「大腸がんなのだろうか?」「2回のうち1回だけ陽性だったから大丈夫では?」「もともと痔があるので、そのせいでは?」と考える方も多いのではないでしょうか。
まず知っていただきたいのは、便潜血陽性=大腸がんというわけではないということです。
ただし、2日法の便潜血検査で1回だけ陽性だった場合でも、原則として大腸内視鏡検査(大腸カメラ)による精密検査が必要です。
この記事では、便潜血検査が陽性になる原因や大腸がんの可能性、痔との関係、精密検査の必要性について、最新のガイドラインや医学的知見をもとにわかりやすく解説します。
この記事のポイント
- 便潜血陽性でも、大腸がんが確定したわけではありません。
- 2回のうち1回だけ陽性でも、精密検査が必要です。
- 痔があっても、出血の原因を痔と決めつけることはできません。
- 便潜血検査をやり直して陰性になっても、精密検査の代わりにはなりません。
- 精密検査は、原則として大腸内視鏡検査を行います。
便潜血陽性は「大腸がん確定」ではありません
便潜血検査とは?
便潜血検査とは、便の中に肉眼では見えないほど少量の血液が混じっていないかを調べる検査です。現在、日本の大腸がん検診では、主に便潜血検査(免疫法)が用いられています。大腸がんや大腸ポリープがあると、その表面から少量の出血が起こることがあります。便潜血検査は、この出血を検出することで大腸の病気を見つけるきっかけとなる検査です。通常は2日間に分けて便を採取する「2日法」が行われます。日本では、40歳以上の方を対象として、年1回の大腸がん検診が推奨されています。便潜血検査は、大腸がんによる死亡を減らす効果が科学的に確認されている検診方法です。
参考:国立がん研究センター「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン2024年度版」
便潜血が陽性になる主な原因
便潜血が陽性になる原因は、大腸がんだけではありません。代表的な原因には、次のようなものがあります。
- 大腸がん:がんの表面から出血することがあります。
- 大腸ポリープ:一部のポリープは出血の原因となり、将来的にがん化するものもあります。
- 痔(いぼ痔・切れ痔):肛門付近からの出血が便に混じることがあります。
- 大腸憩室:大腸の壁にできた袋状の部分から出血することがあります。
- 炎症性腸疾患:潰瘍性大腸炎やクローン病などで腸の粘膜から出血することがあります。
- その他:腸の炎症や一時的な微量出血などでも陽性になることがあります。
また、精密検査を受けても、特に異常が見つからないこともあります。つまり、便潜血陽性は「大腸がんの診断」ではなく、大腸に出血の原因となる病気がないか確認する必要があるというサインなのです。
痔があっても「痔が原因」と決めつけない
便潜血陽性となった方の中には、以前から痔がある方も少なくありません。「普段から痔で出血するので、今回もそのせいだろう」と考えてしまうかもしれません。しかし、痔があるからといって、便潜血陽性の原因が痔であるとは限りません。痔と大腸ポリープ、あるいは痔と大腸がんが同時に存在する可能性もあります。また、痔による出血と大腸の病変による出血を、便潜血検査の結果だけで区別することはできません。
注意したいポイント
「痔がある」「排便時に痛みがある」「トイレットペーパーに血が付く」といった理由だけで、大腸がんの可能性を否定することはできません。
痔がある方でも、便潜血陽性なら精密検査を受けることが大切です。
便潜血が1回だけ陽性でも精密検査が必要な理由
2回のうち1回だけ陽性なら大丈夫?
