溶連菌感染症とは?症状・治療・登園登校の目安と人食いバクテリアとの違いを医師が解説

こどもの症状

1.溶連菌感染症とは?

溶連菌感染症とは、主にA群β溶血性レンサ球菌という細菌によって起こる感染症です。医学的には「A群溶血性レンサ球菌感染症」と呼ばれます。子どもに多い感染症ですが、大人にも感染することがあります。特に多いのは、のどの痛みや発熱を起こす咽頭炎・扁桃炎です。そのほか、皮膚の感染症、猩紅熱(しょうこうねつ)、まれに腎炎やリウマチ熱などの合併症につながることもあります。

この記事でわかること

  • 溶連菌感染症の主な症状
  • 風邪との違いと検査のタイミング
  • 抗菌薬による治療方法と治療期間
  • 登園・登校はいつから可能か
  • 溶連菌感染後の腎炎に注意すべき症状
  • 人食いバクテリアと呼ばれるSTSSとの違い
  • 受診した方がよいサイン

溶連菌はどうやってうつる?

溶連菌は、主に飛沫感染接触感染で広がります。

  • 咳やくしゃみ、会話による飛沫
  • 唾液がついた手やタオル、食器
  • 皮膚の傷やとびひなどの分泌物

保育園、幼稚園、小学校など、子ども同士が近い距離で過ごす環境では流行しやすい感染症です。潜伏期間は一般的に2〜5日程度です。


2.溶連菌感染症の主な症状

溶連菌感染症で最も多いのは、のどに感染するタイプです。いわゆる「溶連菌性咽頭炎」「溶連菌性扁桃炎」と呼ばれる状態です。

主な症状 特徴
のどの強い痛み 飲み込むと痛い、食事や水分がとりにくいことがあります。
発熱 38℃以上の発熱が急に出ることがあります。
扁桃の腫れ・白い膿 のどの奥が赤くなり、扁桃に白い膿がつくことがあります。
首のリンパ節の腫れ 首の前側のリンパ節が腫れて痛むことがあります。
頭痛・腹痛・吐き気 特に子どもでは、のどの症状より腹痛や吐き気が目立つこともあります。
いちご舌 舌が赤く、ぶつぶつして見えることがあります。
発疹 細かい赤い発疹が出ることがあり、猩紅熱と呼ばれます。

風邪との違いは?

溶連菌感染症では、強いのどの痛み・発熱・首のリンパ節の腫れが目立つことが多いです。一方で、一般的なウイルス性の風邪では、咳・鼻水・鼻づまりが目立つことがよくあります。

ポイント:「咳や鼻水が少ないのに、急に高熱とのどの痛みが出た」という場合は、溶連菌感染症を疑うきっかけになります。


3.猩紅熱とは?

猩紅熱とは、溶連菌感染症の一部で、発熱やのどの痛みに加えて、全身に細かい赤い発疹が出る状態です。発疹は、触ると紙やすりのようにザラザラすることがあります。また、舌が赤くぶつぶつして見える「いちご舌」がみられることもあります。以前は重い病気として恐れられていましたが、現在は適切な抗菌薬治療で改善が期待できる病気です。発疹があるからといって必ず重症というわけではありませんが、溶連菌感染症としてしっかり診断・治療することが大切です。


4.溶連菌感染症の検査と診断

溶連菌感染症が疑われる場合、医療機関では症状やのどの所見を確認し、必要に応じて検査を行います。

迅速抗原検査

綿棒でのどをこすって検体を採取し、溶連菌がいるかどうかを調べる検査です。多くの場合、10分前後で結果がわかります

咽頭培養検査

迅速検査で判断が難しい場合や、症状が強いのに迅速検査が陰性の場合などに行われることがあります。結果が出るまでに時間はかかりますが、より詳しく確認できます。

血液検査は必要?

通常の溶連菌性咽頭炎では、毎回血液検査が必要なわけではありません。ただし、症状が強い場合、脱水が疑われる場合、重症感染症や合併症が心配な場合には、血液検査や尿検査を行うことがあります。


5.溶連菌感染症の治療方法

溶連菌感染症は細菌感染のため、治療の中心は抗菌薬(抗生物質)です。抗菌薬には、次のような目的があります。

  • 症状を早く改善する
  • 周囲への感染を減らす
  • リウマチ熱などの合併症を予防する
  • 再発や菌の残存を防ぐ

主な治療薬と治療期間

薬の種類 使われ方 治療期間の目安
ペニシリン系 アモキシシリンなど。溶連菌感染症の基本となる薬です。 一般的に10日間
セフェム系 症状や年齢、薬の飲みやすさに応じて使われることがあります。 薬の種類により異なります
マクロライド系 ペニシリンアレルギーがある場合などに検討されます。 薬の種類により異なります

症状は抗菌薬を開始して1〜2日で改善してくることが多いですが、症状がよくなったからといって途中で薬をやめないことが大切です。

薬は「最後まで飲み切る」ことが大切です

途中でやめると、菌が残ったり、再発したり、合併症予防が不十分になる可能性があります。飲み忘れや飲みにくさがある場合は、自己判断で中止せず医師に相談しましょう。

家庭でできる対処法

  • 水分をこまめにとる
  • のどが痛いときは、ゼリー・プリン・スープ・うどんなど飲み込みやすいものにする
  • 発熱や痛みがつらいときは、医師の指示に沿って解熱鎮痛薬を使う
  • タオル、コップ、箸、スプーンの共有を避ける
  • 手洗い、咳エチケットを意識する

のどが痛くて食べられない場合でも、水分がとれていて尿が出ていれば、数日は柔らかい食事中心でも大きな問題はありません。水分がとれない、尿が少ない、ぐったりしている場合は早めに受診しましょう。


6.登園・登校はいつからできる?

