「食事をするとすぐにお腹が張る」
「ガスが多く、下痢や便秘を繰り返している」
「腸活のために発酵食品や食物繊維を増やしたら、かえってお腹が苦しくなった」
このような症状について調べるうちに、SIBO(シーボ)という言葉を知った方もいるのではないでしょうか。SIBOは、英語の「Small Intestinal Bacterial Overgrowth」の略で、日本語では小腸内細菌異常増殖症と呼ばれます。小腸内の微生物が異常に増えたり、その構成が変化したりすることで、腹部膨満、ガス、腹痛、下痢、便秘、栄養吸収不良などを生じる病態です。一方で、SIBOには「本当に存在する病気なのか」「呼気検査でどこまで正確に診断できるのか」といった議論もあります。インターネット上では、さまざまな症状をすべてSIBOで説明したり、高額な検査やサプリメントを勧めたりする情報も見られるため、注意が必要です。
この記事では、SIBOとはどのような病態なのか、SIBOという概念は医学的に認められているのか、原因、診断、治療、腸活との関係、日常生活でできる対策まで、最新の知見をもとにわかりやすく解説します。
この記事のポイント
- SIBOは医学的に認められている病態ですが、定義や診断方法には課題があります。
- 腹部膨満や下痢だけでSIBOとは診断できません。
- 呼気検査は有用な一方、偽陽性・偽陰性があり、結果だけで判断するのは危険です。
- 治療では抗菌薬だけでなく、腸管運動障害や手術後の構造変化など、背景にある原因への対応が重要です。
- 発酵食品、食物繊維、プロバイオティクスが、すべての人のSIBOに有効とは限りません。
1.SIBO(小腸内細菌異常増殖症)とは?
SIBOとは、小腸内に存在する微生物の数や種類が変化し、それによって消化器症状や栄養吸収障害が起こる病態です。胃や小腸にも細菌は存在していますが、一般的には大腸に比べると菌の数は少なく保たれています。これは、胃酸、胆汁、膵液、免疫機能、腸の蠕動運動、回盲弁などが、細菌の過剰な増殖や大腸からの逆流を防いでいるためです。こうした防御機構が崩れると、小腸内で細菌が増え、食事に含まれる糖質などを本来より早い段階で発酵させます。その結果、水素や二酸化炭素などのガスが発生し、お腹の張りや腹痛、放屁の増加などが起こることがあります。さらに、細菌が胆汁酸を変化させたり、栄養素を消費したりすると、脂肪やビタミンなどの吸収が妨げられ、下痢、体重減少、貧血、ビタミン欠乏などにつながることがあります。
2.SIBOという概念は本当に存在するのか?
結論からいうと、SIBOという病態そのものは医学的に存在します。特に、消化管手術後の盲係蹄、腸管狭窄、小腸憩室、強皮症などによる高度な腸管運動障害がある患者さんでは、小腸内の細菌増殖によって吸収不良や栄養障害が起こることが以前から知られています。米国消化器病学会や米国消化器病協会なども、SIBOに関する診療指針や専門家レビューを公表しています。そのため、「SIBOは医学的に存在しない架空の病気」という理解は正確ではありません。
SIBOの定義と診断には曖昧さが残っている
一方で、SIBOの定義、検査方法、陽性基準、症状との因果関係については、現在も議論が続いています。問題となるのは、腹部膨満、腹痛、下痢、便秘などが、SIBOだけに特有の症状ではないことです。これらは、過敏性腸症候群、機能性ディスペプシア、便秘症、乳糖不耐症、セリアック病、炎症性腸疾患などでも起こります。また、よく用いられる呼気検査にも偽陽性や偽陰性があり、呼気検査が陽性だったからといって、その人の症状の原因が必ずSIBOであるとは限りません。とくに近年は、過敏性腸症候群などのよくある腹部症状に対してSIBOという診断が広く使われすぎている可能性が指摘されています。