日本の大腸がん検診では、2日分の便を採取する方法が一般的です。例えば、次のような結果だったとします。
- 1日目:陰性(-)
- 2日目:陽性(+)
この場合、「片方は陰性だったから問題ない」と思われるかもしれません。しかし、2回のうち1回でも陽性であれば、精密検査が必要です。その理由は、大腸がんや大腸ポリープからの出血が、毎日必ず起こるわけではないからです。出血している日もあれば、出血していない日もあります。そのため、病変が存在していても、検査したタイミングによっては陰性になることがあります。
1回だけ陽性でも大腸がんが見つかることがある
実際に、便潜血検査が1回だけ陽性だった方でも、大腸がんや大腸ポリープが発見されています。日本消化器内視鏡学会が2025年に公開した解説では、2日法で1回だけ陽性だった人を対象とした海外の研究が紹介されています。その研究では、大腸内視鏡検査によって、次のような病変が見つかりました。
- 大腸がん:約1%
- 10mm以上の高リスクポリープ:約20%
これらの数値は特定の研究における結果であり、実際の発見率は年齢や検査対象者の背景などによって異なります。それでも、1回だけの陽性を軽視できないことがわかります。大腸がんは、早い段階で発見できれば、内視鏡治療や手術によって治癒を目指せる病気です。また、がんになる可能性のあるポリープを内視鏡で切除することは、将来の大腸がん予防にもつながります。
参考:日本消化器内視鏡学会「便潜血検査で1回だけ陽性と言われました。内視鏡検査は受けたほうがいいのでしょうか?」
便潜血検査のやり直しでは代用できません
「もう一度便潜血検査を受けて、陰性だったら大丈夫でしょうか?」という質問を受けることがあります。結論からいうと、一度陽性になった場合、便潜血検査をやり直して陰性になっても、精密検査を省略する理由にはなりません。大腸がんや大腸ポリープによる出血は断続的に起こるため、再検査で陰性になったとしても、病変がないことの証明にはならないからです。国立がん研究センターも、便潜血検査の再検査は精密検査の代わりにならないと明示しています。便潜血検査が陽性だった場合は、翌年の検診まで様子を見るのではなく、医療機関を受診しましょう。
便潜血陽性の精密検査では何をする?
基本となる検査は大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
便潜血陽性となった場合の精密検査は、原則として全大腸内視鏡検査(大腸カメラ)です。大腸内視鏡検査は、肛門から細いカメラを挿入し、直腸から大腸の奥まで粘膜を直接観察する検査です。この検査では、大腸がんや大腸ポリープ、炎症などの有無を確認できます。病変が見つかった場合には、必要に応じて組織を採取して詳しく調べたり、条件が合えばその場でポリープを切除したりすることもできます。
大腸内視鏡検査の流れ
一般的には、次のような流れで検査を行います。
- 事前診察・予約:持病、服用中の薬、過去の検査歴などを確認します。
- 検査前日:医療機関の指示に従い、消化のよい食事をとり、必要に応じて下剤を服用します。
- 検査当日:腸管洗浄液を飲み、大腸の中をきれいにします。
- 内視鏡検査:カメラで大腸の粘膜を観察します。必要に応じて組織採取やポリープ切除を行います。
- 検査後:結果の説明を受けます。組織検査を行った場合は、後日、病理検査の結果を確認します。
検査自体の時間は、一般的には15~30分程度が目安ですが、腸の状態や処置の内容によって変わります。検査時の苦痛が心配な方には、鎮静薬を使用できる医療機関もあります。なお、大腸内視鏡検査には、出血や腸管穿孔などのまれな合併症があります。検査の必要性とリスクについて、医師から説明を受けてください。
大腸カメラが難しい場合はどうする?
大腸内視鏡検査が必要だとわかっていても、過去に検査がつらかった方や、持病などの理由で検査が難しい方もいるでしょう。そのような場合には、大腸CT検査(CTコロノグラフィ)など、別の検査方法を検討することがあります。大腸CT検査は、CT画像を使って大腸の内部を評価する検査です。ただし、内視鏡とは異なり、組織の採取やポリープの切除はできません。また、小さな病変などは見つけにくい場合があり、異常が見つかれば改めて大腸内視鏡検査が必要になることがあります。大腸カメラへの不安が強い場合には、検査をあきらめず、消化器内科などで相談してみましょう。
症状がある場合は検診を待たずに受診しましょう
大腸がんは、初期には自覚症状がほとんどないこともあります。一方で、次のような症状がある場合には、便潜血検査の結果にかかわらず、医療機関での診察が必要です。
- 便に赤い血が混じる、血が付着する
- 便が以前より細くなった
- 便秘と下痢を繰り返すなど、排便習慣が変化した
- 腹痛や腹部の張りが続く
- 原因不明の体重減少がある
- 貧血を指摘された、疲れやすさが続く
これらの症状があるからといって、必ず大腸がんというわけではありません。しかし、症状が続いている場合は、通常のがん検診ではなく、症状の原因を調べるための診療が必要です。
早急な受診が必要な症状
大量の血便、強い腹痛、失神、強いめまい、冷や汗、繰り返す嘔吐、便やガスが出ないほどのお腹の張りなどがある場合は、緊急性の高い病気の可能性があります。
このような症状がある場合は、通常の精密検査の予約を待たず、速やかに救急医療機関を受診してください。
よくある質問(FAQ)
Q1.便潜血が陰性なら、大腸がんではないと考えてよいですか?