溶連菌感染症では、適切な抗菌薬治療を開始すると感染力は下がっていきます。一般的には、抗菌薬開始後24時間以上が経過し、発熱がなく、全身状態がよければ登園・登校を検討できます。保育園や幼稚園では、施設ごとに「登園届」や「医師の意見書」が必要な場合があります。園や学校のルールも確認しましょう。

状況 登園・登校の目安
抗菌薬をまだ開始していない 感染力があるため、登園・登校は控えます。
抗菌薬開始から24時間未満 まだ感染力が残る可能性があるため、休むのが安心です。
抗菌薬開始後24時間以上経過 解熱し、元気があり、食事や水分がとれていれば登園・登校を検討できます。
発熱が続く、ぐったりしている 登園・登校は控え、再受診を検討しましょう。

注意:登園・登校できる状態になっても、処方された抗菌薬は最後まで飲み切りましょう。


7.溶連菌感染症の合併症

溶連菌感染症は、多くの場合、適切な治療でよくなる感染症です。ただし、治療が不十分だった場合や、体の免疫反応によって、まれに合併症が起こることがあります。

主な合併症

合併症 特徴
中耳炎・副鼻腔炎 耳の痛み、鼻づまり、膿のような鼻水が続くことがあります。
扁桃周囲膿瘍 のどの片側が強く腫れ、口が開けにくい、声がこもるなどの症状が出ます。
急性リウマチ熱 関節痛、発熱、心臓の炎症などを起こすことがあります。日本では少なくなっていますが、予防のためにも治療が大切です。
溶連菌感染後急性糸球体腎炎 感染から少し遅れて、血尿・むくみ・尿量低下・高血圧などが出ることがあります。

8.溶連菌感染後の腎炎とは?

溶連菌感染症のあとに注意したい合併症のひとつが、溶連菌感染後急性糸球体腎炎です。これは、溶連菌そのものが腎臓に直接感染するというより、感染後の免疫反応によって腎臓のフィルターである糸球体に炎症が起こる病気です。

いつごろ起こる?

のどの溶連菌感染症では、感染後1〜3週間程度してから症状が出ることがあります。皮膚の溶連菌感染症では、もう少し遅れて起こることもあります。

腎炎を疑うサイン

  • 尿が赤い、茶色い、コーラ色に見える
  • まぶたや顔、手足がむくむ
  • 尿の回数や量が明らかに少ない
  • 体重が急に増える
  • 頭痛、吐き気、だるさが強い
  • 血圧が高いと言われた

溶連菌のあと、こんな症状があれば相談を

抗菌薬を飲み終わって元気になったあとでも、1〜3週間以内に血尿・むくみ・尿量低下が出た場合は、早めに医療機関へ相談してください。

溶連菌後は全員が尿検査を受けるべき?

以前は、溶連菌感染症のあとに「念のため尿検査」を行うことがよくありました。しかし現在は、地域や医療機関によって考え方が異なります。大切なのは、すべての人に一律で尿検査が必要と考えるよりも、血尿・むくみ・尿量低下などの症状を見逃さないことです。もちろん、腎炎が心配な場合、過去に腎臓の病気がある場合、症状がはっきりしない場合には、尿検査を行うことがあります。気になる症状があれば遠慮なく相談しましょう。

腎炎になった場合の治療

溶連菌感染後急性糸球体腎炎の治療は、腎臓の状態や症状の強さによって異なります。

  • 安静
  • 塩分や水分の調整
  • 血圧が高い場合の治療
  • むくみが強い場合の利尿薬
  • 必要に応じた血液検査・尿検査での経過観察
  • 症状が強い場合は入院管理

子どもの溶連菌感染後腎炎は、多くの場合で予後は良好とされています。ただし、高血圧や腎機能低下を伴う場合は慎重な経過観察が必要です。


9.人食いバクテリアと溶連菌感染症の関係

ニュースなどで「人食いバクテリア」という言葉を聞いて、不安になる方もいるかもしれません。この言葉は、主に劇症型溶血性レンサ球菌感染症を指して使われることがあります。劇症型溶血性レンサ球菌感染症は、溶連菌などのレンサ球菌が体の深い部分や血液に入り、急激に重症化することがある病気です。ただし、ここで大切なのは、通常の溶連菌性咽頭炎と劇症型溶血性レンサ球菌感染症は同じように考える病気ではないということです。