SIBOを正しく理解するポイント
SIBOは実在する病態ですが、「お腹が張る=SIBO」「呼気検査が陽性=すべての症状の原因はSIBO」と単純に判断することはできません。症状、基礎疾患、手術歴、薬剤、栄養状態、検査結果を総合して判断する必要があります。
3.SIBOとIMOの違い
SIBOと一緒に知っておきたいのが、IMO(Intestinal Methanogen Overgrowth:腸管メタン産生菌過剰)です。呼気検査では、主に水素とメタンが測定されます。ただし、メタンを作るのは細菌ではなく、主に古細菌(アーキア)と呼ばれる微生物です。また、メタン産生菌は小腸だけでなく大腸にも存在します。そのため、メタンが高い状態は厳密にはSIBOではなく、IMOという別の病態として扱われるようになっています。
| 分類 | 主なガス | 関連しやすい症状 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| SIBO | 水素など | 腹部膨満、下痢、腹痛、ガス | 症状だけでは診断できない |
| IMO | メタン | 便秘、排便回数の減少、腹部膨満 | 原因微生物は細菌ではなく古細菌 |
| 硫化水素関連 | 硫化水素 | 下痢や腹部症状との関連が研究されている | 検査法や診断基準はまだ十分に確立していない |
メタン産生量が多いほど腸管通過が遅くなり、便秘と関連する傾向が報告されています。ただし、ガスの種類だけで治療法を機械的に決めるのではなく、症状や検査の信頼性も含めて評価する必要があります。
4.SIBOでみられる主な症状
SIBOでは、次のような症状がみられることがあります。
- お腹の張り、腹部膨満感
- 食後にお腹が苦しくなる
- ガスや放屁が増える
- 腹痛、腹部不快感
- 下痢、軟便
- 便秘
- 下痢と便秘を繰り返す
- 吐き気、げっぷ
- 脂っぽく流れにくい便
- 食欲低下
- 体重減少
- 疲れやすさ
軽症では腹部膨満やガスだけのこともありますが、重症になると脂肪や栄養素の吸収が妨げられ、以下のような問題を起こすことがあります。
- ビタミンB12欠乏
- 鉄欠乏や貧血
- 脂溶性ビタミンの不足
- 低栄養
- 体重減少
- 骨密度低下
ただし、これらの症状はSIBOに特有ではありません。症状だけから自己診断することはできません。
5.SIBOが起こる原因・病因
SIBOは、単に「悪い菌を食べたから」起こる病気ではありません。多くの場合、細菌を増えにくくしている消化管の防御機構が低下することが背景にあります。
① 腸の動きが低下する
小腸には、食事と食事の間に腸内を掃除するように内容物を送り出す運動があります。この腸管運動が低下すると、食べ物や細菌が小腸内に停滞し、細菌が増えやすくなります。腸管運動が低下する原因には、次のようなものがあります。
- 糖尿病性自律神経障害
- 全身性強皮症
- 甲状腺機能低下症
- パーキンソン病などの神経疾患
- 慢性偽性腸閉塞
- 重度の便秘
- オピオイド鎮痛薬など、腸の動きを低下させる薬
② 消化管の構造が変化している
腸の一部に食べ物が停滞する場所ができると、細菌が増えやすくなります。
- 胃や小腸の手術後
- 盲係蹄症候群
- 小腸憩室
- 腸管の狭窄
- 癒着
- クローン病による狭窄
- 回盲弁の切除や機能低下
③ 胃酸などの防御機能が低下する
胃酸には、食事とともに入ってきた細菌を減らす働きがあります。胃酸分泌が著しく低下すると、小腸へ流れ込む細菌が増える可能性があります。プロトンポンプ阻害薬(PPI)などの胃酸分泌抑制薬とSIBOとの関連を示した研究もありますが、結果は必ずしも一貫していません。PPIを服用している人が全員SIBOになるわけではなく、必要な薬を自己判断で中止することは避けてください。
