくありません。しかし近年、片頭痛治療は大きく変わってきています。特に注目されているのが、片頭痛の発作に深く関わるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)を標的にしたCGRP関連薬です。これまでは、エムガルティ®、アジョビ®、アイモビーグ®などの注射による予防薬が中心でしたが、最近では内服薬のナルティークOD錠®(一般名:リメゲパント)も発売され、片頭痛治療は「注射だけ」ではなく、飲み薬も含めて選べる時代になってきました。

この記事でわかること

  • CGRPとは何か、なぜ片頭痛に関係するのか
  • CGRP関連薬の種類:注射薬と内服薬の違い
  • ナルティークOD錠®という新しい内服薬の特徴
  • どのような片頭痛患者さんが対象になるのか
  • 副作用、注意点、費用の目安
  • 片頭痛で受診した方がよいタイミング
片頭痛とは?症状・原因・治し方・予防薬・食べ物まで医師が解説
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1.片頭痛治療は「発作を止める治療」と「発作を減らす治療」に分けて考えます

片頭痛の治療は、大きく分けて2つあります。

治療の種類 目的 代表的な薬
急性期治療 起きてしまった片頭痛発作を早く楽にする NSAIDs、アセトアミノフェン、トリプタン、ラスミジタン、ナルティークOD錠®など
予防療法・発症抑制 片頭痛の回数・強さ・生活への支障を減らす ロメリジン、バルプロ酸、プロプラノロール、CGRP関連抗体製剤、ナルティークOD錠®、アクイプタ®など

片頭痛が月に何回も起こる方、頭痛のために仕事・家事・学校生活に支障が出ている方、痛み止めを頻回に使っている方では、発作時だけの対応ではなく、片頭痛そのものを起こりにくくする予防療法を考えることが大切です。頭痛診療ガイドラインでは、片頭痛発作が月に2回以上ある場合、または生活に支障をきたす頭痛が月に3日以上ある場合には、予防療法を検討することが推奨されています。


2.CGRPとは?|片頭痛の痛みに深く関わる物質です

CGRPとは、calcitonin gene-related peptide(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)の略です。CGRPは、神経から放出される物質のひとつで、片頭痛発作のときに増加し、以下のような反応に関わると考えられています。

  • 三叉神経を介した痛みの伝達
  • 血管周囲の炎症反応
  • 痛みの過敏化
  • 片頭痛発作の持続

つまり、CGRPは片頭痛の「痛みのスイッチ」に近い役割を持っています。従来の片頭痛予防薬は、血圧の薬、てんかんの薬、抗うつ薬などを片頭痛予防に応用する形が多く、副作用や眠気、ふらつき、体重増加などで続けにくいこともありました。一方、CGRP関連薬は、片頭痛の病態に関わるCGRPまたはCGRP受容体を狙って作用する薬です。そのため、片頭痛により特化した治療薬として注目されています。


3.CGRP関連薬の種類|注射薬だけでなく、内服薬も登場しました

CGRP関連薬は、大きく分けて以下の2種類があります。

  • CGRP関連抗体製剤:注射で使う予防薬
  • 経口CGRP受容体拮抗薬(ゲパント):飲み薬として使う新しいタイプの薬
分類 薬剤名 一般名 主な使い方 投与方法 特徴
CGRP関連抗体製剤 エムガルティ® ガルカネズマブ 片頭痛発作の発症抑制 皮下注射 初回は2本、その後は月1回の注射
CGRP関連抗体製剤 アジョビ® フレマネズマブ 片頭痛発作の発症抑制 皮下注射 4週に1回、または12週に1回投与
CGRP関連抗体製剤 アイモビーグ® エレヌマブ 片頭痛発作の発症抑制 皮下注射 CGRP受容体を標的にする月1回注射
経口CGRP受容体拮抗薬 ナルティークOD錠® リメゲパント 急性期治療・発症抑制 内服 日本で初めて急性期治療と予防の両方に使える経口CGRP関連薬
経口CGRP受容体拮抗薬 アクイプタ® アトゲパント 片頭痛発作の発症抑制 内服 1日1回内服する予防専用のCGRP受容体拮抗薬

以前は「CGRPの薬=高価な注射」というイメージがありましたが、現在は注射が苦手な方、通院頻度を減らしたい方、発作時にも使える薬を希望する方にとって、内服薬という新しい選択肢が加わっています。なお、海外では点滴で投与するエプチネズマブ(ヴァイエプティ®)も使用されていますが、日本では承認申請段階の情報があり、国内での使用可否は最新情報の確認が必要です。


4.ナルティークOD錠®とは?|発作時にも予防にも使える内服CGRP関連薬

ナルティークOD錠®(一般名:リメゲパント)は、経口CGRP受容体拮抗薬に分類される片頭痛治療薬です。大きな特徴は、片頭痛発作が起きたときの急性期治療と、片頭痛を起こりにくくする発症抑制の両方に使えることです。

ナルティークOD錠®の使い方

使用目的 使い方 ポイント
急性期治療 片頭痛発作時に1回75mgを内服 発作が起きたときに使用します
発症抑制 75mgを隔日で内服 片頭痛を起こりにくくする目的で継続します

ナルティークOD錠®は口腔内崩壊錠で、舌の上または舌下で唾液により溶かして服用する薬です。水なしで服用できる点も特徴です。ただし、1日あたり75mgを超えて服用しないことが重要です。急性期治療と予防の使い方を自己判断で組み合わせると、過量になる可能性があります。必ず医師の指示に従ってください。

トリプタンと何が違う?