A.陰性でも、大腸がんを完全に否定することはできません。
大腸がんや大腸ポリープがあっても、検査時に出血していなければ陰性になることがあります。症状のない方は、定期的に大腸がん検診を受けることが大切です。血便や排便習慣の変化などの症状がある場合は、検診結果が陰性でも医療機関を受診してください。
Q2.便潜血陽性でも、症状がまったくありません。大腸カメラは必要ですか?
A.はい。症状がなくても精密検査が必要です。
早期の大腸がんや大腸ポリープは、症状がないことも珍しくありません。症状がない段階で病気を発見することが、大腸がん検診の大切な目的です。
Q3.痔の出血がある日に便を採取しました。検査をやり直せばよいですか?
A.痔の出血があっても、自己判断で精密検査を省略しないでください。
痔による出血が便潜血陽性の原因となることはありますが、大腸がんやポリープが併存している可能性もあります。検査時の出血状況を医師に伝え、精密検査について相談しましょう。
Q4.昨年、大腸カメラで異常なしと言われました。今年の便潜血が陽性でも再検査が必要ですか?
A.前回の検査内容や時期によって判断が異なる場合があります。
最近受けた大腸内視鏡検査で異常がなかった方について、その後の便潜血陽性に対して、いつ再度内視鏡検査を行うべきかは、一律の方針が確立していません。前回の検査がいつだったか、大腸全体を十分に観察できたか、ポリープの有無、症状などを踏まえて判断します。前回の検査結果を持参し、医師に相談してください。
Q5.大腸カメラを受ける前に、普段の薬を中止する必要がありますか?
A.薬の種類によって対応が異なります。自己判断で中止しないでください。
特に、血液を固まりにくくする薬(抗血小板薬・抗凝固薬)を服用している方は、事前に医師へ伝える必要があります。糖尿病の薬やインスリンについても、絶食や検査前処置に合わせて調整が必要になる場合があります。お薬手帳を持参し、検査を担当する医療機関の指示に従ってください。
Q6.便潜血が陽性だった場合、どのくらい早く精密検査を受けるべきですか?
A.放置せず、できるだけ早く医療機関に相談しましょう。
症状がない場合、便潜血陽性だけで直ちに救急受診が必要になるわけではありません。しかし、数か月から1年以上と長期間放置することは避け、精密検査の予約を進めることが大切です。血便や貧血、体重減少などの症状がある場合には、より早い評価が必要になることがあります。
Q7.便潜血陽性で大腸カメラを受けた結果、異常なしでした。どうすればよいですか?
A.精密検査で異常が見つからないこともあります。
便潜血陽性でも、明らかな大腸の病気が見つからない場合があります。今後の検診や内視鏡検査の間隔は、今回の検査結果、年齢、家族歴、症状などによって異なります。医師から説明を受け、適切な経過観察を続けましょう。
まとめ|便潜血陽性は1回だけでも放置しないことが大切
健康診断で便潜血が陽性になると、大腸がんを心配して不安になるかもしれません。しかし、陽性だからといって、必ず大腸がんがあるわけではありません。大切なのは、不安を抱えたまま放置せず、適切な精密検査を受けることです。
覚えておきたい5つのポイント
- 便潜血陽性は、大腸がんの確定診断ではありません。
- 2回のうち1回だけ陽性でも、精密検査が必要です。
- 痔があっても、大腸の病気を否定できません。
- 便潜血検査をやり直して陰性になっても、安心とはいえません。
- 原則として大腸内視鏡検査を受けることが推奨されます。
大腸がんは、早期に発見することで治癒を目指せる病気です。また、がんになる可能性のあるポリープを発見し、切除することが予防につながる場合もあります。
便潜血陽性という結果は、病気を早く見つけるための大切なきっかけです。
「1回だけだから大丈夫」「痔があるから問題ない」と自己判断せず、医療機関で精密検査について相談しましょう。
参考文献・信頼できる情報源
- 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん検診について」
- 国立がん研究センター「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン2024年度版公開」
- 日本消化器内視鏡学会「便潜血検査で1回だけ陽性と言われました。内視鏡検査は受けたほうがいいのでしょうか?」(2025年10月22日)
- 日本消化器がん検診学会「がん検診(胃がん・大腸がん)Q&A」
- 国立がん研究センター中央病院「大腸内視鏡検査を受けられる方へ」
※本記事は2026年11月時点で確認できる医学的知見や公的情報に基づいて作成しています。一般的な医療情報の提供を目的としており、個別の診断や治療方針に代わるものではありません。具体的な検査の必要性や方法については、医療機関でご相談ください。