④ 消化液の分泌や免疫機能が低下する
- 慢性膵炎や膵外分泌不全
- 肝硬変
- 胆汁分泌の異常
- 免疫不全
- 高齢による複数の機能低下
⑤ ほかの消化器疾患に伴う
- セリアック病
- クローン病
- 過敏性腸症候群
- 機能性ディスペプシア
- 放射線性腸炎
ただし、過敏性腸症候群や機能性ディスペプシアとSIBOの関係については、まだ不明な点が残っています。両者が併存する場合もあれば、呼気検査の偽陽性によってSIBOと判定されている場合も考えられます。

6.SIBOと「腸活」の関係
一般的な腸活では、食物繊維、オリゴ糖、発酵食品、ヨーグルト、プロバイオティクスなどを取り入れることが推奨されることがあります。これらは多くの健康な人にとって、便通や食生活の改善に役立つ可能性があります。一方で、お腹の張りが強い人が発酵しやすい食品を急に増やすと、症状が悪化することがあります。
発酵食品や食物繊維で症状が悪化する理由
食物繊維やオリゴ糖などの一部は、人の消化酵素では十分に分解されず、腸内細菌によって発酵されます。発酵の過程ではガスが発生するため、SIBO、過敏性腸症候群、便秘症などがある人では、腹部膨満が強くなる場合があります。ただし、食物繊維や発酵食品でお腹が張るからといって、必ずSIBOであるとは限りません。単純に摂取量が多い、急激に増やした、乳糖や果糖を十分に吸収できない、過敏性腸症候群で腸がガスに敏感になっている、といった可能性もあります。
プロバイオティクスはSIBOに効く?
プロバイオティクスについては、SIBOの改善に役立つ可能性を示した研究があります。しかし、使用された菌株、投与量、対象患者、診断方法が研究ごとに異なり、エビデンスの質は十分とはいえません。現時点では、すべてのSIBO患者に特定のプロバイオティクスを一律に推奨できる状態ではありません。プロバイオティクスやプレバイオティクスを飲み始めて、腹部膨満、ガス、腹痛が明らかに悪化した場合は、いったん中止して医師や管理栄養士に相談しましょう。
市販の腸内フローラ検査でSIBOは診断できる?
一般的な腸内フローラ検査では、便に含まれる微生物を調べます。しかし、便の微生物は主に大腸内の状態を反映しており、小腸内の細菌増殖を直接評価するものではありません。そのため、便の腸内フローラ検査だけでSIBOを診断することはできません。
7.SIBOの診断方法
SIBOの診断では、症状だけでなく、手術歴、基礎疾患、使用している薬、体重変化、栄養状態などを総合的に評価します。
① 問診と身体診察
次のような情報は、SIBOを疑ううえで重要です。
- 症状が始まった時期
- 食事との関係
- 下痢、便秘、脂肪便の有無
- 体重減少の有無
- 胃や腸の手術歴
- 糖尿病、強皮症、クローン病などの基礎疾患
- 抗菌薬、胃酸分泌抑制薬、オピオイドなどの使用歴
- サプリメントやプロバイオティクスの使用
② 水素・メタン呼気検査
現在、SIBOの評価に広く用いられているのが、水素・メタン呼気検査です。検査では、グルコースまたはラクツロースを含む検査液を飲み、その後、一定間隔で呼気中の水素やメタン濃度を測定します。人の細胞は水素やメタンを作らないため、これらのガスは主に腸内微生物による発酵を反映します。糖質が大腸へ到達する前の早い時間帯に水素が増えれば、小腸内で発酵が起きている可能性があると判断します。北米のコンセンサスや米国消化器病学会の基準では、一般的に以下が目安とされています。
- 水素:検査開始後90分以内に、基準値から20ppm以上上昇した場合はSIBOを示唆
- メタン:検査中のいずれかの時点で10ppm以上の場合はIMOを示唆