片頭痛の急性期治療では、これまでトリプタン製剤がよく使われてきました。トリプタンは有効な薬ですが、血管収縮作用があるため、心血管疾患のリスクがある方では使いにくい場合があります。ナルティークOD錠®などのゲパント系薬剤は、CGRP受容体をブロックする薬であり、トリプタンとは作用機序が異なります。そのため、これまでの片頭痛薬が合わなかった方にとって、新たな選択肢になる可能性があります。ただし、すべての方に安全に使えるわけではありません。肝機能障害、腎機能障害、併用薬、妊娠・授乳の可能性などを含めて、医師が総合的に判断します。


5.CGRP関連抗体製剤はどんな人に使える?|適応と使用を考える目安

CGRP関連抗体製剤は、すべての片頭痛患者さんに最初から使う薬ではありません。一般的には、以下のような方で検討されます。

  • 前兆のある片頭痛、または前兆のない片頭痛と診断されている
  • 片頭痛発作が月に複数回以上ある
  • 慢性片頭痛である
  • 頭痛のために仕事・学校・家事・育児に支障が出ている
  • 急性期治療や生活指導を行っても十分に改善しない
  • 既存の予防薬で効果不十分、または副作用で継続が難しい
  • 薬の使いすぎによる頭痛が心配される

特に、片頭痛日数が多い方では、頭痛薬を何度も使うことで薬剤の使用過多による頭痛につながることがあります。「痛くなったら薬を飲む」を繰り返すだけでなく、頭痛の回数が多い場合には、そもそも片頭痛発作を減らす治療を考えることが大切です。


6.CGRP関連薬の効果|どのくらい片頭痛が減る?

CGRP関連抗体製剤や経口CGRP受容体拮抗薬は、臨床試験で片頭痛日数の減少が示されている薬です。ただし、「完全に頭痛がゼロになる薬」というよりは、以下のような効果を目指す治療です。

  • 片頭痛の日数を減らす
  • 発作の強さを軽くする
  • 発作時の薬の使用回数を減らす
  • 頭痛による仕事・家事・学校生活への支障を減らす
  • 「また頭痛が来るかも」という不安を減らす

効果の判定には、頭痛ダイアリーが非常に役立ちます。

頭痛ダイアリーで記録したい項目

  • 頭痛があった日
  • 痛みの強さ
  • 吐き気、光過敏、音過敏の有無
  • 服用した薬
  • 薬が効いたかどうか
  • 仕事・家事・学校を休んだか
  • 睡眠不足、月経、天候、飲酒などの誘因

CGRP関連薬を開始した場合も、数週間から数か月単位で頭痛日数や生活への支障がどの程度変わったかを確認しながら、継続するかどうかを判断します。


7.副作用と注意点|比較的使いやすい薬ですが、注意は必要です

CGRP関連薬は、従来の予防薬と比べて眠気やふらつきなどが少ない傾向がありますが、副作用がないわけではありません。

CGRP関連抗体製剤でみられることがある副作用

  • 注射部位の痛み、赤み、腫れ
  • かゆみ、発疹
  • 便秘
  • 倦怠感
  • まれにアレルギー反応

特にアイモビーグ®などでは便秘に注意が必要です。もともと便秘が強い方は、事前に医師へ伝えておくとよいでしょう。

ナルティークOD錠®で注意したい副作用・相互作用

ナルティークOD錠®では、以下のような副作用や注意点があります。

  • 便秘、悪心、下痢、腹部不快感
  • めまい、眠気、倦怠感
  • 発疹、かゆみ、蕁麻疹などの過敏症
  • 肝機能異常
  • 一部の抗菌薬、抗真菌薬、抗ウイルス薬などとの相互作用
  • 重い肝機能障害・腎機能障害がある方では注意

クラリスロマイシン、イトラコナゾール、リトナビル、リファンピシン、セント・ジョーンズ・ワート含有食品などは、薬の血中濃度に影響する可能性があります。現在飲んでいる薬、サプリメント、漢方薬がある方は、診察時に必ず伝えてください。


8.費用の目安|注射薬も内服薬も月1万円台になることがあります

CGRP関連薬は保険適用で使用できる薬ですが、薬価が高めです。実際の自己負担は、保険の負担割合、診察料、処方料、調剤料、自己注射指導料などによって変わります。以下は、薬剤費を中心にした3割負担の大まかな目安です。薬価改定により変わる可能性があるため、実際の費用は医療機関・薬局で確認してください。