過度に心配しすぎなくて大丈夫です

のどの痛みや発熱で見つかる一般的な溶連菌感染症の多くは、外来で診断し、抗菌薬で治療できます。STSSはまれな重症感染症であり、通常の溶連菌感染症とは症状の出方や緊急性が大きく異なります。

STSSを疑う危険なサイン

頻度は高くありませんが、次のような症状がある場合は、通常ののど風邪や溶連菌咽頭炎とは違う可能性があります。

  • 手足の強い痛みや腫れが急に出てきた
  • 皮膚が急に赤く腫れ、強い痛みがある
  • 高熱に加えて、ぐったりしている
  • 意識がぼんやりしている
  • 息苦しい
  • 冷や汗、顔色不良、ふらつきがある
  • 症状の進み方が明らかに速い

このような場合は、夜間や休日であっても救急受診を検討してください。

通常の溶連菌感染症とSTSSの違い

項目 通常の溶連菌感染症 STSS
主な部位 のど、扁桃、皮膚など 血液、筋膜、深い皮下組織など
症状 のどの痛み、発熱、発疹など 強い手足の痛み、腫れ、血圧低下、意識障害など
治療 外来で抗菌薬治療が可能なことが多い 入院、点滴抗菌薬、集中治療、手術が必要になることがある
頻度 子どもによくみられる まれな重症感染症

「溶連菌=人食いバクテリア」と考える必要はありません。大切なのは、通常の溶連菌感染症をきちんと治療し、まれな重症化サインを知っておくことです。


10.受診した方がよい症状

次のような症状がある場合は、溶連菌感染症の可能性があります。医療機関で相談しましょう。

  • 急な発熱とのどの強い痛み
  • 咳や鼻水は少ないのに、のどの痛みが強い
  • 首のリンパ節が腫れて痛い
  • 扁桃に白い膿がついている
  • 舌が赤くぶつぶつしている
  • 細かい赤い発疹が出ている
  • 家族や園・学校で溶連菌が流行している

早めに受診・救急相談した方がよい症状

  • 水分がとれない
  • 尿が半日以上ほとんど出ない
  • ぐったりして反応が悪い
  • 呼吸が苦しそう
  • 首が強く腫れている、口が開けにくい
  • 手足の強い痛みや腫れが急に出てきた
  • 溶連菌感染後に血尿・むくみ・尿量低下が出た

11.よくある質問

Q1.溶連菌は大人にもうつりますか?

はい。子どもに多い感染症ですが、大人にも感染します。家庭内で子どもから保護者にうつることもあります。大人の場合ものどの痛み、発熱、だるさが強いときは受診を検討しましょう。

Q2.溶連菌は何度もかかりますか?

かかることがあります。溶連菌には複数のタイプがあり、一度かかれば一生かからないという病気ではありません。

Q3.家族も検査した方がいいですか?

症状がない家族全員に検査が必要とは限りません。ただし、発熱やのどの痛みがある場合、家族内で繰り返し感染している場合、基礎疾患がある場合などは医師に相談してください。

Q4.薬を飲み始めたらすぐ登園していいですか?

一般的には、抗菌薬を開始して24時間以上が経過し、熱が下がり、元気があることが目安です。ただし、園や学校のルール、医師の指示に従ってください。

Q5.溶連菌のあとに尿検査は必ず必要ですか?

必ず全員に必要とは限りません。大切なのは、感染後1〜3週間ほどの間に、血尿・むくみ・尿量低下などがないか注意することです。心配な場合や症状がある場合は尿検査を行います。

Q6.人食いバクテリアになるのが心配です

通常の溶連菌性咽頭炎の多くは、外来で診断・治療できる感染症です。STSSはまれな重症感染症で、症状の出方が通常の溶連菌感染症とは異なります。強い手足の痛み、急速な腫れ、ぐったりする、意識がぼんやりするなどがなければ、過度に心配しすぎる必要はありません。


12.まとめ

  • 溶連菌感染症は、A群溶血性レンサ球菌による感染症です。
  • 主な症状は、急な発熱、のどの強い痛み、扁桃の腫れ、首のリンパ節の腫れです。
  • 治療は抗菌薬が中心で、処方された期間を最後まで飲み切ることが大切です。
  • 登園・登校は、抗菌薬開始後24時間以上が経過し、解熱して元気があることが目安です。
  • 感染後1〜3週間は、血尿・むくみ・尿量低下など腎炎のサインに注意しましょう。
  • 人食いバクテリアと呼ばれるSTSSはまれな重症感染症で、通常の溶連菌咽頭炎とは区別して考える必要があります。

溶連菌感染症は、正しく診断して適切に治療すれば、多くは問題なく回復します。のどの痛みや発熱が強い場合、園や学校で流行している場合、治療後に気になる症状が出た場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。


参考文献

  1. 国立健康危機管理研究機構:A群溶血性レンサ球菌感染症
  2. 厚生労働省:劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)
  3. 国立成育医療研究センター:溶連菌(A群レンサ球菌)感染症
  4. 日本小児科学会:学校、幼稚園、保育所において予防すべき感染症の解説
  5. CDC:Clinical Guidance for Group A Streptococcal Pharyngitis
  6. CDC:Clinical Guidelines for Post-Streptococcal Glomerulonephritis
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