ただし、検査方法や判定基準は施設やガイドラインによって異なる場合があります。2026年に発表されたコンセンサスでも、水素とメタンの同時測定、検査中の症状記録、検査前準備の標準化、慎重な結果解釈が重視されています。
グルコース検査とラクツロース検査の違い
| 検査 | 特徴 | 主な問題点 |
|---|---|---|
| グルコース呼気検査 | 小腸上部で吸収されるため、大腸での発酵による影響を受けにくい | 小腸の奥にある細菌増殖を見逃す可能性がある |
| ラクツロース呼気検査 | 吸収されず大腸まで到達するため、小腸全体を評価しやすい | 腸管通過が速い人では、大腸での発酵をSIBOと誤判定する可能性がある |
呼気検査の限界
呼気検査には、次のような問題があります。
- 腸の通過時間が速いと偽陽性になることがある
- 小腸の奥に病変があるとグルコース検査で見逃すことがある
- 水素をほとんど作らない人がいる
- 検査前の食事、喫煙、運動、薬剤の影響を受ける
- 検査施設によって測定方法や判定基準が異なる
- 陽性でも、それが症状の原因とは限らない
したがって、呼気検査は「SIBOを完全に証明する検査」ではなく、臨床状況と組み合わせてSIBOの可能性を判断するための検査と考えるのが適切です。
呼気検査前の一般的な注意点
検査前には、一般的に以下のような準備が求められます。
- 一定期間、抗菌薬を避ける
- 前日は発酵しやすい食品を控える
- 検査前8~12時間程度は絶食する
- 検査当日は喫煙や激しい運動を避ける
- 下剤、整腸剤、消化管運動改善薬などについて医師に確認する
必要な中止期間は薬剤や検査施設によって異なります。処方薬を自己判断で中止せず、必ず検査施設の指示に従ってください。
③ 小腸液の培養検査
内視鏡などを使って十二指腸や空腸から液体を採取し、細菌を培養する方法があります。以前から基準となる検査として扱われてきました。一部のガイドラインでは、小腸液1mLあたり103CFU以上の細菌増殖をSIBOの目安としています。しかし、この検査にも以下の問題があります。
- 侵襲的である
- 採取できる範囲が限られる
- 口腔内細菌が混入する可能性がある
- 培養できない微生物も多い
- 正常な小腸細菌叢の定義自体が十分に確立していない
そのため、小腸液培養も完全な「ゴールドスタンダード」とはいえません。
④ 血液検査・画像検査・内視鏡検査
症状や背景に応じて、以下の検査を行うことがあります。
- 血算、鉄、フェリチン、ビタミンB12、葉酸
- アルブミンなどの栄養評価
- 甲状腺機能
- 糖尿病の評価
- セリアック病の検査
- 便検査
- 腹部CTやMRI
- 上部消化管内視鏡
- 大腸内視鏡
これらはSIBOそのものを直接診断する検査ではなく、背景疾患やほかの病気を調べるために行います。
8.SIBOと間違えやすい病気
SIBOに似た症状を起こす病気は多くあります。
- 過敏性腸症候群(IBS)
- 機能性ディスペプシア
- 慢性便秘症
- 乳糖不耐症
- 果糖などの吸収不良
- セリアック病
- 炎症性腸疾患
- 慢性膵炎、膵外分泌不全
- 胆汁酸性下痢
- 甲状腺疾患
- 大腸がん、卵巣がんなどの悪性疾患
とくに、血便、発熱、進行する体重減少、貧血、夜間に目が覚めるほどの下痢、繰り返す嘔吐などがある場合は、SIBOや過敏性腸症候群だけで説明せず、ほかの病気を調べる必要があります。
9.SIBOの治療法
SIBOの治療では、単に腸内細菌を減らすだけでなく、次の3点が重要です。
- 背景にある原因を探して治療する
- 必要に応じて細菌増殖を抑える
- 栄養障害や食事上の問題を改善する
① 原因となる病気や薬を見直す