薬剤 使い方 3割負担の薬剤費目安 補足
エムガルティ® 初回2本、その後月1回 初回 約25,000円台、以後 約12,000円台 初回のみローディングドーズがあります
アジョビ® 4週に1回、または12週に1回 4週に1回で約11,000〜12,000円台 12週に1回の場合は1回の支払いが大きくなります
アイモビーグ® 4週に1回 約11,000〜12,000円台 月1回の皮下注射です
ナルティークOD錠® 発作時に1錠 1錠あたり約880円 急性期治療として使う場合
隔日内服 月約13,000円前後 発症抑制として使う場合
アクイプタ® 1日1回内服 用量により異なりますが、60mgでは月約13,000円前後 予防専用の内服薬です

「注射は高いけれど、飲み薬ならかなり安い」というわけではなく、予防目的で使う場合は、内服薬でも月1万円台になることがあります。そのため、治療効果、生活への支障、通院頻度、自己注射への抵抗感、費用負担などを総合的に考えて、患者さんごとに治療を選ぶことが大切です。


9.注射薬と内服薬、どちらがよい?|選び方の考え方

CGRP関連薬には、注射薬と内服薬があります。どちらが優れているというより、患者さんの片頭痛のタイプや生活スタイルによって向き不向きがあります。

治療の希望・状況 考えやすい選択肢
毎日薬を飲むのが苦手 月1回または数か月ごとの注射薬
注射が苦手 ナルティークOD錠®、アクイプタ®などの内服薬
発作時にも使える薬がほしい ナルティークOD錠®
片頭痛の回数が多く、予防をしっかりしたい CGRP関連抗体製剤、ナルティークOD錠®、アクイプタ®など
既存の予防薬で眠気・ふらつき・体重増加がつらかった CGRP関連薬を検討
費用が心配 既存予防薬も含めて段階的に相談

医師として特に大切だと考えるのは、「頭痛の回数」だけでなく「生活への支障」も評価することです。月に数回でも、毎回寝込む、仕事を休む、家事や育児が止まる、予定をキャンセルするという状況であれば、予防療法を検討する価値があります。


10.片頭痛で受診した方がよいタイミング

片頭痛はよくある病気ですが、生活への影響は非常に大きい病気です。以下のような場合は、一度医療機関で相談することをおすすめします。

  • 月に2回以上、片頭痛発作がある
  • 頭痛のために仕事・学校・家事を休むことがある
  • 市販薬を月に何度も使っている
  • トリプタンが効きにくい、または副作用で使いにくい
  • 吐き気、光過敏、音過敏が強い
  • 頭痛の頻度が以前より増えている
  • 妊娠希望・妊娠中・授乳中で薬の選び方に悩んでいる
  • 「新しい片頭痛治療薬について相談したい」と思っている

また、以下のような頭痛は片頭痛ではなく、脳出血、脳梗塞、髄膜炎、脳腫瘍などの病気が隠れていることがあります。すぐに医療機関を受診してください。

危険な頭痛のサイン

  • 突然起こった、これまでで最悪の頭痛
  • 手足の麻痺、ろれつが回らない、視野が欠ける
  • 発熱、首の硬さ、意識がぼんやりする
  • 頭を打った後から続く頭痛
  • 50歳以降に初めて出てきた強い頭痛
  • がん、免疫低下、妊娠中・産後に起こる新しい頭痛

11.まとめ|片頭痛は「我慢する病気」から「予防して付き合う病気」へ

CGRP関連薬の登場により、片頭痛治療は大きく進歩しています。

  • CGRPは片頭痛発作に深く関わる物質です
  • CGRP関連抗体製剤は、片頭痛を起こりにくくする注射の予防薬です
  • エムガルティ®、アジョビ®、アイモビーグ®などがあります
  • ナルティークOD錠®は、急性期治療と発症抑制の両方に使える内服薬です
  • アクイプタ®のような予防専用の内服CGRP受容体拮抗薬も登場しています
  • 費用は月1万円台になることがあり、効果と負担のバランスを考える必要があります
  • 頭痛ダイアリーをつけることで、治療効果を判断しやすくなります

片頭痛は、命に関わることは少ない一方で、生活の質を大きく下げる病気です。「いつもの頭痛だから」と我慢している方の中にも、治療を見直すことで、頭痛の日数や薬の使用回数を減らせる方がいます。片頭痛でお困りの方、これまでの薬が合わなかった方、CGRP関連薬やナルティークOD錠®について相談したい方は、医療機関で一度ご相談ください。


参考文献・出典

  1. 日本頭痛学会:CGRP関連新規片頭痛治療薬ガイドライン(暫定版)
  2. 日本神経学会・日本頭痛学会・日本神経治療学会:頭痛の診療ガイドライン2021
  3. 厚生労働省:最適使用推進ガイドライン ガルカネズマブ(遺伝子組換え)
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