SIBOは、腸管運動障害や消化管の構造異常が残っていると再発しやすくなります。そのため、以下のような対応を検討します。
- 糖尿病や甲状腺機能低下症の治療
- 便秘や腸管運動障害への対応
- 狭窄、憩室、盲係蹄などの評価
- 必要に応じた外科的治療
- オピオイドなど腸管運動を低下させる薬の見直し
- 胃酸分泌抑制薬の必要性の再評価
- 膵外分泌不全などの治療
薬剤の中止や変更は、必ず処方した医師と相談して行います。
② 抗菌薬
SIBOの治療では、細菌を減らす目的で抗菌薬が使用されることがあります。海外では、消化管から吸収されにくいリファキシミンが比較的よく研究されています。複数の研究で呼気検査や症状の改善が報告されていますが、研究方法のばらつきが大きく、エビデンスの質は必ずしも高くありません。患者さんの状態によっては、メトロニダゾールなど、ほかの抗菌薬が選択される場合もあります。日本でリファキシミンは、肝性脳症における高アンモニア血症に対して承認されている薬であり、SIBOに対する使用は承認された適応ではありません。実際の使用可否や費用は医療機関によって異なります。また、抗菌薬には次のような問題があります。
- 吐き気、下痢、腹痛などの副作用
- アレルギー
- 薬剤耐性菌
- 腸内細菌叢への影響
- クロストリディオイデス・ディフィシル感染症
- 治療後の再発
呼気検査や基礎疾患を十分に評価せず、症状だけを理由に抗菌薬を繰り返すことは推奨されません。
③ 食事療法
SIBOに対する食事療法は、主に症状を軽減し、必要な栄養を確保する目的で行います。
低FODMAP食
FODMAPとは、小腸で吸収されにくく、腸内で発酵しやすい糖質の総称です。低FODMAP食は、過敏性腸症候群の腹部膨満や腹痛を軽減する方法として一定の根拠があります。SIBOでも症状が軽くなる可能性がありますが、低FODMAP食によってSIBOそのものが治癒・除菌できるとする十分な根拠はありません。また、長期間にわたって厳格な制限を続けると、栄養の偏りや腸内細菌叢への影響が懸念されます。一般的には、短期間の制限後に食品を一つずつ戻し、自分が症状を起こしやすい食品を確認します。可能であれば、消化器疾患に詳しい管理栄養士の指導を受けると安心です。
成分栄養療法
重症例や治療抵抗例では、消化吸収されやすい成分で作られた液体栄養を用いる方法が検討されることがあります。しかし、実施が難しく、栄養管理も必要になるため、自己流で行う治療ではありません。専門医の管理下で検討します。
④ プロバイオティクス・整腸剤
一部の研究では、プロバイオティクスによる症状や呼気検査の改善が報告されています。しかし、研究の質や結果にばらつきがあり、どの菌株を、どの量で、どのくらい使用すべきかは確立していません。人によっては腹部膨満やガスが悪化することもあります。使用する場合は、症状の変化を確認しながら判断しましょう。
⑤ 消化管運動を改善する治療
腸管運動障害が背景にある患者さんでは、便秘治療や消化管運動を調整する薬が検討されることがあります。ただし、特定の消化管運動改善薬がSIBOの再発を確実に防ぐとする十分な根拠はありません。基礎疾患、便通、薬の副作用を考慮して個別に判断します。
⑥ サプリメントやハーブ療法
インターネット上では、オレガノオイル、ベルベリン、ニームなどのハーブやサプリメントがSIBO治療として紹介されることがあります。しかし、これらの有効性と安全性を裏付ける質の高い臨床試験は十分ではありません。肝障害、薬物相互作用、妊娠中の安全性、製品ごとの成分差などにも注意が必要です。「天然成分だから安全」とは限らないため、自己判断で抗菌薬の代わりに長期間使用することは避けましょう。
10.SIBOは再発する?
SIBOは、治療によって一度改善しても再発することがあります。とくに、以下のような原因が残っている場合は再発しやすくなります。
- 腸管運動障害
- 消化管手術後の構造変化
- 小腸憩室や狭窄
- 糖尿病性自律神経障害
- 強皮症
- 慢性的な便秘
- 栄養状態の低下
再発を繰り返す場合は、抗菌薬を何度も変更するだけでなく、診断が本当に正しいか、背景疾患が見落とされていないかを再評価することが大切です。
11.SIBOが疑われるときに日常生活でできること
① 食事と症状を記録する
何を食べた後に、どの程度お腹が張るのかを記録します。乳製品、小麦製品、豆類、玉ねぎ、にんにく、果物、人工甘味料などとの関連がわかることがあります。ただし、多くの食品を一度に除去すると原因がわからなくなるため、極端な制限は避けましょう。
② 食物繊維を急に増やさない
食物繊維は健康に重要ですが、急激に増やすとガスや腹部膨満が悪化することがあります。少量ずつ増やし、水分も適切に摂取します。症状が強い場合は、不溶性食物繊維を大量に摂るよりも、種類や量を調整することが大切です。
③ 一度に食べすぎない
一度に大量に食べると、消化管への負担が増え、腹部膨満が強くなることがあります。ゆっくりよく噛み、適量を心がけましょう。
④ 常に何かを食べ続ける習慣を見直す
食事と食事の間に働く腸管運動は、小腸内の内容物を送り出す役割があります。間食を減らして適度に食間をあけることが役立つ可能性はありますが、SIBOを治す方法として確立しているわけではありません。糖尿病、妊娠中、低栄養、摂食障害などがある人は、無理な食事間隔を設けないでください。
⑤ 便秘を放置しない
メタン産生が多いIMOでは便秘との関連がみられます。水分、適度な運動、排便習慣の調整を行い、改善しない場合は医療機関に相談しましょう。
⑥ 適度に体を動かす
ウォーキングなどの適度な運動は、便通や消化管運動の改善に役立つ可能性があります。食後すぐの激しい運動は避け、無理のない範囲で継続します。
⑦ 睡眠とストレスを整える
腹部症状には、腸内細菌だけでなく、腸の知覚過敏や脳腸相関も関与します。睡眠不足や強いストレスによって症状が悪化する人もいます。SIBOの治療だけに集中するのではなく、睡眠、運動、ストレス、便通などを含めて生活全体を整えることが重要です。
⑧ 抗菌薬やサプリメントを自己判断で使用しない
個人輸入した抗菌薬や、抗菌作用をうたうサプリメントを長期間使用すると、副作用、薬剤耐性、診断の遅れにつながる可能性があります。「腸内細菌をすべて減らせばよい」という考え方ではなく、症状の原因を正しく評価することが大切です。
12.医療機関を受診したほうがよい症状
腹部膨満やガスが一時的にあるだけであれば、食事内容を見直しながら様子をみられることもあります。一方、次のような場合は医療機関を受診してください。
- 腹部膨満や下痢、便秘が長期間続く
- 症状によって仕事や日常生活に支障が出ている
- 食事をすると毎回強くお腹が張る
- 胃や腸の手術を受けたことがある
- 糖尿病、強皮症、クローン病などの基礎疾患がある
- 体重が減ってきた
- 貧血やビタミン欠乏を指摘された
- 脂っぽい便や悪臭の強い下痢が続く
早めの受診が必要な危険なサイン
- 血便、黒い便
- 発熱
- 繰り返す嘔吐
- 強い腹痛
- お腹が著しく張り、便やガスが出ない
- 急激な体重減少
- 夜中に目が覚めるほどの下痢
- 強い貧血
- 脱水症状
これらは腸閉塞、感染症、炎症性腸疾患、消化管出血、悪性疾患などの可能性があるため、SIBOだと自己判断しないことが重要です。
13.SIBOに関するよくある質問
Q1.SIBOは感染症ですか?
SIBOは通常、他人からうつる感染症ではありません。自分の消化管にもともと存在している微生物が、腸管運動障害や構造異常などを背景に増えることで起こります。
Q2.ヨーグルトを食べれば治りますか?
ヨーグルトだけでSIBOが治るとする根拠はありません。体質によっては乳糖や発酵成分で腹部膨満が悪化することもあります。食べて症状が悪化する場合は無理に続けないでください。
Q3.納豆やキムチなどの発酵食品は避けるべきですか?
すべての人が避ける必要はありません。発酵食品を食べて症状が悪化する場合は、量を減らす、いったん休むなどして反応を確認します。
Q4.低FODMAP食でSIBOは治りますか?
低FODMAP食は腹部膨満や腹痛を軽減する可能性がありますが、SIBOを除菌・根治する食事療法ではありません。長期間の厳格な制限は避け、再導入まで含めて行うことが重要です。
Q5.呼気検査が陽性なら抗菌薬を飲むべきですか?
呼気検査には偽陽性があり、陽性だけで抗菌薬が必要とは限りません。症状、リスク因子、検査条件、ほかの病気の可能性を含めて医師が判断します。
Q6.SIBOは自然に治ることがありますか?
食事や一時的な腸管運動の変化が原因であれば、症状が軽くなることもあります。一方、手術後の構造異常や慢性的な腸管運動障害がある場合は、再発や長期化が起こりやすくなります。
Q7.便の腸内細菌検査でSIBOはわかりますか?
一般的な便検査は主に大腸内の微生物を反映します。小腸内の細菌増殖を直接評価する検査ではないため、便検査だけでSIBOを診断することはできません。
14.まとめ:SIBOは存在するが、過剰診断にも注意が必要
SIBOは、小腸内の微生物が異常に増えたり、その構成が変化したりすることで、腹部膨満、腹痛、下痢、栄養吸収不良などを起こす病態です。消化管手術後や高度な腸管運動障害に伴うSIBOは、以前から医学的に認められています。一方、過敏性腸症候群などの一般的な腹部症状に対するSIBOの診断では、呼気検査の精度や症状との因果関係について議論が残っています。大切なのは、SIBOを完全に否定することでも、すべてのお腹の不調をSIBOで説明することでもありません。呼気検査の結果だけに頼らず、症状、手術歴、基礎疾患、薬剤、栄養状態、ほかの病気の可能性を総合して判断する必要があります。腸活のための食物繊維や発酵食品が症状を悪化させることもありますが、それだけでSIBOとは診断できません。極端な食事制限や抗菌薬、サプリメントの自己使用は避け、症状が続く場合は消化器内科などの医療機関に相談しましょう。
本記事は一般的な医療情報の提供を目的としたものであり、個別の診断や治療を代替するものではありません。症状が続く場合や、体重減少、血便、発熱、強い腹痛などがある場合は医療機関を受診してください。
参考文献
-
- ACG Clinical Guideline: Small Intestinal Bacterial Overgrowth
- AGA Clinical Practice Update on Small Intestinal Bacterial Overgrowth: Expert Review
- European guideline on hydrogen and methane breath tests in adult and pediatric patients
- Hydrogen and Methane-Based Breath Testing in Gastrointestinal Disorders: The North American Consensus
- A national consensus guideline on hydrogen- and methane-based breath tests for SIBO and IMO
- Critical appraisal of the SIBO hypothesis and breath testing
- Diagnosis and treatment of small intestinal bacterial overgrowth
- Systematic review with meta-analysis: rifaximin is effective and safe for the treatment of small intestinal bacterial overgrowth
- Efficacy of probiotics in the treatment of small intestinal bacterial overgrowth

